公開日:2024年5月28日

更新日:2024年11月18日

デジタル技術の進化にともない、消費者のニーズは多様化・複雑化しています。企業には、市場の変化に対応できる競争力とスピードが、これまで以上に求められるようになりました。そこで、近年注目されているのが「データドリブン経営」です。

本記事では、データドリブン経営がDXや従来のデータ活用とどのように違うのかを解説します。

また、企業がデータドリブン経営を取り入れるメリット・デメリットのほか、データドリブン経営の成功事例や導入方法にも触れるので参考にしてください。

データドリブン経営とは?データに基づいた経営方法


「データドリブン(Data Driven)経営」とは、データに基づいて意思決定を行なう経営手法のことです。事業や業務を通じて収集・蓄積されたデータを分析し、その結果を経営における戦略や方針の決定に役立てます。

これまでは、経営に関する意思決定を経営者の勘と経験に頼ってきた企業が少なくありませんでした。

しかし、データドリブン経営を取り入れれば、データを客観的な指標として活用できるようになります。

これにより、従来よりも迅速で精度の高い経営判断が可能になる点が、データドリブン経営の特徴です。

 

データドリブン経営が注目される背景

多くの企業がデータドリブン経営に注目するようになった背景には、デジタル技術の急速な進歩があります。なかでも、インターネットとスマートフォンの普及は、消費者の行動に大きな変化をもたらしました。

例えば、ある商品を「欲しい」と思ったとき、従来であれば詳しい情報を得るために実店舗まで足を運ぶ必要がありました。

しかし、現在ではさまざまな情報に、いつでもどこからでもアクセスできる環境が整っています。

加えて、消費者の嗜好が多様化したことなどにともない、企業と顧客の接点も複雑になりました。
企業がさまざまなニーズに応え続けるためには、素早く的確な判断によりビジネスを加速させていくことが求められます。

一方で、IoTやAI・ビッグデータといった、企業の経営に役立つデジタル技術も進歩しています。

すでに多くの企業が、これらの技術を活用してデータを収集し、分析するようになりました。経営におけるデータ活用は、すでに始まっているのです。

こうした市場の変化のなかで、従来からの経営方法を変えずに同業他社との競争に勝ち残ることは、決して簡単ではないでしょう。

より迅速で客観性のある経営判断のためにデータを活用する、データドリブン経営の必要性が高まっているのです。

データドリブン経営とは?DX・従来のデータ活用とはどう違うのか?


データを経営に役立てる概念といえば、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が思い浮かぶという方も少なくないでしょう。

ここでは、データドリブン経営がDXや従来のデータ活用とどのように違うのかを説明します。

DXとの違い

DXの実現には、データドリブン経営が欠かせません。

DXは、「データとデジタル技術を活用して生活やビジネスを変容させること」を指す言葉です。

変化の激しい現代のビジネス環境においても顧客への提供価値や競争力を高めていくために、多くの企業がDXに取り組んでいます。

つまり、情報をデジタル化して蓄積し、専用ツールなどを用いて分析した結果をさまざまな意思決定に役立てていくことが不可欠なのです。

DXとデータドリブン経営は「目的」と「手段」の関係にあると考えれば、両者の違いを理解しやすいでしょう。

企業が「ビジネスの変容」を目的とすれば、そのための手段の一つとして「データに基づいた意思決定」が求められるのです。

したがって、データドリブン経営に必要な環境を整える取り組みは、DX推進にもつながる施策だといえます。

従来のデータ活用との違い

データドリブン経営が注目されるようになる前から、多くの企業が業務改善や意思決定にデータを活用してきました。では、データドリブン経営と従来のデータ活用との違いは、どこにあるのでしょうか。

従来のデータ活用において、データはビジネスを支える要素の一つです。

そのため、データは部門やプロジェクトなどの限られた範囲内でのみ活用されるのが一般的でした。今後のビジネスが現在の延長線上にあるのだとすれば、これでも十分かもしれません。

これに対して、データドリブン経営では、データを分析した結果から新たな洞察を引き出します。

これは、ビジネスを変化させていくにあたり、データがより中心的な役割を担うということです。

データは組織全体にわたって存在するものであるため、すべての従業員があらゆるデータにアクセスできる環境を構築し、データ中心の企業文化を定着させていければ理想的でしょう。

データドリブン経営を行なう4つのメリット


データドリブン経営に取り組むと、以下のようなメリットを得られる可能性があります。

  1. 意思決定のスピード・精度が向上する
  2. 顧客ニーズの理解とサービス改善が進む
  3. 自社の強みや課題の可視化が可能になる
  4. 生産性向上・業務効率化につながる

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

1.意思決定のスピード・精度が向上する

データドリブン経営では収集・蓄積されたデータを用いることを説明しましたが、そのなかにはリアルタイムに近いものも含まれます。

こうしたデータを即座に分析すれば、市場の動向や顧客の消費行動をいち早く把握できるため、目まぐるしく変化するニーズにも迅速に対応可能です。

また、データに基づいた客観的な分析は、より精度の高い予測を可能にします。

意思決定にかける時間を削減しながらも、市場のニーズにマッチする的確な施策につなげられる点は、データドリブン経営の大きなメリットだといえるでしょう。

2.顧客ニーズの理解とサービス改善が進む

顧客のニーズをより深く理解できるようになる点も、データドリブン経営に取り組むメリットです。十分な量のデータから得られた分析結果を考察すれば、顧客が抱えている不満や、商品・サービスへの需要を把握できます。

