このコラムは、Voicyをテキスト化し一部抜粋したものです。
今回は株式会社LX DESIGN の代表の金谷智さんです。教育業界のDXについてのインタビュー回の記事です。LX DESIGNでは『複業先生』というサービスを提供しています。
目次
『複業先生』のサービスを利用した生徒、先生、外部人材の反応
ある生徒の話です。
エンジニアを目指すため情報系の学科で学んでいた高専の子が、人生で初めてエンジニアに会った時にとても衝撃をうけたそうです。彼はその道のプロフェッショナルの方に直接質問をし、将来自分がエンジニアになった様子を思い浮かべることができたのだそうです。
これは地域や世代を超えないと実現できなかったことなので、テック介入し得られた成果があることに喜びを覚えています。自分が教員だった時に、やりたかったけどしてあげられなかった40人、160人それぞれに対して抱いていた夢を、ちょっとだけ叶えられた気がします。
先生方からいただく声に、「本当はこういうサービスを自分が作りたかった!」、「あったら絶対使うよ!」と、心をこめて語ってくれる人たちがいて、そういう仲間たちがどんどん増えていくと、あの学校はアップデートされていく方向に行と考えていて、そういう先生方
との出会いこそ、このサービスを運営していて良かったなと思う瞬間です。
さらに、先生方の中にはレンジが私たちよりもずっと上の先生もいらっしゃるので、サービスが成り立っているのは、そういう方たちに出会えたからだと思います。
先生方と言っても全国には100万人もいらっしゃるので、たまたまマッチングした上位数パーセントの出会いの中で価値を共有できているのかもしれません。それも重々理解しています。
ただ、1つ言えることは、外部の人材を受け入れやすい学校の特徴としては、「新しいことに取り組まなければならない」状況にある場合が多いです。
例えば、グローバルコースを新設しなければならない場合があります。当然、取り組むべき課題が顕在化している学校にとっては、やる理由がそこにあります。それに気づいて動くプロセスがより短い状態の人たちの方が、瞬時にアクションに移ることができます。
逆に「何故変わらないといけないのか?」という考え方だと、外部の人材を受け入れ難い場合が多いのです。
人との関係性による地域格差
東京の高校生と鹿児島の高校生を比較した時、環境面によっては出会える数や場面に違いが出てきたと思いますが、最近はオンライン化により徐々にその垣根は少なくなってきているかと思いますが、まだまだ根深い課題です。
しかし東京の高校生の方の方が有利かというと、そうとも言い切れないこともあります。東京の子たちの場合、海外進学や地域留学をさせたいけれど、先輩たちとの繋がりがないということも多いです。
垂直にその地域で育っていくことに疑問を持っている人たちや、多様性の現象みたいだと思っている人たちにとっては、このサービスは「喉から手が出るほど欲しい」と言っていただけることも多いです。
地域や国を超えることが多様性の源泉だとするならば、そこに価値を見出す方たちにとってオンラインから始める外部人材の導入は、必要なシステムなのだと思います。
追及してたどり着いたサービス
運営していく中でサービス内容は徐々に磨かれ、質にシフトした内容に変わっていきました。利用者側からの要望もたくさんいただきましたし、自分も現場にいたため、あらゆることが気になってしまいがちですが、今運営している授業の提供とその情報を蓄積するシス
テムの提供にまずは集中しています。
あれもこれもと全てを求めても、学校にとって負担になってしまうということに気づきましたし、外部の力は必要で私たちが最もサポートできるサービスはこれだと実感しました。当初のサービス内容から、どんどんシャープになっていっているのかもしれないです。
社会とつながって学ぶ機会をきちんともたらすことが重要で、そのために必要なデータを蓄積すること、この二つが重要だと思っています。そういった意味でコミュニティとテクノロジーの力でこの二つが集約されると思います。
外部人材が教える内容
テーマについては、IT・企業・グローバルが軸になっています。更にその周辺には最近の流れで行くと環境などを含むSDGs、地方創生、地域づくり、起業、メンタルケアなどロングテールに広がっています。
学校の先生たちと私たちの棲み分けという役割分担を考えた時、子どもたちのことを一番よくわかっているのは先生たちなので、「こういう本や資料を見てみたら」、「その話聞いてみたら」など子ども達の背中を押してあげられるは先生たちです。
そして私たちは、外部と先生方および子どもたちの接続部分の役割なのです。
複業先生になるには?
