アプリの開発ツールとして生成AI「Dify」の導入を検討しているものの、「どの程度のアプリが作れるのか」「使いこなせるのか」と不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
生成AIを活用したアプリの開発プラットフォーム「Dify」は、プログラミングスキルがない人でも、直感的な操作で誰でも簡単にAIアプリを作成できることが特徴です。
本記事では、Difyの特徴や料金体系、具体的な作成手順について解説するほか、実際の活用例についてもご紹介します。Difyの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
Difyとは?何ができる?
Difyは、プログラミングスキルが不要で、誰でも簡単にAIアプリケーションを開発できるオープンソースのプラットフォームです。
非エンジニアやビジネスユーザーでも、直感的なインターフェースを通じてノーコード・ローコードでチャットボットやコンテンツ生成ツールなどを作成することができます。
ブラウザ上で動作するためインストールの必要がなく、すぐに使い始められることも特徴です。
テンプレートを活用すれば、数クリックで基本的なアプリケーションを作成可能で、カスタマイズも容易に行なえます。
Difyは、生成AIを活用して特定の用途に特化したアプリケーションを簡単に構築可能なため、業務効率化や顧客満足度の向上など、さまざまな活用事例があります。
無料プランでも最大200回までのGPTリクエストが可能で、気軽に試用できることも魅力の一つです。
生成AI「Dify」の7つの特徴
生成AI 「Dify」の特徴は多岐にわたります。ここでは、Difyが持つ7つの主要な特徴、その利便性と活用の可能性についてみていきましょう。
1.直感的なインターフェース
Difyの最大の特徴の一つは、使いやすい直感的なインターフェースです。
ドラッグ&ドロップだけでアプリの処理や機能を視覚的に構築できるため、複雑な条件分岐も直感的に行なえます。
各コンポーネントの配置や接続も、マウス操作だけで調整可能となっており、アプリの全体像を簡単に把握可能です。
さらに、Difyは日本語に完全対応しているため、英語やプログラミングが苦手なユーザーでもスムーズにアプリの開発を始められます。
2.さまざまなAIモデルに対応
Difyは多様な生成AIモデルに対応している点も特徴の一つです。
GPTシリーズ(OpenAI)やClaudeシリーズ(Anthropic)をはじめとした最新の大規模言語モデル(LLM)をサポートしており、ユーザー自身のニーズや予算に合わせて最適なモデルを選択できます。
主要なAIフレームワークやモデルとの互換性を備えているため、チャットボット、テキスト生成、画像認識、データ分析など幅広い用途に対応可能です。
また、アプリケーション間でLLMを柔軟に切り替えることが可能で、異なるモデルのパフォーマンスを比較し、用途に応じて最適なモデルを選択できます。
3.RAGエンジンを搭載
RAG(Retrieval-Augmented Generation)エンジンを搭載している点も、Difyの重要な特徴の一つです。
RAGとは、検索拡張生成とも呼ばれ、AIモデルの回答生成プロセスに、外部データソースから関連する情報を検索して取得し、組み込む技術です。
RAGエンジンの搭載により、ユーザーは自社独自のデータベースや社内ドキュメント、Webサイトなどといった外部情報を参照して、AIアプリケーションを簡単にカスタマイズできます。
その結果として、より正確で文脈に即した応答を行なうAIアプリケーションを作成可能となり、特定の分野や用途に特化した精度の高いソリューションを提供できます。
4.自由にカスタマイズ可能
Difyはオープンソースとして提供されており、ユーザーが自身のニーズに合わせて自由にカスタマイズや拡張を行なうことができる点も魅力の一つです。
また、コミュニティで共有される機能や設計書を活用すれば、開発効率の大幅な向上が可能です。
コミュニティによるサポートも受けられるため、技術的な課題に直面した際も迅速に解決策を見つけられる点もメリットです。
