背景と課題
データ量の増大に伴いExcelベースの分析業務に限界
BI分野のビジネスに定評があるジールが提供するeラーニングに注目
1929年の創業以来培ってきたコアコンピタンス「高分子材料技術」をベースに、時代に即した高付加価値製品を生み出してきた住友理工。自動車(モビリティ)、インフラ・住環境、エレクトロニクス、ヘルスケアの4つのフィールドで安全・安心・快適で環境にやさしい社会づくりに貢献し、グローバル企業としての歩みを進めている。住友理工は、1954年の自動車用防振ゴム市場参入後、日本のモータリゼーションとともに成長してきた。また、世界5極での開発・供給体制を構築し、高品質な製品をいち早く全世界に提供している。
そして、国内外の営業における売上実績の収集・管理、計画・方針の策定を行っているのが、グローバル自動車営業本部 グローバル営業企画部である。グローバルでのデータ量の増加に伴い、データ集計・資料作成の非効率性が課題になっていると、グローバル営業企画部 部長の高桑 一登氏は話す。
「当社は、世界20カ国以上に拠点を構えるグローバルサプライヤーです。事業が拡大し、海外で拠点数が増えても、グローバル営業企画部の仕事の流れが変わっていないことに問題意識を持っていました。メールで海外拠点に送付したExcelを、データ入力後に返送してもらい、不明点について電話で確認しながら1つの資料にまとめていく。基本的にExcelと人の手によって業務が回っているのが現状でした」(高桑氏)
グローバル営業企画部 主査 大前 智裕氏も、「毎月の分析業務にも時間がかかっており、Excelベースの分析業務に限界を感じていました」と付け加える。大前氏は、Excel中心の分析業務から脱却するために、Excelとの親和性が高いBIツールMicrosoft Power BI(以下、Power BI)の勉強を独学で開始。基本をしっかりと学びたいと思い始めたときに、ジールが提供するPower BIのeラーニング「DX-Learning Room」の存在を知ったという。
「ジールがBI専業ベンダーで豊富な実績とノウハウを持っていることは知っていました。ジールが提供するeラーニングとはどのようなものか興味がありました」(大前氏)
採用のポイント
現場部門でのデータ活用の裾野を広げるために
データ活用の考え方とPower BIのスキル習得をセットに
「すべての社員をデータドリブン人材に」をコンセプトに掲げてサービスを提供するDX-Learning Room。データ活用のスペシャリストの育成ではなく、現場部門がデータ活用のスキルを身につけることで、データ活用の裾野を広げることを目指す。
ジールのデータドリブンサービスユニット 福田 成志は、DX-Learning Roomの特徴である「データ活用の考え方とPower BIのスキル習得をセット」にする意義について、こう説明する。
「BIツールを導入しても、うまく活用できていない企業が多いのは、データ活用の考え方に対する理解不足が要因になっていると考えています。
DX-Learning Roomでは、最初のステップとしてデータ分析に関する著書や講義で定評の高いデータ&ストーリーLLC 代表の柏木 吉基氏の動画講義から始まります。動画講義は、データ分析の実務で必要なデータの見方や仮説の立て方など、データ活用の考え方を学ぶことができます。また、スキルの習得では実務で利用する観点を重視し、これまでの集合研修トレーニングの経験値に加え、Power BIの導入を支援しているエンジニアが現場で得た知見やノウハウをコンテンツ作成に活かしています」
株式会社ジール データドリブンサービスユニット ユニット長
福田 成志
DX-Learning Roomのコンセプトに賛同した大前氏は、高桑氏に「グローバル営業企画部を中心にDX-Learning Roomを受講したい」と相談したという。「簡単かつ効率的に、データの収集から報告書作成までを行えないかというのは、私自身が求めていたソリューションでした。これをきっかけに、データ活用業務の効率化を進めるべく、複数のメンバーに参加してもらうことにしました」(高桑氏)
グローバル営業企画部 担当課長 上野 創作氏は、「Excel標準機能であるPower Queryを独学で学んでいました。Power Queryは、データの整形・加工といった定型作業を自動化できるツールです。DX-Learning Roomでは、Power BI とともにPower Queryも学べるということで参加しました」と受講動機を語る。
大前氏は、他部門にも声をかけてPower BI の紹介も含めてDX-Learning Roomの説明会を開催。グローバル自動車営業本部 第1自動車営業部 栗山 美絵氏は受講目的について、「得意先様の売上データなどを収集・分析していて、主にExcelやMicrosoft Accessを利用していますが、業務の属人化を課題として捉えていました。Power BIの活用によって業務の標準化を図りたいと考えました」と話す。
受講のプロセス
自分のペースで学習できるeラーニングにオンラインサービスを組み合わせて学習効果を最大化
2021年5月、グローバル営業企画部を中心に10名がDX-Learning Roomの受講を開始。住友理工では、受講者に対してデータ分析の全体像を把握してもらうため、DX-Learning Roomのコンテンツである柏木氏の動画の受講から利用を始めていった。