どんなテーマで話せば良いのか?という質問を良く受けます。自分が持っている経験を言語化することは、「すごいもの」である必要はありません。しかし他人の経験は凄いなあと思っているのに、他人から見られたときの自分の経験はそうでもないと感じてしまう不思議な現象が
あります。その点がフラットに思えるようになれば、自分の経験を語ることは難しくないように感じます。
例えば『複業先生』の登録リストを見ていると、サンプルがあるのでその違いがわかります。違いというのはたくさん見比べないと気づきにくいものです。
学校の授業でもそうですが、一枚の絵だけを見せるのではなく、比べるものを用意してあげないと子どもたちには違いは分かりません。比べるものを並べて、どちらが優れていとか、どちらが変だとかそういう話をしているのではなく、純粋に「そういうものだ」という違いを見せ
てあげることが、私たちが複業先生を行う人たちに対しての義務だと考えています。それによって「私って何者なのか?」と自分の使命を見出して頂けたら、私たちが副業先生に対しインパクトを引き出せたと言えると思います。
複業先生になるには登録が必要です。インターネットで『複業先生』 と検索すると登録ページが出てきますので、そこからぜひご登録ください。その先は、授業の案内やイベントなどをお知らせしていきます。
すでに複業先生を経験された方の声は、「思ったより難しかった」という感想が多くあります。やはり目の前の人たちと共通言語で話すというのは、想像以上に大変だったそうです。普段の仕事だけだと、結果的に仕事関係の人としか話しをしなくなります。だからこそ一旦仕事から離れ、一つ外の世界へ興味や関心を向けないと生徒との会話が成り立たないのです。
複業先生が初めてのご経験という方も多くいらっしゃいます。「思っていた以上に質の高いクリエイティブな仕事だった」と改めてその奥深さを考えたという感想もありました。
どういう先生がコミュニティにいて、どんなテーマの授業をし、その授業を受けた生徒たちはどう感じ考えたのか…生徒の捉え方は人それぞれです。そういった情報がデータとして今後さらに溜まっていきますが、その活用方法は我々にとってDXのテーマであり、一つの重要なポイ
ントだと考えています。
最後に~すべての人が自分らしい人生をデザインできる世界を~
「去年卒業した先輩はこういう生徒で、こんな学校生活を送っていたよ!」というように、先輩の話をしてくれる先生方もいらっしゃると思いますが、しかしそこには先生の主観が入っている、あくまでも先生の話に過ぎません。
データが溜まっていったらどんな未来が訪れるのか?という事を考えた時、卒業生のネットワークが可視化されていけば、話を聞く側の生徒も具体的なイメージが湧きやすいので、ぜひこの課題を実現したいです。
毎年卒業生する生徒は必ずいます。それが10年経てば何千人分のデータが貯まります。仮に彼らがタイムリーに授業をしてくれた場合、今よりももっと生徒たちの理解度が上がる可能性が高まり、未来への想像がより現実性の高いイメージに近づくはずです。10年後の未来と10
歳上の先輩は別物ですが、そのシルエットはないよりかはあった方が解像度は上がります。また得られる情報が何かの役に立つことが一個でも二個でも見つかるのであれば、全くゼロの世界よりはあった方が良いと思っております。
『複業先生』というサービスを初めて聞いていただいた方も、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、皆さんお一人おひとりの経験が、地域や私たちの世代の子どもたちの力になります。悩んでいることや困っていることさえ、次の世代にとって何らかの糧となりうるのです。そ
ういった意味で、今日聞いていただいた方たちと一緒に仕事できることを楽しみにしています。