これらの柔軟性と拡張性によって、Difyは幅広いユースケースに対応できます。
5.外部ツールやAPIとの連携
Difyは連携できる外部ツールやAPIも多様です。Google検索やSlackなどの一般的なサービスから、DALL-EやStable Diffusionといった最先端の画像生成AIまで、幅広い外部ツールを簡単に組み込めます。
また、APIの統合により、独自のカスタムツールを作成することも可能です。
これにより、既存のシステムやサービスと、Difyで作成したAIアプリケーションをシームレスに連携できます。
これらの統合機能によって、Difyは単なるAIアプリ開発プラットフォームを超え、多様なサービスやデータソースを活用した高度な機能を持つソリューションの構築が可能です。
6.オンプレミス対応も可能
Difyは完全オンプレミス環境での運用が可能です。自社のローカルサーバーにDifyをインストールし、自社環境で生成AIアプリケーションを運用できます。
クラウドサービスに依存することなく、自社内で安全に生成AI技術を活用できるため、機密性の高いデータや個人情報が外部に流出するリスクを大幅に抑えられます。
また、データの所在が明確になる点については、コンプライアンスやデータガバナンスの観点からも有利です。
高度なセキュリティかつ柔軟な運用を必要とする企業にとって、Difyのオンプレミス対応は大きなメリットの一つといえるでしょう。
7.商用利用が可能
Difyはオープンソースソフトウェアとして提供されており、商用利用が可能です。
オープンソースソフトウェアの開発や配布の際に用いられる代表的なライセンスの一つであるApache License 2.0に基づいて公開されているため、基本的には自由に利用できます。
個人利用や小規模ビジネス、非営利目的の利用、オープンソースプロジェクト、企業の内部利用などでは、基本的に商用ライセンスの取得は不要です。
例えば、個人ブロガーがコンテンツ生成に利用したり、カスタマーサポートを行なうチャットボットを開発し小規模なECサイトで使用したりする場合などが挙げられます。
ただし、商用ライセンスの取得が必要となるケースもあるため注意が必要です。具体的には以下のようなケースが該当します。
商用ライセンスの取得が必要となるケースの例 ・年間収益が100万ドルを超える大規模ビジネス ・Difyで開発したアプリケーションをマルチテナントSaaSとして提供する場合 ・Difyで開発したアプリケーションを自社ブランドとして販売する場合 ・Difyで開発したAIモデルをAPI経由で提供する場合 ・ほかの製品やサービスにDifyを組み込んで販売する場合 |
また、Difyのロゴや著作権情報を削除・変更することは基本的に禁止されているため、これらを改変する際にはDifyのビジネスチームに許可を得て、商用ライセンスの取得が必要です。
少しでも判断に迷う場合には、Difyのビジネスチームに連絡して直接確認し、適切なライセンス管理のもと運用しましょう。
Difyの料金プラン
Difyでは、以下の4つの料金プランが用意されています。各プランはメッセージクレジット、チームメンバー数、作成可能なアプリ数などで差別化されており、プロジェクトの規模や必要な機能に応じて最適なプランを選択可能です。
プラン名 | 料金 | メッセージクレジット | チームメンバー | アプリ作成数 |
サンドボックス | 無料 | 200回 | 1名 | 10個 |
プロフェッショナル | 59ドル/月(月契約) 590ドル/年(年契約) |
5,000回/月 | 3名 | 50個 |
チーム | 159ドル/月(月契約) 1,590ドル/年(年契約) |
10,000回/月 | 無制限 | 無制限 |
エンタープライズ | 要問合せ | 要問合せ | 無制限 | 無制限 |
無料で利用できるサンドボックスプランは、AIアプリ開発の試験的な利用や小規模なプロジェクトで基本的な機能を試す際に適しています。
プロフェッショナルプランは、より多くのリソースと機能を利用可能な、個人開発者や小規模チーム向けのプランです。
