クラウドマネージドサービスユニット ユニット長
兼 アライアンス本部 本部長
黒沼 和光(くろぬまかずみつ)
株式会社ジールの新規事業(SRE支援)立ち上げとアライアンス全般の統括を担う。
前職は、スタートアップにてヴァイスプレジデントなども担い、BizDev(ビズデブ)、アライアンス、セールスなどの責任者を歴任。

ジールは、「データ分析・AI/BIコンサルティング」「データ分析基盤・AI/BIデータ活用環境構築」「データドリブン人材育成」「AI系ソフトウエア・IP開発」「クラウドネイティブ化・DevOps支援」の事業を主軸に、データを最大限に活用しお客様のDXをサポートするDX推進事業を展開しています。
具体的には、DX構想策定のコンサルティングやデータ基盤構築、AIを主軸としたデータ高度利用支援や内製化の伴走型支援など、プロジェクトの全工程にわたって、最先端のテクノロジーと専門性による一気通貫のサービスを提供しています。
先にご紹介したジールの5つの事業について、昨今のトレンドや状況を踏まえながら深堀りする連載企画の第3回は、2023年に新規事業として立ち上がった「SRE支援」事業について、事業責任者のクラウドマネージドサービスユニット ユニット長 兼 アライアンス本部 本部長の黒沼 和光(くろぬまかずみつ)に話を聞きました。
クラウドマネージドサービスユニット ユニット長
兼 アライアンス本部 本部長
黒沼 和光(くろぬまかずみつ)
株式会社ジールの新規事業(SRE支援)立ち上げとアライアンス全般の統括を担う。
前職は、スタートアップにてヴァイスプレジデントなども担い、BizDev(ビズデブ)、アライアンス、セールスなどの責任者を歴任。
――2023年7月に新しく事業として立ち上がった「SRE支援事業」の立ち上げの背景を教えてください。
黒沼:大きく2つあります。1つは、ジールのデータ活用を主軸としたDX推進事業が急成長している中、この先の数年後も継続的な成長を維持していくためには新しい事業が必要と考えていました。
もう1つは、データ活用の基盤となるデータプラットフォームがクラウドへシフトしており、「クラウド環境においてのデータ活用」に変化しています。そのような中、データ活用と共にクラウド環境に対する相談をいただくことも増え、お客様とのコミュニケーションから具体的に新たな課題も見えてきました。そこをビジネスチャンスと考え、SRE支援事業を立ち上げました。
――「SRE(Site Reliability Engineering)支援サービス」について、具体的にどのようなサービスを提供しているかを教えてください。
黒沼:昨今クラウドの利用がかなり進んでいますが、既存のシステムやアプリケーションはそのままに、オンプレミス環境からクラウド環境へ移行するクラウドリフトに留まっており、本来目指しているその先のクラウドシフトがなかなか進んでいないことが大きな課題になっています。また近年、お客様によるシステムやアプリケーションのバージョンアップのサイクルもますます早くなっているため、このスピードに対応できるクラウドネイティブ化とその人材育成が求められています。
クラウドシフトは、単にオンプレミス環境からクラウド環境へ移行するクラウドリフトとは異なり、アーキテクチャー自体をクラウド上のネイティブなサービスを使っていくもので、クラウドネイティブ化というような言葉も使われています。旧来のオンプレミスとは全く異なるアーキテクチャーを利用することで、システムやアプリケーションの利用者が求める新機能の開発スピードを迅速化する、システム自体の信頼性を向上させるなどの効果を発揮することになります。
しかしながら、この領域に対応できるシステムインテグレーター(以下「SIer」)が少なく、クラウドネイティブ化が進んでいない状況が生じています。この支援を行うのがジールのSRE支援サービスです。これまでBtoB向けSaaSや大規模Webサービス企業においてクラウドを支えてきたエンジニアの知見や技術力を積極的に取り込み、このクラウドネイティブ技術をお客様への支援として提供しています。
――SRE支援サービスにはIaCやCI/CD、オブザーバビリティ、コンテナなど様々なメニューがありますが、特に力を入れているサービスがあれば教えてください。
黒沼:力を入れていくサービスはお客様のニーズが高いものと考えており、現在は「オブザーバビリティ」と「DevOps」になります。
オブザーバビリティは「可観測性」と訳され、システムに異常が起きた際に、単に通知するだけでなく、どこで何が起こり、なぜ起こったのかを把握するための仕組みや能力を指します。膨大なデータからシステム内部の状態を可視化し、トラブルの原因を特定することで、予期せぬ問題にも対応できます。クラウドネイティブの分散型システムの普及によってこの必要性が注目されています。
DevOpsは、開発担当と運用担当が緊密に連携して、柔軟かつスピーディーにシステム開発を行う手法で、ツールで言うとGitとCI/CDの活用が中心となります。従来ソフトウエア開発では機能の開発を担当する開発(Dev)チームと、サービスの運用を担当する運用(Ops)チームが分かれていましたが、急速に変化し続けているビジネスシーンに対応するためより迅速なソフトウエア開発が求められており、このニーズが高まっています。
(ジールが提供するSRE支援サービスメニュー)
