DX化が進むなかで重要度が高まっているデータガバナンス。本記事ではそんなデータガバナンスの意味やメリット、活用のポイントについて解説します。
またデータガバナンスの理解に欠かせない、データマネジメントについてもご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
適切な手順を一から押さえていきましょう。
目次
データガバナンスとは
まずはデータガバナンスの意味や定義から説明していきます。データガバナンスとは、企業・組織におけるデータ管理を統制することです。 具体的には、データの収集や蓄積、活用、設計、運用、保守を継続的に行うデータマネジメントにおいて、効果の最大化とリスクの最小化を実現するための取り組みを指します。 これを実現するために、データガバナンスでは経営やビジネスの視点から全社共通の方針や構造などを定め、PDCAを回しながら最適化を図ります。
データガバナンスが注目される背景
デジタル化が進む現代では、データ管理やセキュリティ保護に対する重要性が年々高まっています。 世界では、アメリカが2019年に「連邦データ戦略」、中国が2021年に「データセキュリティ法」、イギリスが2022年に「欧州データ戦略」などの取り組みを行っています。 日本では、2021年に設立されたデジタル庁」によって、「包括的データ戦略」が閣議決定されました。 「包括的データ戦略」において、政府はデータを「智恵・価値・競争力の源泉であるとともに、課題先進国である日本の社会課題を解決する切り札」と表現。 データを適切な形で生かすための戦略として、理念・ビジョン・行動指標を定めました。
データガバナンスとデータマネジメントの関係
データマネジメントを最適化するために、データガバナンスは欠かせません。ここでは両者の関係について詳しく解説します。
データガバナンスの位置づけ
【データガバナンス】:データ管理・運用体制を構築するためのルール・ガイドライン
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【データマネジメント】:データガバナンスのルール・ガイドラインに従ってデータ管理・運用
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より最適化・効率化されたデータ管理・運用体制によって利益の最大化を図る
データマネジメントを効率よく実施するためのデータ管理や、運用体制を構築するためのルールをデータガバナンスと言います。 これに対し、データマネジメントはデータをルールに従って運用するための行動そのものです。 また、データガバナンスにはデータマネジメントをルール通りに実施するための監視やサポートの役割もあります。 なお、DMBOK(データマネジメントに関する知識体系書)においては、データマネジメント活動の中核としてデータガバナンスを位置づけています。
データガバナンスの機能
データマネジメントを行うにあたり、ポリシーとなるものがデータガバナンスです。 データガバナンスは、企業・組織間のデータを管理・維持するためのルールにもなります。 これらの機能を持つデータガバナンスは、組織内のビッグデータを混乱なく、有効的に活用するためには不可欠な概念です。
【データガバナンスのとらえ方】
立法:データガバナンスのルール策定
行政:ルールの運用
司法:ルールが守られているか・結果の評価
企業でデータガバナンスを導入する際は、上記で説明した「立法・行政・司法」の3つの機能を組み込んだ、データガバナンスプログラムを策定する必要があります。 この機能が揃っていることで、データマネジメントが有効に機能します。
データガバナンスにのっとり、データマネジメントを実行
ビジネスの成長を目的としたデータ管理・運用等がデータマネジメントです。 データの収集や登録、更新、蓄積、活用、設計、運用、保守等を継続的に行い、データの利活用を最大限行える状態を維持・進化させていくための具体的な実行活動を指します。 データマネジメントにより、企業は売り上げの向上やコスト・リスクの削減等を実現できるでしょう。ただし、データマネジメントはデータガバナンスの構造の上でしか成り立ちません。 最適なデータマネジメントのためには、データガバナンスの構造が整っている必要があります。
以下がデータマネジメントの基本的な概念です。
・データの利活用
・品質を高めたデータの蓄積
・データ利活用の基盤と取り組み
・データ利活用の基盤を支える体制・ルール(データガバナンス)
データマネジメントとは文字通り、データを管理することですが、「管理」と言ってもその内容はさまざまです。 主要な業務としてはデータの登録や更新、活用などが挙げられます。 加えて、それらを実行するためのデータの利活用やデータの蓄積、データの利活用の基盤と取り組み、データガバナンスなども業務に含まれます。
データガバナンスのメリットとは
データガバナンスを活用するメリットは3つあります。ひとつずつ見ていきましょう。
