2024 年 5 月 22 日(水)にジール主催の「データ活用人材の育成を進めるうえで社内の理解を得る環境の作り方 社内の理解を得るために重要なポイントとは?」が開催されました。このセミナーでは、データ活用人材育成を進めるうえで、社内の理解を得ていくためのポイントとその後の学習の進め方について解説がありました。今回も突撃隊長ウエムラが受講しその内容をレポートします。
目次
社内理解が強く求められる「データ活用人材育成」
データ活用人材の育成を進めるにあたり、「社内にデータ活用の文化がない」「上司や同僚からの理解を得られない」など、最初の一歩をどのように踏み出せば良いか、悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。 これからデータ活用をはじめていく企業が効率的に人材を育てていくためには、まずデータ活用の必要性やメリットを理解してもらったうえで、体系的にデータ活用の考え方と方法を学習していくことが重要です。
本セミナーでは、第一部では「データ活用人材育成を進めるうえで社内の理解を得るには?」と題し、DXの土壌形成を推進し社内の理解を得る方法についてご紹介します。 そして第二部では、「データ活用人材をどのように育成していくか?」と題し、データ活用を社内に広めていくためのステップと育成方法、パターンやポイントについてジールでのお客様事例を交えてご紹介します。
講師紹介
セクション1講演者
ビジネスディベロップメント部 コンサルタント
2022年ジールに入社し、Domoのプリセール、Snowflake ハンズオン講師を担当。 データドリブン文化の醸成を促すワークショップの講師も担当しています。
セクション2講演者
戸田 仁
データドリブンサービスユニット SDD支援室 シニアコンサルタント
2014年にジールに入社し、 主に Power BI の導入/技術支援を担当しました。 また Power BI 集合研修の立ち上げに参画し、 2020年からは ZEAL DX-Learning Room の 制作/運営を担当しています。
DXを進めるための基礎体力となるデータ活用
本編に入る前に、戸田さんよりデータの利活用に関する理解、また一般社団法人CDO Club Japanの資料調査をもとにした現状の報告の説明がありました。
データ活用人材育成の現状と背景
かつては「KKD」(経験・勘・度胸)に依存していた意思決定が主流でしたが、現在では大量のデータを蓄積し、分析する技術が進化したことで、データに基づく意思決定が行われる時代となっています。DX(デジタルトランスフォーメーション)は現在非常に一般的な概念となっています。DXは主に二つの側面に分けられます。
一つは「攻めのDX」で、商品やサービスに新たな価値を加えたり、ビジネスモデルを変革することを指します。
もう一つは「守りのDX」で、意思決定の迅速化や業務の効率化を図ることを意味します。どちらの側面もデータに支えられており、データ活用の重要性が増しています。
下の図は、CDO Club Japan による「DXのボトルネック要素」の2023年の調査結果です。
DXのボトルネック要素として、「変革を推進するデジタル人材の不足」、「従業員の理解・リテラシー不足」という回答が、人材に関する課題が最も課題として認識されている割合が高いことを表しています。
出典:一般社団法人CDO Club Japan.「2023年実施 日本国内におけるデジタル人材調査 DXにおけるデジタルリーダー人材の不足とDXボトルネックの実態調査」.2024年,P.31
これは深刻さの極みだと思います。DXが進まない現状を分かっていながら、それを解決する方法が見えず、データは日々蓄積され続けるだけで、大事な情報が有効活用される日はないのかもしれません。何ともったいないことでしょうか。
しかし、決して悲観しないでください。裏を返せば、「変革を推進するデジタル人材の不足」、「従業員の理解・リテラシー不足」の改善を計れば状況は大きく一変するので、あとは推進あるのみだとわたくしは思います。こんなに伸びしろが十分にあるのですから、良くならないわけがありません。
社内のデータ活用を導入、推進したい方のお悩み
こちらは実際にビジネスの現場で耳にする課題です。
ビジネス現場でのデータ活用に関する課題として、以下があげられます。
データ活用のメリットを社内で説明するのが難しく、データ活用ツールの導入やその価値を理解してもらうのが困難である。
社内でデータ活用のニーズをヒアリングしても意見が出てこない。
報告書の作成に多くの時間がかかっているけれども、その非効率さに気づいていない方がおられます。また、データを平面的に可視化するだけで満足し、深掘りして業務改善に繋げる意識が不足している。
その昔、わたくしが保険会社でデータを扱っていた仕事に従事していた頃の話です。
全国の支店のデータを様々な切り口で出してほしいという依頼がありました。DWHから吐き出したcsvデータをAccessに取り込み、色々なクエリを組んでExcelにダウンロードしていました。
