公開日:2020年2月12日

更新日:2020年2月12日

11月29日に東京・渋谷のTECH Playで行われたイベントの内容をレポートします。

 

 

ワタミでは、マーチャンダイジング改革実現による収益体制強化の一つとして、ITプラットフォームの再構築とデータ分析システム導入による経営管理の合理化を実践している。11月29日に東京・渋谷のTECH Playで行われたイベントでは、その取り組みについて、ワタミの各担当者が登壇し、解説が行われた。イベントの概要を紹介する。

「6次産業モデル」に取り組むワタミ

本イベントを開催したのは、創業以来、25年以上ビジネスインテリジェンスの取り組みを支援してきたジール。イベントは同社・代表取締役社長の岡部貴弘氏の挨拶から始まった。
ワタミ株式会社は外食から始まり、宅食、農業など事業を拡大、農業・環境を手掛ける『6次産業モデル』に取り組み、イノベーションを繰り返している。
さらに、経営改革・フードロス削減の観点から『原料の製造から戦略を組み立てるマーチャンダイジング改革』を推進しており、ITプラットフォームの刷新から、データ分析システムを導入し、データドリブン経営にチャレンジしてきた事例については、DXを検討している企業にとって参考になるだろうと話した。

循環型6次産業モデルで事業展開

最初に登壇したのは、ワタミ株式会社の若林繁氏。若林氏は2年半前にワタミに入社。それまではSIerで業務コンサル,ERP構築やERP導入支援を行ってきたという。現在はワタミで経営基盤をバックアップする統合ERP基盤の全体最適化,フロントラインのDX化を推進している。「経営を変えるITイノベーション」をテーマに講演を行った。

 

▲ワタミ株式会社 経営企画本部 IT戦略部 本部長 若林繁氏

 

ワタミは外食事業、宅食事業、環境事業、農業などの4事業を展開。外食事業としては国内17ブランド501店舗、海外は10地域7ブランドで53店舗を設けている。また宅食事業では514営業所を設け、毎日23万食のお弁当を届けているという。

環境事業や農業にも注力しており、環境事業では風力や太陽光など再生可能エネルギーを使った、電力会社7社を運営。また農業はでは11箇所630ヘクタールを有し、その中でも262ヘクタールは有機圃場として運営している。

ワタミではSDGs達成向けた企業戦略として、外食や宅食などの事業活動における環境負荷低減、持続可能な循環型社会づくりに向けた環境改善事業、風力発電などによる再生可能エネルギーの発電にも取り組んでいる。それが再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデル「ワタミモデル」だ。

 

 

さらに同社では、グループブランドテーマ「環境とともに・社会とともに・人とともに」を実現するため、社会貢献にも積極的に取り組んでおり、3つの公益財団法人「School Aid Japan」「みんなの夢をかなえる会」「Save Earth Foundation」を支援。2021年3月には岩手県陸前高田市に「ワタミオーガニックランド」をオープンする予定となっている。

ワタミが取り組んでいるMD改革

続いて、ワタミが取り組んでいるMD改革 について説明された。同社が目指すMD改革とは、全体最適の発想の下、3次主体の企画からMD改革主体(1次、2次)での売り切り型へ、営業・販売を改革していくというもの。そしてそのMD改革の中心にあるのが、ITイノベーションだった。

というのもワタミは1件の居酒屋から始まり、事業を拡大してきた。そこでITシステム基盤はパッチワーク的につなぎ合わされて開発。SCM領域、財務会計領域を中心に非効率になっており、戦略に合わせた柔軟なシステム変更ができない状態に陥っていたからだ。

このような問題を解決し、ワタミが再成長するための基礎づくりとして、国内外24社をONE ERP化し、BI領域を基盤化に取り組むことにしたのだという。

 

 

まず行ったのは、SCM領域、財務会計領域の業務改革のスコープと方針を定めること、そしてサクセスシナリオを作成した。そのサクセスシナリオを実現するために採用したのが、インフォアの製品(図の中で赤く色づけられている部分)。統合ERPとBIの仕組みを同社では「COSMOS:global COrporate Strategy MOnitoring System」という名称で呼んでいる。