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データマネジメント活動が向上する
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データに信頼性が生まれる
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データ管理のリスクを低減できる
データマネジメント活動が向上する
一貫性のある方向性、ポリシーにもとづいたフレームワークを作ることで、データマネジメントだけでは見えなかった運用方法の見直しを行えるというメリットがあります。 また、データガバナンスによって、データマネジメントの監視や評価をできるため、結果的に効率化につながるでしょう。
データに信頼性が生まれる
データガバナンスで定めたルールに則って管理することで、信頼できるデータを蓄積できます。 データ管理が粗雑だと、そのデータの信頼性は低くなります。 せっかくデータ収集できる仕組みを導入しても、データの信頼性がなければ誰も活用しなくなってしまうでしょう。 データガバナンスを取り入れることで、データドリブン経営に欠かせない正確で一貫性のあるデータを蓄積することが可能です。
データ管理のリスクを低減できる
データを管理する際は、セキュリティ、プライバシー保護の観点から統制をとることが大切です。 データガバナンスにおいてセキュリティポリシーを定めれば、軸に沿ったデータの取り扱いができるので、万が一、コンプライアンス違反が起こってしまった際にも迅速に対応できるようになります。
データガバナンスの手順
データガバナンスの手順は以下の5ステップです。それぞれを正しく行えば、データを有効活用できるでしょう。
1.データマネジメントに関する目的・方向性を決める
2.具体的なルールを取り決める
3.ルールを適用するための体制を整える
4.データガバナンスに沿ってデータを管理・運用する
5.データガバナンスが守られているかをチェックする
まずは、データマネジメントの「目的・最終的な目標」と「方向性」の2つを定めます。 次に、1で定めた方向性に則ったルールを決めていきましょう。データ取り扱いにおけるさまざまなシーンでの具体的なルールを取り決めておくと、データガバナンスがスムーズに進みます。 ルールが決まったら、それぞれの役割を果たすための人員やシステムを整備します。 漏れや抜けのないように配置し、ルールを適用できる体制を整えましょう。体制が整ったら、実際にルールを運用します。 正しくルールが適用されているか確認しながら進めることが大切です。 最後に、日々の活動がルールに則って行われているかをチェックし、ルールに問題はないか、スムーズに行えるか等を確認します。 その結果をブラッシュアップすることで、利益向上に繋がります。
データガバナンスを活用するポイント
データガバナンスを有効的に進めるためには、以下の2つのポイントを押さえましょう。
ビジネスの最終目的を明確にすること
データガバナンスはあくまでビジネスの目的を果たすためのプロセスの一つです。 データ活用において、データガバナンスそのものが「目的」とならないように注意しましょう。 最終的に達成したい目標を第一に考え、その手段としてデータマネジメント、そしてデータガバナンスを活用することが大切です。
データ利活用に関して共通理解がとれていること
データガバナンスは組織全体で共通理解を図ることで、すべてのデータをスムーズに利活用できるという特徴があります。 組織内の人間が定められたルールをマスターし、それに従ってデータを取り扱うことで初めて、データガバナンスの効果は発揮されるといえます。 社内全体にデータガバナンスに関する説明を行い、社員一人ひとりが理解できる環境を整えましょう。
データガバナンスを成功へ導くために必要な組織体制
本章ではここまでの内容を踏まえたうえで、データガバナンスを成功へ導くために必要な組織体制のポイントを紹介します。
データを一元管理する責任者を設定
データを一元管理する責任者が不在であれば、データを適切に管理・監督することは難しいでしょう。 また、企業内でDX化を推進するためには経営陣の参画が必要不可欠ですが、責任者が不在では、経営面からデータガバナンスに関する意見を通すことができません。 そのため、COD(最高デジタル責任者)といった、データを一元管理する責任者を組織の頂点に設置することが重要といえます。
具体的ルールを作成して浸透させる
データガバナンスを成功に導くためには、具体的ルールを作成して組織内に浸透させなければなりません。 ルールを作成する際は、「自社のニーズや実態に合っているか?」といった視点が必要なのはもちろんのこと、個人情報保護法をはじめとしたデータの取り扱いに関する各種法令の基準も満たす必要があります。 また、作成したルールが正しく適用されているか、定期的にチェックできる環境を整備しておくことも重要です。
情報漏洩などリスク管理体制の強化
