AIエージェントの活用が世界中の企業で急速に広がるなかで、自社への導入を検討している方も多いのではないでしょうか。ChatGPTなどの生成AIとは異なる特徴を持つAIエージェントの仕組みを理解することにより、さまざまなビジネスシーンで効果的に活用できます。
本記事では、AIエージェントの特徴や仕組みと種類、生成AIとの違い、具体的な活用例、その導入を成功に導くためのポイントについて詳しく解説します。
目次
AIエージェントとは
AIエージェントとは、特定の目標を達成するために複雑なタスクを自律的に実行できる高度な人工知能システムです。(時には複数のAIモデルやデバイス等を組み合わせて構築されます。)従来の対話型AIとは異なり、計画、記憶、振り返りの機能を有し、人の手を極力介さず効率的に業務を遂行します。
実現方式は、単純なルールベースのシステムから、高度な機械学習を活用したモデルまで多種多様です。AIエージェントを導入すれば、業務の自動化が進むことにより、大幅なコスト削減が可能になるとともに、ヒューマンエラーのリスクも軽減されます。
AIエージェントは、さまざまな業種や規模の企業にとって有用で、自社のニーズに合わせてうまく活用することによって、業務効率の向上や競争力の強化が可能です。
ChatGPTなどの生成AIとの違いは?無料で使える?
AIエージェントと生成AIは、どちらもAIを活用した技術ですが、その機能や用途には大きな違いがあります。ここでは、生成AIとAIエージェントとの違いについて4つの観点から解説します。
目標指向
生成AIのおもな目的は、文章作成や画像生成などといったコンテンツの生成です。一方、AIエージェントは、顧客対応や業務の自動化など、特定の目標達成に向けてタスクを実行することを目的としています。
特定の業務目標の達成に特化したAIエージェントは、行動が直接成果に結びつきやすく、投資対効果を測定しやすいというメリットがあります。業務改善や効率化の成果を具体的に数値化しやすいため、導入に際しての判断や効果についての検証もしやすいでしょう。
動作原理と学習能力
生成AIは、大量のサンプルデータをもとに確率的なモデルによってコンテンツを生成します。これに対し、AIエージェントは環境から得られた情報をもとに、機械学習モデルによって意思決定を行ない、適切な行動を選択します。
そのため、ビジネスにおける意思決定プロセスを可視化することが可能なため、企業としての説明責任を果たすことが可能です。特に重要な決定を迫られる場面や法的な問題が絡む場面では、AIエージェントが判断した根拠を明確に示せることが大きな強みとなります。
相互作用
生成AIは、基本的に与えられた情報をもとに一方向で処理を行ないます。一方で、AIエージェントは単に情報を処理するだけでなく、環境からのフィードバックを受けながら、自ら学習して意思決定を行なうことにより、状況に応じて行動を変えられます。
例えば、顧客の要望や市場動向の変化にリアルタイムで対応し、最適な行動を取ることが可能です。このAIエージェントの柔軟な適応能力は、急速に変化する昨今のビジネス環境に身を置く企業にとっては、大きな競争優位性をもたらす可能性を秘めています。
活用範囲
生成AIは、テキスト、画像、音声など特定分野のコンテンツ生成やアイデア創出に特化したモデルが主流です。一方、AIエージェントは、相互作用性により状況に応じた判断を行なうため、より幅広い領域に対応可能な汎用性を有しています。
例えば、顧客サービス、在庫管理、スケジューリング、リスク分析などさまざまな用途で活用可能です。特に、企業全体のDXを推進するうえで、AIエージェントの汎用性および自律性は大きなメリットとなる可能性があります。
使用料金
AIエージェントもChatGPTなどの生成AIもいずれも無料・有料のツールが存在しています。ただし、APIとして自社のシステムに組み込む機能などは有料で用意されているケースや、APIの使用制限ある可能性があるので注意しましょう。
AIエージェントを構築する4要素【分析】
AIエージェントは、「環境」「センサー」「意思決定」「アクチュエーター」という4つの要素により構成されています。AIエージェントの仕組みは、これらの要素が相互に連携することにより、複雑なタスクを自律的に実行可能である、というものです。
環境
AIエージェントにおける「環境」とは、AIエージェントが活動する空間や状況のことです。おもに、現実世界における物理的な環境と、仮想空間内のデジタル環境に分けられます。
例えば、自動運転車にとっての道路、信号、歩行者などは物理的な環境の要素です。デジタル環境であれば、チャットボットにとってはインターフェースを通じて入力された一連のメッセージなどが挙げられます。
AIエージェントは、これらの環境から情報を取得し、適切な行動を決定します。
センサー
センサーは、環境から情報を取得するための手段で、人間に例えると「目」や「耳」のような役割です。例えばカメラ、赤外線センサー、マイクなどがこれにあたります。
AIエージェントは、これらのセンサーを通じて環境の状態を認識し、その情報をもとに適切な判断を行ないます。そのため、センサーの種類や性能によってAIエージェントの能力が大きく左右されるといってもよいでしょう。