インフォアの製品をなぜ選定したのか。第一のポイントはグローバルスタンダードであることだ。インフォアは世界第3位のSaaS ERPベンダー。グローバルワイドなディレクションおよびクオリティアシュアランスが提供されること、ローンチ後のカスタマーサポートが手厚いこともポイントとなった。

 

 

同社の要望は世界中のインフォアの技術者の目にとまり、改善され、それをすべてのお客さまに提供する。そういうマルチテナントの良さもあった。さらに生産管理においては、生産現場や本部業務のフィット率が高かったことも評価したという。

第二のポイントはスピード。インフォアの製品を使ったことで、短期間でシステムの立ち上げができた。検討から契約までは4カ月。契約から15カ月で既にSCMの運用を開始し、現在導入中の財務会計は11カ月で運用開始の予定だという。確立された導入支援手法が優れており、スピード感はもちろん、フェーズごとに実行すべきタスクと役割分担がきちんと定義されている。この手法で、プロトタイプ開発をイテレーション改善し、製品に近づけていった。

プロジェクトがうまくいった要因

また、プロジェクトがうまく進行した要因として、最初に挙げられたポイントは「体制/環境づくり」 である。ワタミではあらかじめユーザー部門であり主人公を定め、執行役員などを体制に組み込み、ビジネスプロセスオーナーという形で各プロジェクトリーダーを選定し、権限を与え責任範囲を明確化した。

つまり、ユーザー部門であるMD本部、経理財務部、経営管理部主導の業務改革である。こうすることで迅速に意思決定ができ、方向性がぶれることはなかった。

また快適なプロジェクトルームを設けたことも成功の要因として挙げられた。マルチベンダーの大型プロジェクトで、適宜メンバーが揃って、同時に導入支援や複数のセッションが実施できたことも重要ポイントだった。

第二のポイントは全体最適を目指したこと。これは初動計画の中でも体制づくりの次に重要なポイントだったのだという。

例えば、従来の分析基盤は国内外食、海外外食、宅食で別々の分析エンジンを持っており、定量的、定性的なメンテナンスが施されず、化石化していた。正確な分析ができないため、Excelにエクスポートして加工するという属人作業が日常業務化していた。そこでBirstを導入し、エンジンを統一。属人化を排除し、人手を介さずリアルタイムで集計/分析レポートの出力が可能になった。

 

 

「今回のイノベーションはローンチをして終わりではありません。COSMOSを2020年2月までに11生産拠点にローンチした後、次のステップ、成功事例づくりへと進みます。徹底的に改善指導をし、業務改革の定着化、深耕を図り、人材の育成、COSMOSのポテンシャルを最大限に活用できるようにします。

その成功事例をもとに残りの10生産拠点へと展開していく計画です。こうすることでデータ駆動型の文化の定着を図っていきます。IoTやAIなどの最新テクノロジーの導入も予定しています。AIについてはまだ構想策定前ですが、アイデアは複数あるので、近いうちに何らかの形で実現したいと考えています。『ワタミで働いていて楽しい!お客さまにワタミを利用してよかった!』と思ってもらえる会社にしていきたいですね」

インフォアジャパンが提供する「Birst」とは?

続いて、インフォアジャパンの石田雅久氏が登壇した。講演テーマは「ネットワークBIによる新しいデータ管理&分析アプローチ Infor Birstのご紹介」。

 

▲インフォアジャパン株式会社 ソリューションコンサルティング本部 本部長 石田雅久氏

 

インフォアジャパンは世界第三位のソフトウェアベンダー。製品開発への投資を積極的に行っており、5年間で2700億円もの製品開発投資をしている。ワタミがデータドリブン経営を実現するために導入した「Birst」はインフォアジャパンの製品である。

データ管理と分析の理想型は、すべてのデータが中央管理されたデータウェアハウス(DWH)で一元管理され、分析できるようにすること。しかし実際にはExcelにエクスポートしたり、そのファイルを転送したり、共有したりすることでデータが散在している。データが複数あることで一元管理されず、カオス状態になっているのが現状だ。

そこでDWHを作ることに取り組む企業と、各部署で個別に分析する形を採用する企業に分かれる。また、個別に分析する仕組みにも問題がある。全社を横串で見たいというときに、どれが正しいデータなのか、データガバナンスの観点から難しくなるからだ。この課題に対する一つの解決の方法がBirstの導入である。

