公開日:2024年10月17日

更新日:2024年10月15日

ビジネスにおいてデータ活用の重要性が高まるなか、クラウド上で利用するモダンデータスタック(MDS)へ移行する企業が増えています。モダンデータスタックは、従来のオンプレミス型データ基盤にあった多くの課題を解決し、事業の成長に大きく寄与するデータ基盤です。

この記事では、モダンデータスタックの特徴や注目される背景、導入メリットについて詳しく解説します。併せて、導入の流れや企業事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

モダンデータスタックとは?

モダンデータスタックとは、企業が大量のデータを効率的に収集・保存・処理・分析するためのクラウドベースのツールと技術を組み合わせたデータ基盤、およびこの考え方です。モダンデータスタックの特徴と、従来のデータ基盤との違いを解説します。

モダンデータスタックの特徴

モダンデータスタックの特徴は、以下の4つです。

  • クラウドサービスが基盤
  • 必要に応じて拡張が可能
  • さまざまな用途に柔軟に対応可能
  • 異なるシステムがスムーズに連携可能

モダンデータスタックはクラウドサービスを使うため、サーバーなどの機器を自社で管理する手間が省けます。また、データ量が増えても簡単に拡張が可能です。

さらに、さまざまな場所や機器から生まれるデータをリアルタイムで取り込めるほか、データを分析するための最新ツールとも容易につなげることが可能です。

近年実用化が急速に進んでいる人工知能(AI)や機械学習といった先端技術とも相性が良く、未来予測や自動的な判断支援などにも活用できます。

従来のデータ基盤との違い

従来のシステム(レガシーデータスタック)は、一般的に、システムの運用に必要なソフトウェア・ハードウェアを自社で保有・管理するオンプレミスで構築されます。固定的なインフラストラクチャに依存することが、クラウドを使用するモダンデータスタックとの大きな違いです。

モダンデータスタックは、クラウドプロバイダのリソースを利用します。そのため従来のシステムと違い、扱うデータ量が増加しても、新たにハードウェアを追加する必要はありません。

また、従来のシステムはおもに、CSVファイルや固定長ファイルのように形式が決まった構造化データしか扱えません。対してモダンデータスタックは、写真や音声、自由形式のテキストのような非構造化データも効率的に処理できます。

モダンデータスタックが注目される背景

モダンデータスタックが注目される背景には、データ量の急増とデジタル化の進展が挙げられます。

従来のデータ基盤では大量のデータに対応するのが困難なため、新たにクラウドベースで拡張性の高いアーキテクチャが必要でした。さらに、データのリアルタイム分析やAI活用など、近年ではより柔軟で高度なデータ処理の必要性も求められています。

消費者行動や業務の多様化・複雑化にともない、データを活用した経営の重要性は高まっています。ベンダーが保守・運用サービスを提供するモダンデータスタックは、非エンジニアがデータ分析できる点も注目されています。

現在ではデータ基盤の構築において、クラウドをベースとするモダンデータスタックが一般的です。

モダンデータスタックの構成要素

モダンデータスタックはSaaSを組み合わせて使用するシステムであり、データの流れに沿って4つの主要な構成要素に分けられます。それぞれの構成要素と機能を解説します。

1.データ収集・取り込み

データ収集・取り込みは、モダンデータスタックの入り口となる重要な工程です。次のようなさまざまなソースからデータを収集し、統合するためのツールやプラットフォームが使用されます。

  • 自社が所有する顧客データ・購買データ
  • SFAツールやMAツールなどのSaaSから得られるデータ
  • Webサイトやモバイルアプリから得られる行動データ

データの収集は、定期的に行なうバッチ方式とリアルタイムで収集するリアルタイム方式があり、データソースによって使い分けられます。

2.データストレージ

データストレージは、収集されたデータを安全かつ効率的に保管するシステムです。

保管先はクラウドベースのデータウェアハウス(DWH)やデータレイクが主流で、データ分析の基盤となります。クラウドベースのモダンデータスタックでは、大量のデータを柔軟に管理できる環境がベンダーから提供されます。

なお、データウェアハウスとデータレイクの違いは以下のとおりです。

  • データウェアハウス:目的に応じて構造化されたデータを保管
  • データレイク:非構造化データを含む多様なデータを保管

3.データ変換・加工

データ変換・加工は、データウェアハウスやデータレイクに保存されたデータを、分析に適した形式に変換する工程です。データのクレンジング(データの誤りや重複などを取り除く作業)や統合、構造化を行ない、分析しやすい状態に整えるもので、ELTとETLの2つの処理方法があります。

  • ELT(抽出、ロード、変換):専用ツールでデータを変換
  • ETL(抽出、変換、ロード):データベース内でデータを変換

モダンデータスタックは、未加工データをそのまま保存し、クラウド上で必要に応じてリアルタイムに分析できるELTが一般的です。

4.データ分析・可視化

データ分析・可視化は、加工されたデータから価値ある洞察を引き出す最終段階です。BIツール(ビジネスインテリジェンスツール)やデータ分析プラットフォームによりデータを視覚化し、ビジネス上の意思決定に役立つ情報を提供します。

モダンデータスタックのメリット

モダンデータスタックは、ビジネスにおいて大きなメリットがあることから普及しました。ここでは、おもなメリットを4つ紹介します。

スケーラビリティの向上

モダンデータスタックはクラウドベースのアーキテクチャのため、データ量やユーザー数の増減に応じて柔軟にリソースを拡張・縮小できます。

ビジネスの成長に合わせた迅速なシステムの適応が可能で、将来的な拡張性も確保できることがメリットです。

コスト効率の改善

従量課金制のクラウドサービスは、従来のデータ基盤に比べて初期投資を抑えつつ必要に応じてリソースを調整でき、効率的な運用が可能です。データの利用量を前もって予測して契約する必要がなく、無駄がありません。また、各SaaSツールは自社に合ったものを選べるため、コストのコントロールもしやすいでしょう。