意思決定
意思決定は、取得した情報をもとに目標を達成するために最適な行動を選択する重要なメカニズムで、人間の「脳」にあたる部分です。意思決定のプロセスは、単純なルールベースのアルゴリズムから、高度な機械学習モデルに至るまで多様なアプローチが存在します。
AIエージェントの性能や適用範囲は、この意思決定の仕組みによって大きく変わります。
アクチュエーター
アクチュエーターは、AIエージェントが環境に対してアクションを起こすための手段です。具体的には、ロボットアームの操作などの物理的装置に加え、デジタル空間を通じた指示の送信なども含まれます。
アクチュエーターを通じて、AIエージェントは意思決定にしたがって処理を実行し、環境に影響を与えます。AIエージェントが効果的に行動するためには、適切なアクチュエーターの選択が不可欠です。
AIエージェントの3つの特徴
AIエージェントは、従来のAIシステムとは異なる独自の能力を持っています。ここでは、AIエージェントが実行可能なことについて3点解説します。
自律的な行動
AIエージェントの最大の特徴は、自律的にタスクを管理し、目標の達成に向けて自動的に行動を調整可能なことです。AIの高水準なアルゴリズムや機械学習の結果によって、人間が細かい指示を行なう必要はなく、AIエージェントが複雑なタスクを効率的に処理できます。
例えば、カスタマーサービスにおいては、顧客の問い合わせに24時間365日対応し、適切な情報提供や問題解決を行なうことが可能です。また、製造ラインでは、製品の品質を常時モニタリングし、異常を検知した場合には即座に対応できます。
継続的な学習
AIエージェントは、実行したタスクから学習したことをもとに、パフォーマンスを向上させる能力を持っています。自らの行動を自主的に評価することで、自律してパフォーマンスを改善することが可能です。
例えば、顧客対応を繰り返すことによって、得られた情報を学習し、より適切な回答ができるようになります。この学習能力により、時間とともにAIエージェントの性能が向上し、複雑なタスクや状況下でもより良い意思決定を行なうことが可能です。
また、新しい情報や環境の変化にも柔軟に適応できるため、運用が長期化しても高い効果を維持できるでしょう。
【API】複数エージェントとの連携
AIエージェントは、単独で機能するだけでなく、複数のエージェントと連携することもできます。そのため、サブタスクが複雑に関連する環境でも、効率的に業務を遂行することが可能です。
例えば、工場での生産において、それぞれのエージェントが異なる生産工程を担当して管理しつつ、全体として最適なタイミングで製品を完成させるようなシステムを構築できます。
また、異なる専門性を持つエージェントが連携することにより、人間では難しい高度な問題解決や意思決定も可能となるため、医療分野やマーケティング領域での活用が期待できます。
【AIエージェント】ツールの種類と活用例
AIエージェントには、特定の用途や環境に最適化され、それぞれが異なる特徴や能力を持ち、多様な種類が存在します。ここでは、AIエージェントの種類と具体的な活用例についてご紹介します。
単純反射エージェント
単純反射エージェントは、入力された情報に基づいて即座に応答する最も基本的なタイプのAIエージェントです。過去データによる学習は行なわず、入力情報と一致するルールに基づいて出力を生成するシンプルな仕組みで、迅速な応答が求められるタスクに適しています。
例えば、温度が設定値を超えるとエアコンを作動させるサーモスタットや、基本的なお問い合わせに対する自動返信などが代表的な活用例です。
仕組みの単純さゆえに、特定の状況下では機敏で信頼性の高い動作が可能です。
モデルベース反射エージェント
モデルベース反射エージェントは、現在の情報と過去のデータをもとに意思決定を行なうAIエージェントです。内部状態モデルと呼ばれる、環境の状況を示すモデルを持ち、現在の環境の変化に応じて最適な行動を選択します。新たな情報を取得するたびにモデルが更新され、より複雑なタスクに対応できるようになることもモデルベース反射エージェントの特徴です。
代表的な例として、ユーザーの行動履歴に基づいてパーソナライズされた商品提案を行なうレコメンドシステムが挙げられます。具体的には、ECサイトにおける購買履歴や閲覧履歴を分析して、ユーザーの好みに合わせた商品を提案することができます。
また、スマートホームシステムによる家電の制御なども、このタイプのAIエージェントが活用されています。
目標ベースエージェント
目標ベースエージェントは、特定の目標を達成するために最適な行動を選択するタイプのAIエージェントです。現在の状態から将来の状態を予測し、目標の状態と比較することによって、その差を埋めるために最適な行動を選択し決定します。
代表的な例として挙げられるのが、「安全に目的地まで着く」ことを目的とした自動運転システムです。自動運転システムでは、現在位置から目的地までの最適なルートを計算し、交通法規を守りながら安全に走行するための、一連の行動を決定します。
ほかにも、ロボットの行動計画や、スマートグリッドにおける電力需給の最適化などにも応用されています。
効用ベースエージェント