これらの知見は、商品・サービスの改善に役立つものとなるでしょう。データに基づいた商品開発により、より多くの人に求められる価値を提供できるようになるのです。

3.自社の強みや課題の可視化が可能になる

データドリブン経営を通じてさまざまなデータを分析すれば、自社の強みや課題・弱点なども明らかになってきます。自社がどのような状況にあるのかを可視化できることは、企業がさらなる成長を目指すうえで大きなメリットです。

強みを活かせば、新規ビジネスの創出や、競争力のあるサービス改善の可能性が見えてきます。課題や弱点の克服を目指せば、業務体制の見直しや人材確保などの施策につながるでしょう。

4.生産性向上・業務効率化につながる

前述したとおり、データドリブン経営はDX推進にもつながる取り組みです。

データ活用基盤や分析ツールを整えてデジタル活用を進めれば、業務の効率化が期待できます。併せて、従業員の負担やコストの低減も見込めるでしょう。

また、データから業務におけるムダが見えてくることも考えられます。ムダな部分を取り除いていけば、組織としての生産性も次第に向上していくでしょう。

データドリブン経営のデメリット

データドリブン経営では、以下の点がデメリットになるかもしれません。

  1. データ分析などのスキルを持つ人材の確保・育成が必要
  2. 初期コストや運用コストが必要
  3. データの収集・蓄積が欠かせない

それぞれ、詳しく解説します。

1.データ分析などのスキルを持つ人材の確保・育成が必要

データドリブン経営には、データの取り扱いに長けた人材が欠かせません。データから知見や洞察を得るには、分析に関する専門知識が必要なためです。

このような人材が社内に不足している場合は、人材確保が課題となります。

適任者を社外から採用する方法と併せて、社内での人材育成についても考える必要があるでしょう。

加えて、そのためにどれくらいのコストと時間がかかるかも検討しなければなりません。

2.初期コストや運用コストが必要

データドリブン経営に必要な環境を整えるには、データを収集・蓄積し、分析するためのツールや機材を用意しなければなりません。

例えば、データウェアハウスのようなデータ活用基盤や、BIなどの分析・可視化ツールの導入が必要です。そのためには、初期コストに加えて運用コストもかかります。

蓄積されたデータにいつでもアクセスできるようにしておかなければならない以上、セキュリティのためにも継続的なコストがかかるでしょう。

データドリブン経営を取り入れれば収益の向上が見込めますが、環境の整備と維持にコストがかかることも想定したうえで、費用対効果について十分に検証する必要があるといえます。

3.データの収集・蓄積が欠かせない

データドリブン経営の要は、データ分析にあります。とはいえ、事業にかかわるデータをすぐには用意できないケースもあるでしょう。

その場合は、どのようにしてデータを収集していくかを考えることから始めなければならないため、データドリブン経営の効果を実感できるようになるまでに時間がかかってしまいます。

また、データはただ集めただけで十分に活用できるものではありません。データ収集の目的をあらかじめ明確にしたうえで、実際に活用できるように整理しておくことが大切です。

具体的には、データの保存形式を社内で統一したり、別々に収集したデータを部署をまたいで連携させたりといった準備が必要になるでしょう。

データドリブン経営の成功事例紹介

ここからは、データドリブン経営を実践して成果をあげた企業の事例を紹介します。

事例1:日清食品ホールディングス株式会社

日清食品ホールディングス株式会社様には、次のような要望がありました。

● データドリブン経営の実現に向け、全社で汎用的に利用が可能なデータプラットフォームを構築したい
● データを活用する文化を社内に醸成するため、各部門の現場担当者にBIツールの利活用を促進したい
● 自社内にデータ活用に関するノウハウや知見を蓄積することで、内製化を加速させたい

以下のような対策を行なうことで、システム導入の効果と実績を得ています。

● データウェアハウス(DWH)の構築により、社内の様々なシステムからのデータを蓄積、統合することが可能となり、データ分析・活用の量と質、速度の向上を実現
● Microsoft Power BIの活用に加え、必要なデータを効率的に取得する仕組みを整備したことにより、集計・分析にかかる作業負荷および時間を大幅に削減
● 現場担当者のデータ利用が容易になり、内製化をさらに加速

事例2:株式会社大林組

株式会社大林組様には、次のような要望がありました。

● もととなるデータを複製しないデータプラットフォームを構築したい
● さまざまなデータソースを即座に統合できるデータプラットフォームを短い期間で構築したい
● すべてのユーザが利用するため、アクセス権限を厳格に設定・管理したい