海外の企業ではデータアドミニストレータという役職を設け、DWHなどのデータを管理している。だが、国内企業ではそういう専門部署を設けることはなかなか難しい。日本企業の場合、1つの大きなDWHを作るのではなく、各部署が管理したモノをうまく共有する仕組みを作る方が向いていると言われている。Birstはこの考え方を採用している。

Birstが提供する機能とは

Birstはクラウドベースのアナリティクスプラットフォームで、データ収集・準備・可視化をスマートに実現する仕組みを提供。エンタープライズレベルで使用可能なスケーラブルな設計を採用している。

 

 

Birstが提供する機能の一つがオートデータリファインメント。複数のデータソースからメタデータを解析し、分析に必要なデータモデルの作成を自動化する機能だ。この機能により、時間のかかるエラーが発生しやすいETLプロセスを実行する必要がなくなる。Birstはこの機能を実現する技術で、米国で特許を取得している。

Birstはエンドユーザーデータの準備も容易にできる。例えば自分が持っているエクセルデータや市場で買ってきたマーケットデータをアップロードすれば、専門知識がなくてもデータ加工が簡単にできるようになる。

セマンテックレイヤーは分析データガバナンスを可能にするビジネスルールと定義の単一のセットであり、ユーザーが分析に必要な属性、グルーピング、メジャー、およびセキュリティレベルを管理する機能。これにより、企業全体にとっての唯一真実のソースがタイムリーかつ適切に維持、提供している。

「ネットワークBIは、企業における分析データの重複管理と一貫性のないKPIの発生を低減するため、分析準備ができているデータを組織間で共有する概念です。これにより、ユーザーは各部門が管理したデータを容易に使うことが可能になり、組織をこえてエンドtoエンドの分析が可能になります。分析ではパフォーマンスが大事。そこで装備しているのがインテリジェントキャッシュ&インメモリデータストアです」

そのほか、Birstで管理されたデータに対し、任意の分析ツール使用できるというオープンクライアントインタフェース、スケーラビリティの高いマルチテナントクラウドプラットフォームを採用しているのも、Birstの特徴だ。

「今年度後半から、AIを使った分析の仕組みとして、スマートインサイトをリリースしました。ビジネスに影響を与える異常値を自動的に検出し、即座に対応したり、インタラクティブなダッシュボードを自動的に作成し、新しい洞察を発見することができます。今後さらにAIを使った様々なサービスをリリースする計画になっています」

様々なエンタープライズシステムと連携できるよう、コネクターを用意しているという。

「これだけ豊富な機能を持ちながら、他の競合製品と比べても圧倒的に低いTCOを実現しています。今、グローバルで導入実績は1000社。製造やサービス、小売業など様々な業界、企業で使われています。

例えばCitrix社ではBirstを導入し、在庫回転率を5倍に向上、99%のオンタイム配送を実現しています。またCROSSMARK社では、1000のメーカーと1万の小売業者を結ぶデータの可視化を実現しました」

最後に石田氏はデモを実施し、使い勝手の良さを披露、セッションを締めた。

データドリブン経営実現のためのツール選定のポイント

15分間の休憩の後、ジールの加藤隆児氏が登壇。講演タイトルは「データドリブン経営実現のためのツール選定のポイントと失敗しない導入手法とは」。

 

▲株式会社ジール ビジネスディベロップメント部 マネージャー 加藤隆児氏

 

ジールはBIとDWH、CPMに関するソリューションを提供している。従業員はおよそ350人で、その8割は技術者が占めている。ジールの強みは、BIという単語が一般に浸透する前から、データの利活用に取り組んで来たこと。900社を超えるBI/DWHシステム構築の実績があり、AI/BI/CPMの主要ベンダーと緊密に連携している。

またストラテジーコンサルティング、システムデザイン、インテグレーション、オペレーションサポートまでBIに関する全てのサービスを提供しており、そのいずれの段階からでも参画できることも、同社の強みだ。