――今後ジールは「SRE支援事業」にさらに注力していくと思いますが、具体的な理由を教えてください。
黒沼:現在、企業では「内製化」が非常に進んでいます。内製化の背景には、企業がDXのスピードを上げたいということがあります。例えばコンシューマーサービスを提供しているお客様では、以前は紙で行っていた契約などもスマホのアプリで完結するなど、お客様が提供するサービスのDXがどんどん進んでいます。
また、提供するアプリケーションについては、他の企業との差別化のために、「アプリ開発サイクルを迅速化したい」「ユーザーのニーズに応える様々な機能を追加したい」といった要望が高まっています。この開発を外部のSIerへ依頼すると時間もコストもかかることから、内製化が急速に進みました。
このようなお客様を支えるのが私たちのサービスですが、この支援が今後さらに求められてくると考えています。
開発(Dev)と運用(Ops)の双方チームの事情を踏まえてその中間に立つ存在として機能するサービスを提供するとともに、内製化に向けたお客様の社内SRE育成も伴走型でご支援しています。
――以前取材を受けたメディアのインタビュー(※)では「クラウドを利用したサービス開発を行っているエンタープライズ企業、具体的には製造、Web・SaaSサービス、金融業界など」を対象にしているとお答えになられていましたが、具体的な理由を教えてください。
黒沼:同じエンタープライズ企業であっても、サービス開発を行っている企業とそうでない企業では、クラウドネイティブ化の取り組みに大きな差があります。大手エンタープライズ企業では、概して重厚長大なシステムが多く、何よりも安定してシステムを運用しようという考えがあります。
さらに、そのようなエンタープライズ企業の中でもサービス開発を行っている企業やミッションクリティカルシステムの代表である金融機関などは、重厚長大、かつ停止してはいけない高い信頼性が求められるサービスを提供していますので、信頼性を担保するための技術スキル、SRE支援サービスが求められています。
――ジール以外にもSRE支援サービスを提供している企業(競合)はありますか?その企業とジールの違いやジールの優位性などがあれば教えてください。
黒沼:多くのお客様にお話を伺っていますが、ジールのようなSRE支援サービスを提供している企業はおそらくほとんどありません。
エンタープライズ企業では、開発やインフラを担当している既存のパートナーSIerがいる場合がほとんどですが、私たちがSRE支援のサービスを提供しているとご紹介すると、支援して欲しいというご要望をいただきます。また、潜在ニーズは多数ありますが、SREというキーワードでご相談をいただくことは稀で、潜在ニーズを顕在化していくようなことから行っています。
――「SRE支援事業」を更に拡大していくための具体的な戦略や考えがありましたら教えてください。
黒沼:2023年に新規事業としてゼロから立ち上げたビジネスですが、すでにエンタープライズ企業との新規お取り引きも複数社あります。また、クラウドネイティブを支援するツールを提供する、グローバルに展開しているメーカーからも期待をいただき、立ち上げから1年足らずでパートナーシップを結ぶこともできました。
2028年までの中期経営計画を見据えた戦略としては、顧客戦略、パートナー戦略、人材戦略の3つを軸に戦略を策定しています。
1つめの顧客戦略ですが、一社のお客様に対し広くご支援させていただくことを目指しています。先ほどの事業・サービス紹介の質問の際にお伝えしたように、SREはクラウドネイティブ環境におけるオブザーバビリティから開発環境、さらにはインフラ環境まで幅広く対応するサービスで、かつ、これらは互いに密接に相関し合うと同時に繰り返し改善していくことまでを含むものです。
例えば、現在目指すアプリケーションの開発環境が一度完成したとしても、今後実際に利用する数百、数千人にのぼる開発担当者のご要望に応えていくためには新しいSREを取り入れていかなければなりません。ですので、一社に対し1つのサービス案件で完了するのではなく、複数の案件で対応していくことでこそお客様のクラウドネイティブ化をご支援できると考えていますし、そういった顧客深耕の成功事例をもとに、クラウドネイティブ環境における様々な課題を持つお客様へのご支援を展開していければと考えています。
2つめのパートナー戦略ですが、こちらも先にご説明のとおりですが、クラウドネイティブ化に追従できるSIerが少ない中、これらを支援するツールを提供するグローバルメーカーから、日本で信頼できる企業としての認知や期待を少しずついただけているように思います。しっかりと実績を重ね、メーカーからも信頼を重ねていけることを目指していきます。
3つめの人材戦略ですが、SRE支援はお客様の既存パートナーが提供していないサービス領域であることもあり、お客様からの期待値が高いです。そのため、人材戦略は非常に重要と考えています。
ジールの最大の魅力は、様々な業種のお客様に、様々なツールを使ったご支援が可能なことです。多様なスキルをジールでは身につけることができ、それがお客様の役に立つということに魅力を感じてもらうことで、優秀な人材を定常的に確保し、事業を成長していきたいと考えています。
――ジールの「SRE支援事業」の強みを教えてください。また、課題(強化すべき点)はありますか?