AccessはBIツールと同じように、テーブルとテーブルをキーで繋ぎ、条件を書けばどんなデータも作成できてしまうので、依頼されるままにたくさんのデータを提出していたのですが…
依頼の中には、次々に条件が追加されることもあったので、条件を入れ子にしたりと複雑になっていきました。修正をする自分自身でさえも、「あれ?ここなんでこう書いたんだっけ?」と迷子になっていましたので、他の方にそのクエリを渡したら、理解できない怪奇な書き方になっていたと思います。
もうこの時点で完全に属人化してしまっていますよね。
その現場を去るときに、手順書を渡して引き継ぎもしましたが、後任の方が理解不能に陥っていた様子を見て反省した記憶があります。
もしあの時、BIツールに出会っていたら、誰でも簡単にデータを扱え、共有できていたのだろうなと思うことがあります。ですが一方で、新しいツールを受け入れてもらえるかどうかも難しい点はありますよね。
「Excelこそ全て!」と、Accessさえもアレルギーを起こしていた方が社内に結構いらっしゃいましたので、BIツ―ルを導入したと言い出せば、多分暴動が起きていましたね(笑)
そんな経験をしたからこそ、みなさんにお伝えしたいです。データ活用の必要性を認識し、そのメリットを実感することが重要になります。この理解が得られると、データ活用の価値を見出せるようになり、社内での導入と広がりが一気に加速するのではないかと心の底から思います。
データドリブンワークショップ
データドリブンワークショップはジールが提供するサービスで、企業のデータ活用成熟度に応じた4つのフェーズ(導入期、成長期、成熟期、衰退期)に対応しています。
データドリブンワークショップは、ジールのサービスです。
下の図をご覧ください。データ活用の導入における企業の成熟度別の弊社ソリューションを横軸にとり、データ活用に対する熱量を縦軸にとった図です。
出典:データ活用人材の育成を進めるうえで 社内の理解を得る環境の作り方 社内の理解を得るために重要なポイントとは?(2024/5/22セミナー資料)
このワークショップは主に導入期に焦点を当て、データ活用の重要性を理解し、基盤の構築や活用の基本を学ぶことが目的です。
ワークショップは体験型で、実際のデータを使いながら、ツールを用いた分析と非活用時の分析の違いを体験します。
データ活用ツールの導入前や導入後の活用が進まない企業向けに提供され、対面で3時間程度行われます。
目的は、社内でデータ活用の必要性を理解する人を増やし、データの価値を高めることです。興味があればお問い合わせください。
このデータドリブンワークショップ、わたくしも実際に参加しました。データを扱う会社柄、データは身近な存在ではありますが、その当たり前に使っているデータを見つめ直すと、無限に広がる活用方法、価値の尊さにはっとしました。
なお、当時受講したわたくしの感想メモには、
「データ活用において重要なポイントであるデータのPDCAサイクルは、身近な例題からの考察であり、面白い上に深く学べてズドーンと心に響きました。」
と書いてありました。
データの勉強は難しいのでは?と身構えないでください。みなさんの身近な例をたくさん用いた内容ですので、案外スルリと頭に入ってくると思います。
以上が、第一部のセミナーレポートになります。
続いて、第二部では、ジール戸田さんより、データ活用を社内に広めていくためのステップと育成方法のパターンやポイントについて事例を交えながらの解説がありました。
このセクションでポイントとなってくるのは、人材育成を広めるために要となるキーマンの選定です。
キーマンになり得る人材
データ活用を社内展開する際に、よくポイントとなるのがこの「キーマンの存在」です。どういう方が適任なのか、非常に気になるところです。
セミナーの中で、戸田さんが解説されていたのは以下の内容でした。
キーマンは、自分の業務に課題感を持っている方、改善の余地があるのではと考えられる方、データ活用自体に興味を持っている方が相応しいと思います。そしてもう 1 つ、これが非常に重要ですが、周囲の方としっかりコミュニケーションを取って連携ができる方が適任です。
出典:データ活用人材の育成を進めるうえで 社内の理解を得る環境の作り方 社内の理解を得るために重要なポイントとは?(2024/5/22セミナー資料)
キーマンについて、実は多くの方がその通りだと仰っています。
以前、voicyのインタビューを記事化したことがあります。
▼結論、データを見ると意思決定が早まります! 一番好きなBIツールは、Qlik Sense
これは食品会社のシステム部に所属しているたけさんの話で、会社としては既にBIツールを導入していたそうですが、社員自身が自由に使えるBIツールへの転向を検討し、社内に広めたお話をされています。
その中で、「BIツールを社内に浸透させる3つの極意」という質問がありますが、以下の3つが重要なポイントだと仰っていました。
2.スモールスタートから成功事例を作って横展開する
3.各部門の中で、やる気やデータの勘・センスがある人とつながる
また、ユーザーコミュニティの出会いによって人生も豊かになったというお話。
▼データの可視化で “人” や “組織” のInnovation!