チームプランは中~大規模のプロジェクトや組織に適しており、エンタープライズプランは大規模な企業や特殊なニーズを持つ組織向けのカスタマイズ可能なプランとなっています。
【手順】Difyの使い方
Difyは、ニーズや技術レベルに応じて、以下のいずれかの利用方法を選択します。
・WebブラウザからSaaSとして利用する ・ローカル環境にインストールして使用する |
ブラウザでの使い方
Difyをブラウザで使用する場合の手順は以下のとおりです。
【Step1】Difyの公式サイトにアクセス
まず、Difyの公式サイトにアクセスし、GitHubまたはGoogleのアカウントを使ってログインします。
アカウントを持っていない場合には、いずれかのサービスで事前にアカウントの新規作成が必要です。
【Step2】ワークフローの選択と基本情報の入力
ログイン後、ホーム画面が開いたら「最初から作成」または「テンプレートから作成」を選択します。
自由にカスタマイズしたい場合は「最初から作成」を、素早くアプリ開発を進めたい場合は「テンプレートから作成」を選択することがおすすめです。
次に、アプリケーションの名前や概要、アイコンの設定など基本的な情報を入力して「作成する」をクリックします。
【Step3】LLM(大規模言語モデル)のAPIを選択
続いて、使用したいLLMのAPIを選択します。デフォルトでは特定のLLMが設定されていますが、必要に応じて変更可能です。
独自にOpenAIやGoogle Cloudを使用する場合には、設定画面からAPIキーを追加できます。
【Step4】プロンプトエディタを設定
アプリケーションの基本設定ができたら、「手順」欄にプロンプトを入力します。
ここでAIモデルの応答方法を詳細に設定することが可能です。
プロンプトの質が高いほど、優れたアプリケーションを作成できます。
【Step5】アプリケーションのテスト
最後に、「デバッグとプレビュー」で開発したアプリケーションのテストを行ない、問題がなければ保存・公開します。
アプリの公開後も、必要に応じてDify内でアプリケーションを編集・更新することが可能です。
ローカルでの使い方
Difyをローカル環境で使用する場合の手順は、以下のとおりです。
【Step1】Dockerをインストール
まず、使用するコンピューターにDockerがインストールされている必要があります。
Dockerがインストールされていない場合は、公式サイトからOSに適したインストーラーをダウンロードし、指示にしたがってインストールを完了させます。
【Step2】Difyのダウンロード
次に、GitHubからDifyのソースコードをクローン(複製)します。コマンドプロンプトやターミナルを開いて、以下のコマンドを入力・実行します。
【Step3】Dockerを実行しブラウザを起動
クローンが完了したら、Dify内にあるDockerディレクトリに移動し、以下のコマンドでDockerを起動します。
docker compose up -d
【Step4】Difyにログイン
コマンドプロンプト上での処理が完了したあと、ブラウザで下記のURLにアクセスします。
http://localhost/install
Difyのログイン画面が表示されたら、メールアドレスとユーザー名、パスワードを入力して管理者アカウントを設定します。
ホーム画面が表示されれば設定完了です。設定完了後は、下記のURLにアクセスすればローカル環境でDifyを使用できます。
http://localhost
ホーム画面が表示されたら、以降のフローはブラウザで使用する場合と同じです。
Difyの活用例
Difyは、その直感的な操作性と開発効率の高さから、幅広い業界で導入・利用が進んでいます。ここでは、Difyが企業においてどのように活用されているのか、具体的な活用例についてご紹介します。
チャットボット
Difyの代表的な活用例が、ユーザーや顧客からの問い合わせに自動で応答してくれるチャットボットの開発です。
FAQ対応や商品検索機能を持つチャットボットを作成すれば、これまで人が電話やメールで行なっていた問い合わせ対応の自動化が可能になり、対応時間の短縮とコスト削減につながります。
また、チャットボットは顧客対応だけでなく組織内での活用においても有用です。