データ使用者が自由にデータを取り扱えるとなると、コンプライアンス違反に繋がるリスクが高まり、企業のブランド価値が失墜しかねません。 他にも、サイバー攻撃により機密情報が漏えいするリスクや、海外展開している場合には気付かないうちに法令に抵触するリスクなど、さまざまなリスクに備える必要があります。 想定されるリスクを未然に防ぐためにも、データガバナンスの運用上、リスク管理体制を強化しておく必要性は高いといえるでしょう。
【ZEAL事例】データガバナンス活用支援実績
本章では参考として、データガバナンスの導入・活用した事例をご紹介します。
パーソルキャリア株式会社様の導入事例
~ジールの支援のもとPoCを実施、「Denodo」で仮想的にデータを統合しガバナンス強化とデータドリブン事業改善力の強化へ~
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ETLツールなどによる物理的なデータ移動をすることなく、短時間で透過的にデータ活用を行いたい
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→ 物理的なデータ移動を伴わずデータを仮想的に統合。セキュリティを確保しながら、さまざまなデータを駆使して施策の効果検証をスピードアップできた
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散在するシステムを仮想化によって汎用的に接続し、1カ所からすべてのデータを利用できるようにしたい
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→ データ仮想化により開発コストを大幅に削減できた
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細かい権限設定を行うことにより、必要な人以外にはデータを閲覧できないようにするなどのガバナンスを効かせたい
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→ 直感的なGUI操作によ り事業部門でも細かい権限設定などを行えることで、ガバナンス強化を果たした
株式会社大林組様の導入事例
~PoCから導入までジールが支援~
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もととなるデータを複製しないデータプラットフォームを構築したい
→ 物理的にデータを動かすことなく仮想的にデータを統合し、すべてのユーザによるリアルタイムなデータ活用の土台を構築、データドリブン経営の推進
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さまざまなデータソースを即座に統合できるデータプラットフォームを短い期間で構築したい
→ 既存システムへの影響を最小化する仮想化のメリットと、ジールの質の高い構築作業により、わずか3カ月間で環境構築
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すべてのユーザが利用するため、アクセス権限を厳格に設定・管理したい
→ データべースレベル、フォルダ/ビューレベル、行・列レベルでアクセス権限を設定できるため、セキュリティと利便性の両立
ZEALの提供するソリューション「Denode」について
「Denode」はデータ仮想化で、複雑なデータ統合・活用を素早く、容易に解決するデータ活用ソリューションです。 これまでの物理的なデータ統合の手法とは異なり、クラウドサービスも含めた企業に散在するさまざまなデータを、物理的なデータ移動を伴わず仮想的なデータレイヤーに統合する最新の手法です。 Denodeプラットフォームは、直感的なGUI操作によって短期間でのデータ統合・活用ができるため、データを加工する作業やコストの削減に繋がるのはもちろんのこと、「自社ビジネスにとって必要なデータor不要なデータ」を明確に定義し、その定義に則った運用管理が実現可能となります。
データガバナンスを活用して、信頼のあるデータを取得しよう
まとめ
今回のまとめです。
データマネジメントを有効的に進めるには、データガバナンスが不可欠です。
データガバナンスを活用することで、扱うデータの信頼性が高まったり、トラブル時に迅速に対応できるなどのメリットがあります。
信頼できるデータを活用して、データマネジメントに役立てたい方は、まずは本記事で紹介した5つの手順を参考にして、データガバナンスを取り入れてみてはいかがでしょうか。
ZEALではデータガバナンスの活用支援のためのソリューションとして、先にご紹介した「Denodo」をはじめ、様々な知見や案件例を有しております。 また、ZEALでは他にも企業におけるDX化実現を支援しています。 お客様の要望に合わせた最適な製品提供からコンサルティング等、さまざまなサービスをご用意しているので、データガバナンスやDX化の実現に課題を抱えている企業様はお気軽にお問い合わせください。