これらを受けて対策を実施し、以下の効果・実績を得ています。

● 物理的にデータを動かすことなく仮想的にデータを統合し、すべてのユーザによるリアルタイムなデータ活用の土台を構築、データドリブン経営の推進
● 既存システムへの影響を最小化する仮想化のメリットと、ジールの質の高い構築作業により、わずか3カ月間で環境構築
● データベースレベル、フォルダ/ビューレベル、行・列レベルでアクセス権限を設定できるため、セキュリティと利便性の両立

事例3:三光ソフランホールディングス株式会社/Stay JAPAN株式会社

三光ソフランホールディングス株式会社様には、次のような要望がありました。

● 運用負荷や多くのコストをかけることなく、データ分析基盤を構築・運用したい
● 集計作業を効率化し、KPIの可視化により意思決定の迅速化を図りたい
● 多くの社員がデータを分析し、新たな戦略を生み出す環境をつくりたい

対策を行なうことで、以下の効果・実績を得ています。

● 売上集計業務に要していた毎月20時間の削減など、定型レポートの作成業務を効率化し生産性を向上
● ZEUSCloudのBIツールとデータレイクによりデータを可視化し、新たな価値創造や業務改善に有効な「気づき」を得ることが可能に
● データの可視化により、自身でどのようにアクションを起こしていくかを考える機会が増え、業務に積極的に参加する意欲が湧いた

データドリブン経営を始める流れ・進め方

データドリブン経営を実現するための流れについて、大まかに整理しておきましょう。企業がどのような課題に取り組んでいるかによって変わる部分もありますが、データドリブン経営は以下の手順で進めるのが一般的です。

  1. 現状を整理し、取り組む目的とスコープを定義する
  2. データを収集・蓄積する
  3. データを分析・可視化する
  4. 意思決定を行ない、アクションプランを策定・実行する

データドリブン経営に用いるデータの種類や量は膨大です。前述したように、データは漠然と集めるのではなく、あらかじめ目的やスコープを定義しておくことが重要です。

目的に沿って必要なデータを収集したら、分析結果に基づいて自社に適した経営判断を行ないましょう。そのうえで、アクションプランを策定し、実行に移します。

なお、ここまでの一連の結果を検証し、PDCAサイクルによって改善を繰り返すことも大切です。

データドリブン経営の実現に欠かせないこと

最後に、データドリブン経営を実現させるために必要なことを解説します。

1.データの収集・分析のための環境整備

繰り返しになりますが、企業がデータドリブン経営に移行するためには以下の要素が必要です。

● データを収集・蓄積するためのプラットフォーム
● データから知見を得るための分析ツール
● データを適切に扱える人材

上記のどれが欠けても、データドリブン経営は機能しないでしょう。例えば、いくら高機能なプラットフォームと分析ツールを導入しても、データに関する専門知識とスキルを備えた人材がいなければ効果は期待できません。

環境と人材の整備にコストと時間をかけることは、データドリブン経営の実現に欠かせない要素だといえます。

2.組織内でデータドリブン経営の文化を定着させる

データドリブン経営は、データに基づく客観的な分析結果を取り入れることで、経営判断に効果を発揮するものです。そのため、経営層や役職者の一声でコロコロと方針が変わってしまうような企業とは、相性が悪いと言わざるを得ません。

とはいえ、データドリブン経営を導入するのは経営者の勘や経験、思想や理念といったものを否定するためではありません。

むしろデータによる裏付けを得ることで、より自信を持って事業を行なえるようになるとも考えられます。

大切なのは、意思決定を左右する責任者がデータを適切に活用する文化を、組織内に定着させることだといえるでしょう。

データドリブン経営を実現するならジールへ

株式会社ジールは、高度なデータ活用のためのDX化支援、SI開発、コンサルティングなど様々な支援を行なっています。

国内外のエキスパートを揃え、さまざまなソリューションを組み合わせることにより、企業や組織ごとに最適なデータプラットフォームの構築に加えて、運用と保守も可能です。

目の前のデータに関する課題解決から、将来を見据えたデータ活用基盤の実現まで、事業分野を問わずお気軽にご相談ください。

ビジネスの加速と成長には、データ活用に関する専門的な知識・スキルが欠かせません。しかし、そのための人材確保がうまくいかずに悩んでいる企業が少なくないようです。必要な人材は、社内で育成することも検討しましょう。

ジールでは、DX推進のための人材育成サービスも提供しています。データドリブン経営に求められる人材の社内育成を進めるためにも、ぜひご活用ください。

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まとめ

データドリブン経営は、データを組織の中心に据えてビジネスを変化させていく手法であり、DX推進の手段でもあります。データを戦略や方針の決定に役立てることで、より迅速で客観性のある判断が可能です。

データドリブン経営を始めるには、データ活用に適した環境と専門性を備えた人材が欠かせません。また、データ収集の段階から目的意識を持って取り組む必要があります。

一定の時間とコストがかかりますが、適切に準備を進めればビジネスの成長につながるメリットを得られるでしょう。

データドリブン経営の実現には、ぜひジールのサービスをお役立てください。企業のニーズにフィットするデータ活用基盤の整備と、今後必要となる人材の育成をサポートいたします。

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