加えて、システムの運用保守はベンダーが行なうため、人的コストの削減や総所有コスト(システム導入~廃棄までの総費用)の最適化につながります。

データの民主化

モダンデータスタックを構成するSaaSは、使いやすいUIを持つセルフサービス型プラットフォームです。コーディングやデータベースなどの専門知識を持つエンジニア以外でも、各部門のユーザーがデータにアクセスして分析できます。

データドリブンな文化が組織全体に浸透し、イノベーションや生産性の向上が期待できるでしょう。DXの加速にも有効です。

意思決定の迅速化

モダンデータスタックでは、リアルタイムのデータ処理機能や高度な分析ツールを使用できます。そのため、従来のデータ基盤よりも、最新のデータに基づいた迅速かつ的確な意思決定が可能です。

また、過去の分析に留まらず、AIと機械学習を活用することで、予測分析や自動化された意思決定支援も実現でき、ビジネスの俊敏性と競争力の向上につながります。

モダンデータスタックを導入する流れ

モダンデータスタックの導入は、以下の流れで進めます。各工程を確認しておきましょう。

現状分析とゴール設定

モダンデータスタックの導入で最初に必要になるのが、現在のデータ環境や課題を詳細に分析し、組織のニーズを明確にすることです。

例えば「意思決定を迅速化するために分析データを活用したい」「古いデータ基盤を統合したい」などのように、ニーズを明確にします。モダンデータスタックの導入で何を解決させたいかを明確にすることで、適切なツールを選べます。

また、短期的および長期的な目標を設定し、期待される成果を具体化しておくことも重要です。導入プロジェクトの方向性が明確になり、関係者全員が共通理解を持てます。

適切なツールの選定

組織のニーズや予算に合わせて、各構成要素に最適なツールやサービスを評価し、選択します。モダンデータスタックは、各プロセスでSaaSサービスを組み合わせて基盤を構築するため、互換性や将来的な拡張性を考慮し、総合的に判断することが重要です。

選定後は、ツールの組み合わせが効果的なデータスタックを形成しているかを検証します。

インフラストラクチャの準備

モダンデータスタックの導入には、クラウドプラットフォームの契約が必要です。

プラットフォームを選択する際は、利用できるサービスや費用対効果などを比較しましょう。また、セキュリティやコンプライアンスの要件を満たせるよう、適切な構成やリソースの設定を行ないます。

データパイプラインの構築

データパイプラインは、データの収集、保存、変換、分析の各プロセスを連携させ、シームレスなデータの流れを作るために必要なツールです。

自動化とエラー処理の仕組みを組み込み、安定した運用を目指すとともに、データの品質管理や監視の仕組みも同時に構築します。エンジニア以外もデータ分析を扱えるようにするだけでなく、リソースを浪費するデータのサイロ化やボトルネックを防ぐためにも重要です。

テストと最適化

データ基盤が整ったら、実際のデータを使用して、システム全体の性能や信頼性を検証します。問題点があれば特定して必要な調整や最適化を行ない、本番環境での安定稼働を確保しましょう。

モダンデータスタックの導入後は、継続的にパフォーマンスを確認します。運用を最適化するためには、継続的な改善のサイクルを確立させることが大切です。

モダンデータスタックの導入事例

ジールでは、さまざまな業種のモダンデータスタックの導入を手がけています。2社の導入事例をピックアップし、導入の決め手や導入後の効果などを紹介します。

事例:株式会社ユナイテッドアローズ

セレクトショップ業界の最大手である株式会社ユナイテッドアローズは、さらなる事業成長のためにデータ活用を進めていました。しかし、オフライン・オンラインの2系統のデータ基盤があったため運用に課題があり、新しいデータ基盤の構築が必要でした。

ユナイテッドアローズが要望していたのは、以下の3点です。

  • これまでオンプレミスで運営していたデータウェアハウスをクラウド化したい
  • 高額なオンプレミスのデータウェアハウスの管理コストを削減したい
  • さまざまなデータソースとの柔軟な連携を実現するため、多種多様な環境との接続を可能とするETL・ELTツールを導入したい

これらの要望を満たすために、新データウェアハウスとしてSnowflakeの採用を決定しました。>導入パートナーにジールを選択した理由として、Snowflakeについての高度な知見と数々の構築経験、併せて、データ基盤の総合支援サービスであるTROCCO®のサポートの充実を挙げています。

ジールでは、TROCCO®の導入支援や環境構築、運用開始後にユーザーがすぐに利用できるようマニュアルの作成までを伴走支援しています。

導入後はSnowflakeの活用により、効率的なデータ収集・蓄積・統合の実現に加え、外部へのデータ出力機能も向上、データの民主化に向けて大きく前進しました。

また、管理コストについては、データウェアハウスをクラウド化し、利用に応じた従量課金体系へ移行することで、高額な運用保守コストの削減と平準化を実現しています。ユーザーが自らTROCCO®を利用し、データの加工から外部システムへの出力を可能とする運用体制を獲得しています。

TROCCO®製品の詳細はこちら
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まとめ

モダンデータスタックの導入は、従来のデータ基盤に比べて、低コストで迅速なデータ活用を可能にします。企業の需要に合わせたシステム・ツールを選べ、将来的な拡張に対応しやすいこともメリットです。

ジールは、データプラットフォームの分析から提案、構築、導入後のフォローまでを一気通貫で支援いたします。モダンデータスタックの導入を検討している方やデータドリブン経営を成功させたい方は、お気軽にご相談ください。

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