効用ベースエージェントは、行動の選択肢を評価し、期待される効用を最大化するように設計されたAIエージェントです。各行動の結果に対する「効用」の大きさを示す数値を割り当て、その数値が最大となるような行動を選択します。
効用ベースエージェントを利用する代表例として挙げられるものが掃除ロボットです。掃除ロボットは単に部屋をきれいにするだけでなく、掃除の進捗状況や障害物の位置、バッテリー消費量や騒音レベルなど複数の要素を考慮して最適な掃除の経路を選択します。
また、効用ベースエージェントは、金融市場におけるトレーディングボットやダイナミックプライシングシステムなど複雑な課題に対する意思決定が求められる場面においても有効です。
学習エージェント
学習エージェントは、経験に基づいて自らの行動戦略を改善する能力を持つAIエージェントです。過去のデータや行動のフィードバックを利用して、環境に適応しながらパフォーマンスを向上させていきます。機械学習アルゴリズムを活用して変化する状況に対応できるため、詐欺の検出やコンテンツの推薦など動的な環境で特に効果的です。
ほかにも、対戦型ゲームのAIプレイヤーなどが代表例として挙げられます。近年では、チェスや囲碁のAIが多数の対戦データを通じて戦略を学習しており、今や人間のトッププレイヤーをもしのぐほどのレベルです。
また、Amazonのスマートスピーカー「Alexa」などに代表される、自然言語処理による対話システムも、ユーザーとの対話を重ねることにより応答の質を向上させています。
階層型エージェント
階層型エージェントは、異なる階層ごとに意思決定を行なう複数のエージェントによって構成されるタイプです。複数の下位エージェントが特定のサブタスクをこなし、上位エージェントがそれらを調整して全体の目標を達成できるよう設計されています。この構造により、大規模で複雑なシステムを効率的に管理することが可能です。
階層型エージェントは、生産ラインや航空管制など幅広い分野で用いられています。例えば、自動車製造ラインでは、各工程を担当する下位エージェントが部品の組み立てや品質チェックを行ない、上位エージェントが全体の生産スケジュールを最適化するといった仕組みです。
航空管制システムでは、上位エージェントが広域の航空交通を監視し、全体の流れを最適化します。これに対して、下位エージェントはそれぞれの空港や区域での離着陸、タキシング、航空機の誘導など、より詳細な特定のタスクに集中します。
事業(ビジネス)でAIエージェントを使う際の注意点
AIエージェントは多くのメリットをもたらす一方で、適切な使用と管理が求められます。ここでは、AIエージェントを使ううえで注意すべきポイントについて3点解説します。
セキュリティ対策は必須
AIエージェントを導入する際にはセキュリティ対策が必須です。AIエージェントは大量のデータを処理し、場合によっては個人情報や機密情報を扱うため、必然的に情報漏洩のリスクが高まります。適切なアクセス制御やデータ暗号化の実施、定期的にセキュリティ評価を行なって脆弱性を特定するなど、然るべき対策を講じておくことが重要です。
セキュリティ対策を怠ると、サイバー攻撃による情報漏洩などのリスクが高まり、企業の信頼性や評判に深刻な影響を与える可能性があります。
ハルシネーションのリスクを理解する
AIエージェントは、ときに誤った情報をあたかも正しい情報であるかのように出力してしまう「ハルシネーション」を引き起こす可能性があります。ハルシネーションを見過ごすと、情報の質が低下して企業の信頼を損なうおそれがあるため注意してください。
例えば、カスタマーサポートAIが誤った製品情報を提供したり、分析AIが不正確なレポートを生成したりする可能性があります。これらを防ぐためには、専門家のチェックを入れるなど必要に応じて人間による情報の確認や修正を行ない、誤情報の発信を防ぐ仕組みづくりが必要です。
人材育成とトレーニングが必要
AIエージェントを利用するのはあくまでも人間です。そのため、AI技術に関する総合的な知識と技術を持った人材の育成が必要不可欠です。また、AI技術を利用する従業員が、リテラシー不足による誤情報の流布やセキュリティ事故を起こさないための教育も行なわなければなりません。
自社にノウハウがない、あるいはリソースが確保できない場合などは、ベンダーやコンサルティング事業者など、外部による専門のサポートを受けることも一つの方法です。コストはかかるものの、専門知識を持つ人材を育成できれば、AIエージェントの運用やメンテナンスを円滑に行なえるようになり、長期的には投資対効果が高まります。
まとめ
AIエージェントは、業務効率化や生活の利便性向上において大きな可能性を秘めており、さまざまな分野での活用が期待されています。今後、AIエージェントはさらに進化し、ビジネスや日常生活において不可欠な存在となるでしょう。
しかし、導入にあたってはセキュリティリスクなどの課題をしっかりと把握することが重要です。AIエージェントの特徴や仕組みについて理解し、適切に活用することにより、私たちの生活やビジネスをより豊かにする強力なツールとなるでしょう。
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