BIツールとRPA業務の担当をされている、ひろぎんITソリューションズ株式会社の品川さんの回では、Motionboardを展開するキーマンとなって活動する中、あるユーザーコミュニティに出会いました。
このユーザーコミュニティとは、Motionboardを扱うユーザー同士が、情報共有や勉強会などにより助け合う場を指します。
品川さんはユーザーコミュニティの出会いによって、ひきこもりがちだった心をずいぶん救ってもらったとも仰っていました。異業種で異なる会社の人々が、データ活用の知識を深めるために出会い、育まれた固い絆を通して互いに成長を目指す姿は、とても輝いています。
キーマンの方がどんな思いで社内のデータ活用普及に尽力していったのか、またキーマンを軸としたさまざまな人間模様、ひとつのツールが織りなすドラマはどれも興味深いです。ぜひ、voicyの記事もご覧いただければと思います。
またキーマンから広がるコミュニティには、面白そうな企画もたくさんあります。
この中にTableauラジオというものがありますが、技術向上を目指しTableauを活用したデータの取り組みを発表し配信しています。アーカイブもありますので、学習中の方にはとても素晴らしい教材だと感じました。
データ活用人材のトレーニングの種類
次にキーマンをはじめとするデータ活用人材を育成する手法についてです。この手法には、集合研修やE-Learning、それらを組み合わせたハイブリッド型など、企業の文化や特性に合わせた様々な手法があります。
ここでは、各企業が自社の特性に合わせて実施し、人財の育成に成功した事例をご紹介します。
ー集合研修型ー【事例1】日揮ホールディングス様の事例
日揮ホールディングス様は、ITグランドプランという「デジタル技術を積極的に活用していこう」とグループ目標を掲げている企業です。
日揮ホールディングス様は、データ可視化のニーズやデータ活用の下地が文化として確立されており、加えてIT グランドプランの取り組みを掲げられていたため、そこにマッチした研修プランをご提案したことにより、集合研修が成功した事例です。
<事例>日揮ホールディングス様の事例
Power BIによるデータ活用・分析のトレーニングを通して会社全体でデータに基づく意思決定の裾野を広げていく
ーe-Learning型ー【事例2】ヤマハ株式会社様の事例
ヤマハ株式会社様は、データを活用した意思決定を推進したいという希望があり、現場でヤマハの社員皆さんがデータを使えるようにすることを目標にされています。
全社員に効率よく学習を広めたいという考えからe-Learningを3か月単位で定期的に実施して成功した事例です。
<事例>ヤマハ株式会社様
DX人材育成に向け「DX-Learning Room」を活用、データ活用による現場の意思決定や行動変革の促進へ 応募者は想定人数の3倍にも及び、学びの定着へ確かな手応え
ーe-Learning + 技術支援ー【事例3】株式会社ダイセル様の事例
株式会社ダイセル様は、データ活用人材のスキルの底上げがミッションになっていますが、スキルレベルの違う人材が多い場合の育成課題に対して、e-Learningと専門家による技術支援の双方をご提案し成功した事例です。
<事例>株式会社ダイセル様
ジールの「DX-Learning Room+データ活用支援」でDXを支えるデータドリブン文化を醸成 デジタル化による更なる業務効率化に向けてデータ活用を実践的に業務に生かす
データ活用人材育成 Eラーニングサービス 「ZEAL DX-Learning Room」
業務部門のデータドリブン人材化
DX-Learning Roomは、現場のデータ利用者のスキル向上を目的としたサービスです。主なターゲットは、データ活用の「考え方」と「方法」に関するスキルが不足している現場のデータ利用者です。具体的な課題には、ツールありきの分析でビジネスに合ったアウトプットが得られないことや、Excel集計に時間を取られ本質的なデータ分析が進まないことが挙げられます。
●データ活用の「考え方」
∟データ分析の必要性
∟業務で活用するために必要な要素
●データ活用の「方法」
∟データ利用のテクニカルスキル
∟ツール利用スキル
DX-Learning Roomは、一般的なe-Learningの課題(例えば、動画視聴のみで身に付かない)を克服し、ハンズオン形式で実践的な学習を提供します。質問ができる掲示板サービスと、演習問題での理解度チェックも用意されています。