その後、Power BIのスキル習得のためにサンプルデータをダウンロードして講師の画面操作を見ながら学習、ハンズオン形式により実際に自身のPCで操作して体得し、学習内容を演習コンテンツでおさらいして模範解答で確認する。またオンラインサービスに参加し、講師とのリアルタイムでの質疑応答で理解を深めることも可能だ。
eラーニングとオンラインサービスを組み合わせて受講者の理解を深めることができる
プロジェクト推進・技術支援のポイント①
実務でデータ活用を行う際の考え方や作法を重視
「データ活用の基本を学ぶことでデータ活用に対する理解が深まりました。今までExcelを使って分析業務を行っていましたが、Power BIを活用しデータの収集から加工、成果物まで全体の流れを考えた業務に改善できました。また、分析するのに整ったデータでないとうまく活用できないことも再認識しました。自分が操作する部分だけでなく、後工程を考慮してデータを作成しなければいけないという気づきも得られました」(大前氏)
ジールのデータドリブンサービスユニット 戸田 仁は、「DX-Learning Roomは、データ分析に造詣が深い柏木氏がコンテンツ作成に参画しています。分析手法ではなく、実務で分析を行うための考え方や作法を学ぶ観点を重視しています」と強調する。
株式会社ジール データドリブンサービスユニット コンサルタント
戸田 仁
プロジェクト推進・技術支援のポイント②
理解を深めるために何回も繰り返して学習することが可能
「一度では理解することが難しかったので、何回も繰り返して学習しました。また前に覚えた内容を忘れてしまった場合や、学習内容を実務で使う際に、もう一度内容を確認できる点も便利です。さらに隙間時間を有効活用し、自分のペースで学習できるので、実務を行いながら効率的にスキルを習得できます」(栗山氏)
「DX-Learning Roomは、PCやスマートフォンでいつでもどこでも何度でも学ぶことが可能です。業務部門の方が理解しやすく、興味をもって学習いただけるように丁寧な説明を心がけてコンテンツを作成しました。また、実務での利用イメージをつかみやすいように、『こう使える』といったシチュエーションも合わせて紹介しています」(ジール 戸田)
プロジェクト推進・技術支援のポイント③
オンラインサービスで講師がその場で受講者の質問に回答
「eラーニングに加え、双方向でコミュニケーションが行えるオンラインサービスに参加することで習熟度が向上しました。事前に演習課題に回答したうえで参加するオンラインサービスでは、講師が解答のガイダンスを行うとともに、その場で受講者の疑問点に答えてくれるので速やかに理解できます」(上野氏)
「eラーニングとオンラインサービスを組み合わせて学習効果を高めるのはDX-Learning Roomの特徴です。今後も、受講者それぞれが実務でデータを活用できるように、コンテンツの拡充とともに、eラーニングとライブのハイブリッド化へ強化を図っていきます」(ジール 福田)
DX-Learning Roomにおけるジールのサポートに対する評価も高い。「学習後に再度確認したいときの検索をもっと使いやすくしてほしいとの要望にも、すぐに応えてくれました」と語る大前氏。その言葉を受けてジール 戸田は「DX-Learning Roomはご利用企業や受講者の声を反映し、より学びやすく、実践力の高いコンテンツとして磨きをかけていきます。また、実務で使う基本的なパターン紹介の拡充や、より実践的な演習課題の作成にも注力していきます」と話す。
受講の成果と今後の展望
Power BIにより報告資料作成の効率と質のレベルアップ
今後、Power BIに関心をもつ営業部門への拡大を目指す
日々の分析業務で受講した効果が現れているという。「Power Queryを使ってこれまで手作業で行っていた作業を自動化し、分析業務の効率化を図っています。『きれいなデータ』に対する意識も向上しました。また月1回、DX-Learning Room受講者で定例会を開催し情報共有も行っています。今後、Power BIを使って毎月の報告資料を作成し、効率と質の両方のレベルアップを図っていきたいと考えています」(大前氏)
さらに栗山氏は、「Power BIを利用しデータ活用を実務に落とし込み、自身の業務改善を図っています。実務での活用範囲の拡大と、部門内での情報共有はこれからのテーマです」と話す。
部門内のそれぞれのPCで眠っているデータ活用にも取り組んでいく。「報告書を作成する際に、さまざまなPCに散在するデータを収集してデータを加工しExcelで分析するのは大変です。データを整形して、いつでも引き出して活用できる環境を整備し、営業部門にデータ活用を広めていき、さらなる業務改善につなげていきたいと考えています」と上野氏は話す。さらに大前氏は、「分析をするためのデータ加工の工程を削減しながら、本来目指していた業務に直結するデータ分析にシフトしていきたいと思います」と付け加える。
「データ活用の効率化とスピードの向上を図るという観点では、グローバルも含めて全社的な取り組みに広げていくことが大切です。今回のDX-Learning Roomの受講が、データ活用の裾野拡大につながる一歩になればと思います」(高桑氏)
人々の「安全・快適・環境」に貢献するために、新しい価値を創造し続ける住友理工。ジールはDX-Learning Roomを通じて、住友理工が歩むデータ活用を支援していく。