黒沼:まず強みですが、他のSIerが持ちあわせていない領域の技術スキルを持っていることが最大の強みだと考えています。実際にお客様やパートナー様からも、特にKubernetes、オブザーバビリティ、DevOpsの領域は、一般的なSIerでは知見者がほとんどいないと聞いています。では、なぜジールにはその強みがあるかという点については先ほどの採用戦略にも通じていきますが、ジールには、サービス事業者で経験を積み、さらには実際に運用までを経験してきた技術者がいるためです。オブザーバビリティもDevOpsも、テクノロジーだけでなく、実際に運用してこそわかる経験を語れることが、私たちの大きな強みです。
また、ジールの主力事業であるデータ活用領域は、AIに関する知見も豊富です。旧来型のデータ活用領域だけでは、SRE支援サービスが関わることは少ないですが、AIの導入や活用を進めている企業にとっては、クラウドネイティブ化の際に、AIにおけるジールの知見という相乗効果が得られるお客様もいらっしゃいます。
強化すべき点は、認知度だと考えています。繰り返しになりますが、SREの領域は潜在的なニーズがある一方で、これが顕在化されている状態ではありませんので、市場の啓蒙活動にも対処してく必要があります。また、SRE領域の啓蒙・認知度とともに、ジールがこの分野・領域において信頼いただける企業であることの認知強化ももちろん必要だと考えています。
――最後に、「SRE支援事業」を伸長させることで、今後どのようなことを実現し、世の中へどのような影響を与えていきたいですか?
黒沼:現在私たちが支援・提供しているお客様は、業界を代表する企業様が大半です。自社内のユーザーも多いですが、顧客向けのサービスとしても非常に多くのユーザーが利用するものとなります。SRE支援サービスを通じてアプリケーションの障害を早期に発見する、あるいは開発サイクルを迅速化するといったことを裏側でご支援することで、ユーザー様は快適さやメリットを享受していただき、お客様企業においては収益拡大・事業成長へ繋げていただけます。
私たちの事業が拡大していくことで、こうした機会が増え、ひいては日本のビジネスに影響を与えることができれば嬉しく思います。
インタビューの中でご紹介したジールの「SRE支援サービス」は、クラウドネイティブ化を推進するお客様が抱える運用やセキュリティなどの課題解決に向け、豊富な経験、専門スキル、最新知識を持つエンジニアが支援します。
ジールでは、これまでBtoB向けSaaS、大規模Webサービス企業においてクラウドを支えてきたエンジニアの知見や技術力を積極的に取り込み、このクラウドネイティブ技術をお客様の支援として提供しています。
クラウドネイティブ化のファーストステップとして、取得したデータをもとに、システムの状態を推測・把握し、システム異常やトラブルを防ぐ「オブザーバビリティ」サービスを提供しております。下記より詳細をご確認ください。
オブザーバビリティサービス以外にも、「microservice」や「Container・Orchestration」、「Infrastructure as Code」、「CI/CO」、「FinOps」など、クラウドネイティブ化に関する伴走型支援を行っておりますので、少しでもお悩みの方は、ぜひお気軽にジールへご相談ください。
2025年02月13日(木)14日(金)に実施された「Developers Summit 2025」にブース出展し、2月14日(金)には講演を行いました。
<ジールの講演>
2月14日(金)11:50~12:20 14-A-3 セッション
「プラットフォームエンジニアの目線で見たコンテナ技術と活用方法を解説」
データ活用を主軸としたDX推進事業を展開するジールにおいて、「クラウド」は密接な領域です。今回はこのクラウド環境における新たな課題から誕生した新規事業である「SRE支援事業」について、事業責任者の黒沼のインタビューをお届けしました。
昨今進むクラウドリフト、クラウドネイティブ化、さらにはこれを含む内製化を検討しているエンタープライズ企業が増えてきています。現代のエンタープライズ企業を取り巻く背景やクラウドの潮流、求められる技術やサービスについて、読者の皆様にもお伝えできていれば幸いに思います。
今後も引き続きジールの個性や魅力をお伝えできるインタビュー企画をお届けしていきたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※インプレス株式会社が運営するエンジニアのための技術解説サイト「Think IT」掲載インタビュー
記事名:企業のクラウドネイティブ化を実現するジールが考える「SRE支援サービス」の必要性