例えば、Slackと連携したAIチャットボットを導入すれば、業務に関する質疑応答をSlack上でスムーズに行なえるようになります。
これにより、情報共有や問題解決がスピーディになり、生産性の向上にもつながるでしょう。
ほかにも、YouTube字幕の要約チャットボットや、オンラインスクールのランディングページに学習者向けのチャットボットを組み込むなど、活用シーンはさまざまです。
Webページの要約アプリ
要約アプリとして活用すれば、コンテンツ内の長文を短時間で把握できるようになるため、業務効率が大幅に向上します。
特に、膨大な資料や学術論文を扱う研究者や専門家にとっては、時間節約と情報整理の面で非常に有用です。
さらに、複数のAIモデルを統合し選択可能なDifyの特徴を活かし、GPT-4やClaude 3など異なるモデルの要約結果を比較可能です。
これにより、ユーザーは最も精度の高い要約を選択できるため、より信頼性の高い情報が得られます。
記事作成
Difyでは、高品質な言語モデルを使用してテキストを生成できるため、専門的かつ詳細なコンテンツを効率的に作成できます。
検索エンジンでの検索結果を上位に表示させるために、SEOを意識した文章を生成することも可能です。
また、定型的な記事を大量に作成する際にも便利です。コンテンツ制作の時間と労力を大幅に削減しつつ、一貫性のある高品質な情報を定期的に発信できるようになります。
音声アプリ
Difyはテキスト入力だけでなく音声入力にも対応しており、ユーザーの音声だけで情報を入力可能な音声アプリを作成できます。
さらに、AIによる文章の修正・校正機能を組み合わせることにより、高品質な議事録作成アプリとして活用することも可能です。
会議中の発言をリアルタイムで音声入力できることはもとより、AIが自動的に文章を整理し、適切な形式に整えてくれるため、会議の効率化と情報の正確な記録につながります。
ほかにも、音声認識と自然言語処理を組み合わせた多言語対応の翻訳アプリなど、さまざまなアプリケーションの開発が可能です。
Webスクレイピングシステム
Webスクレイピングシステムとは、Webサイトから特定の情報を自動的に収集・抽出するシステムのことです。
Webスクレイピングシステムを活用すれば、市場調査やトレンド分析に必要なデータを効率的に収集できるため、意思決定プロセスが大幅に迅速化されます。
例えば、競合他社の価格情報や新製品の情報、消費者の口コミなどを自動的に収集・分析できるため、企業は迅速な戦略立案と意思決定が行なえるようになります。
AIエージェント
AIエージェントは、チャットボットよりも多様な分野において応用可能で、複雑なタスクも自律的に実行できる点が特徴です。
カスタマーサポートやFAQ対応など用途が限定的なチャットボットに対し、AIエージェントの活用分野はビジネスプロセスの自動化、大量のデータ分析、高度な意思決定支援など広範にわたります。
AIエージェントの活用により、企業は人的リソースを戦略的なタスクへと集中させることができ、生産性の大幅な向上につながるでしょう。
まとめ
Difyは、直感的な操作でノーコード・ローコードのAIアプリケーション開発を可能にする革新的なプラットフォームです。
オープンソースソフトウェアとして提供されており、一定の条件下で商用利用も許可されています。無料プランから、機能を拡張できる有料プランまで料金プランの選択肢も豊富です。
Difyを活用すれば、チャットボットやAIエージェントなどさまざまなシーンで役に立つアプリケーションを簡単に作成可能で、業務の効率化や顧客満足度の向上などが期待できます。
AIによるデータ分析を強みとするジールでは、さまざまなAIモデルに対応した多様なサービスをご提供しています。
RAG構築はもちろん、複数のクラウドプラットフォームにまたがるRAGの一元管理・運用もご提案可能です。
コンテンツマーケティングの効果を最大限に引き出すことを目的に開発されたAIシステムがSTORYAIです。AIによる高精度な分析と改善案の提示により、高品質なコンテンツ作成をサポートします。
利用のご検討や導入に関するご質問など、お気軽にお問い合わせください。