はじめに
この数年、データ分析・データ活用などのキーワードを聞かない日はありません。経済産業省が2018年に発表したDXレポートにもあるようにインフラ整備やデジタル化の波に取り残されないようDX(デジタルトランスフォーメーション)、いわばデジタル技術やデータの活用が求められています。企業において、まずデータを活用するということでは、BI(ビジネスインテリジェンス)システムが導入されているのか、導入されているならば活用されているのか、といった議論も多くされているのではないでしょうか。BIシステムといってもその概念は、幅が広くいろいろな考え方や機能があります。本記事では、それらをひとつひとつ解説してゆきます。
BIとは
BIとは、「Business Intelligence(ビジネスインテリジェンス)」の略で、企業に散在するあらゆるデータを、収集・蓄積・分析・報告し、経営上の意思決定に役立てる手法や技術のことです。
1989年に、ガートナーグループのアナリストであったハワード・ドレスナー(Howard Dresner)が、最初に提唱したといわれています。経営者や一般のビジネスパーソンが、情報分野の専門家に頼らずに自らが売上分析、利益分析、顧客動向分析などを行い、迅速に意思決定することの実用性を説き、そのコンセプトをBI(ビジネスインテリジェンス)と呼びました。「勘と経験に基づく意志決定から、データに基づく意志決定へ」というキャッチフレーズと共に情報活用・データ分析が普及してきました。一部のアナリストのためだけではなく、エンドユーザが自ら利用できる分析環境を実現したものがBI(ビジネス インテリジェンス)システムです。
BIシステムの用途
では、BIシステムは、どのようなケースで利用されるのでしょうか。
具体的な例を挙げていきます。
・業績管理
・顧客分析
・商品分析
・売上分析(利益分析)
・予実分析
・購買分析(併売分析)
・在庫分析
・エリア分析
・購入サイクル分析
etc…
上記の図のように、経営者としては業績管理、営業部門では顧客分析、商品分析、売上分析、損益分析、生産・在庫管理では在庫分析などあらゆる部門、もしくは業種で利用されています。
基幹システムとBIシステムとの違い
社内にはいろいろなシステムがあります。売上を管理する販売管理システム、給与を計算する給与システムなどそれぞれのシステムごとにデータベースがあり、データが管理されています。データがあるならば、簡単にデータ分析ができるのではないかと思われるかもしれませんが、システムごとに独自のルールでデータが保存されていると、欲しいデータを取り出すことは容易ではありません。
例えば、下記の図のように売上分析をしようとした場合、会計システムから売上高とその明細を抽出します。売上高の内訳を知るために、その明細にある商品と在庫システムにある商品を結び付け、内訳がわかるようにしなければなりません。また、顧客ごとに何を買っているかを知るためには、売上高の明細にある顧客と販売システムにある顧客を結び付け、その内訳がわかるようにしなければ売上分析をすることができません。
また、同じ意味のデータがシステムごとに違う形で保存されていたり、各部門でデータが管理されていると、データ作成・収集に時間がとられてしまい、分析や報告文書の作成は大変時間がかかってしまいます。
そのため、情報を活用するためには、社内のシステムからデータを集約し利用しやすい形にしておかなければなりません。
データを集約し、データを調え、管理していく必要があります。そうすることによって、はじめて目的別の分析やレポートが作成できるようになります。
データウェアハウスとビッグデータのアーキテクチャ
BI(ビジネスインテリジェンス)に関しては、あらゆる概念が存在しています。実はBI(ビジネスインテリジェンス)に関しての概念は必ずしも明確に定まっているわけではなく、データを可視化するだけでもBI(ビジネスインテリジェンス)と呼ぶ方もいれば、予測までできてこそBIであるという人もいて、どちらが絶対正しいということはありません。
そこで、本記事では、データマネジメントに関する知識を体系立ててまとめたDMBOK(Data Management Body Of Knowledge)、通称ディンボックを参考に解説してゆきます。
データを活用していくことについては、1960年代よりいろいろな国で試行錯誤されてきました。
Data Management Association International(DAMA-I)という世界各地に8,000名を越える会員を擁する全世界のデータ専門家のための国際的な非営利団体があります。ここでは、データマネジメントの専門家によって書かれたDMBOK(Data Management Body Of Knowledge)『データマネジメント知識体系』という本が出版され、データマネジメントに関する知識を体系立ててまとめられています。データに関する世界標準の知識がすべて網羅されています。
この中でデータウェアハウジングとビジネスインテリジェンスについて全体像とそれぞれの概念について解説されています。
図:データウェアハウスとビッグデータのアーキテクチャ 出典:データマネジメント知識体系 第二版
上記の図では大きくソース、データウェアハウス、ビジネスインテリジェンスの3列に分かれています。
ソース
社内にある経理システム、顧客管理システムなどの業務システムやその他外部のデータなども含めて表現されています。
データウェアハウス
データソースからデータを取り込んで利用しやすいように加工し蓄積する場所です。
この中には、データを収集・加工するETLやデータを保存するセントラルハウス、データマート、キューブなどが含まれています。
ETLについてはこちらの記事を参照ください。またデータウェアハウスについては、こちらの記事を参照ください。
BI(ビジネスインテリジェンス)
利用者側からみた目的別のレポート、分析を担う部分です。
詳細については、こちらの記事を参照ください。
その他、ビッグデータを活用するためのデータレイク、データサイエンス分野である予測分析や機械学習なども上記のおとり位置付けられています。これらについては別途ご紹介していきます。
まとめ
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するに当たり、データ活用は重要な鍵としてBIの重要性は日々増しています。BIの全体像を知るには、まずデータの流れ、データマネジメントの部分から理解することが肝要です。
データウェアハウスとBIをセットで用意することによってデータが資産として価値を生みだされます。
本記事では、BIシステムの全体像を紹介しました。データを収集し統合するETL、データを保存するDWH、データマートなど、各項目については、それぞれの記事で紹介していきます。
また、データ活用を実現するために多くのBIツールが存在していますが、どの製品も優れた特長があり、利用方法によってその効果がかわってくるので、それぞれの製品を見極めて導入することが必要です。
BIツールの変遷については、BIシステムの歴史とトレンドでご紹介していきます。