DX-Learning Room の Power BI 版、Tableau版 コンテンツ紹介
DX-Learning Room(Power BI版)、ZEAL DX-Learning Room(Tableau版)のコンテンツのご紹介です。
▼ZEAL DX-Learning Room for Tableau
データ活用の「考え方」と「方法」にコースが分かれており、「Tableauの考え方」ではデータディスカバリーツールであるTableauの特性を学習し、ベースコンテンツ、Tableau活用術、TIPS集、演習コンテンツでTableauの技術面を学習します。
実際、わたくしはどちらも体験しました。e-Learningは自分が納得できるまで繰り返し学習できるため、知識の定着をより確実なものにできます。
また自分の受講状況や演習問題の進捗が可視化されており、計画的な学習計画が立てやすいです。さらに、学習中に不明点が出てしまったら、すぐさま問い合わせし、スタッフが丁寧に対応してくれます。
こちらはDX-Learning Roomの体験レポートです。
▼使ってみましたシリーズ 第9弾 【DX-Leaning Room】学びの先にある「すべての社員をデータドリブン人材へ!」
DX-Learning Roomにご興味ある方は、ぜひお気軽にご連絡いただければと思います。
データ活用人材育成にお悩みでしたらご相談ください
本日の講演では、データ利活用を社内に展開するためには、スモールスタートではじめて、徐々に拡大させていくステップが重要だという説明がありました。
また人材育成方法に関しては、育成対象に合わせた教育方法を選ぶということが大切になり、データ活用人材の教育内容については、考え方と方法を組み合わせて学習する点を学びました。
最後に、自社にあった選択肢を選ぶためのお役に立てるよう、ジールのその他の教育サービスをご紹介いたします。
ジールでは、データ活用人材教育のための教育サービスを、入門フェース、実践フェーズ、データドリブンフェーズの3つに分けてご提供しております。
出典:データ活用人材の育成を進めるうえで 社内の理解を得る環境の作り方 社内の理解を得るために重要なポイントとは?(2024/5/22セミナー資料)
今回は入門フェーズとして データドリブンワークショップをご紹介いたしました。
データドリブンワークショップ
次の実践フェーズでは、実業務でのデータ活用できる人材を育てていくために、DX-Learning Roomとハンズオントレーニングをご用意しております。
▼Microsoft Power BI ハンズオントレーニング
そして最後のデータドリブンフェーズにおいては、データドリブンを展開するためのワークショップ、あるいは自社の業務課題をテーマとした人材育成プログラム、技術支援、内製化支援等をご用意しております。
※内製化支援や活用支援などの個別カスタマイズ支援をご希望の場合は、ぜひ下記よりお気軽にお問合せください。
セミナーの感想
セミナーを受講して感じたことは、今回受講された方が非常に多かったため、みなさんにとって関心が深い内容だったのではないかということです。
事例でもありましたが、データ活用の必要性を社内で広く理解してもらうには短期間ではいきません。同じように、研修を行ったからといって必ずしも理解につながるとも言い切れません。
そしてデータの利活用を常に意識し、データを使い続けることが理解の定着になりますが、それはとてつもなく長い道のりの様に感じるかもしれません。
しかし、決して身構えないでください。みなさんが思っているほど、難しいものではないと思います。企業に合った研修方法を取り入れることが重要であり、データの本質を理解すれば、データと友達にもなれますから。
いかがでしたでしょうか、何だか取り組めそうな気がしませんか。
気になる方は、ぜひご覧になってください。
きっとみなさんのお力になれると思います。
こちらは過去に、私が実際にZEAL DX-Learning Roomを体験した記事です。
DX-Leaning Roomの操作感などを感じていただけると思います。
▼使ってみましたシリーズ 第9弾 【DX-Leaning Room】学びの先にある「すべての社員をデータドリブン人材へ!」
参考記事
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