データドリブンとは、多種多様なデータにもとづいて判断し、アクションすること。
データドリブンを行うためのステップは次の通り。

①データの収集
  ↓
②データの可視化
  ↓
③データの分析、ネクストアクションの検討
  ↓
④ネクストアクションの実行

「大事なのはこの4ステップを回し続けることが重要です。しかし、データドリブンを行う上では、『システムのデータ量が多く、パフォーマンスが出ない』『ある時点のデータは見えるが軸が変えられない』『そもそも見たいデータ項目がダッシュボードにない』など、さまざまな障壁があります」

その一方で、デジタルデータは年々、増え続けている。このような環境の中で、どのようにデータの利活用をしていけばいいのか。

「グローバル経営の可視化イメージは図の通りです。横のつながりに加え、縦の経営トップまで情報をあげられるような仕組みを作るのです。そして『観察→判断→決定→行動』というウーダーループ(OODA)を回すことです。OODAはアメリカ空軍が提唱した理論で、意思決定を即座にすることからOODAが今、注目を集めています。このOODAを支援するのがBIツールです」

BIツールとは、ビジネスで賢く行動することを支援するツール。興味・関心事項について現状を把握し、今何をするべきかを判断してネクストアクションを実行する。そうして得た結果から「把握→判断→実行」というループを支援するためのツールである。

BIツール導入事例における成功の秘訣

BIツールの導入プロジェクトでは失敗も多く見られる。その原因として挙げられたのが次の7つだ。

1.導入目的を明確にする
ゴールとして「誰に、何のために、どのような情報を届けるか」を検討すること。数多くの実績からまとめられた 高度な方針策定メソッドを適用すること。

2.お客さま側の推進者を立て、体制を決めておく
プロジェクトを開発会社に任せてしまい、お客さま側において誰が何をどうするか不明確な状態を避ける。お客さま側PMの擁立、PMスキルトレーニングを実施する。PJトラブルシュートを作成し、プロジェクト体制の確立をすること。

3.ツール選定は直感的におこなわない
自社にとって、プロジェクトにおいてどのような利用機能や利用方法が重要かを予め検討すること。
要求実現されないシステム、カスタマイズの乱発、使わない機能へのコストを支払い続けるなどのトラブルを避けるため、プロトタイプモデルの作成や要件を主とした選定、第三者による不必要案件の排除などを行う必要がある。

4.ツール導入前にデータの整備を行うことで、分析がスムーズに
データ整備が行われていない場合に引き起こすトラブルはデータの不足、レスポンスの低下、追加費用の発生などがある。高い業務知識とお客さまの特性を理解したスタッフを配置し、予めデータの整備を行うこと。

5.データの定義や言語定義化をしておく
データの不一致、コミュニケーションミスを避けるため、綿密なヒアリングによるデータ定義とデータ辞書の作成をすること。

6.操作方法がわからないというトラブルを未然に防ぐ
ユーザーに合ったトレーニングの実施やフォロー体制の確立で解決する。

7.徹底した事前調査をし、適切な製品選定をする
ツールの選定、ハードウェアのサイジングを適正におこなうことで、ツールのパフォーマンスが最大限に発揮される。

「例えば『組織をまたがる多種多様な膨大で複雑なデータの活用』『ビジネスデータと犯行増加/非構造化データの融合、オンプレ-クラウドの活用、セルフサービスの実現』という要件加え、迅速性、柔軟性、高い開発生産性が求められたとしましょう。これらの条件を満たしたツールがBirstです」

創業時より手づくり感を大切にしてきたワタミ

最後に登壇したのは、ワタミの黒川大輔氏。2001年にワタミに入社し、営業部で店舗の運営や業態開発などを経験。その後生産部に異動し、「手づくり厨房」でライン運営、工場マネジメント、新工場設計などに従事する。

MD事業本部外商農業事業部を経て、2018年に海外プロジェクト室、MD事業本部MDシステム部、2019年よりIT戦略室SCN担当に就任。「ITに関してはまったく知識がなかった」という黒川氏は、「データドリブン経営の実践事例」をテーマに同社の開発事例について語った。

 

▲ワタミ株式会社 経営企画本部 IT戦略部 SCM担当 部長 黒川大輔氏

 

ワタミは居酒屋から始まった。業績は右肩上がりだったが、2013年をピークに売上が下がる。その状況に工場がどうやって対応してきたか。またシステム刷新をどう考えてきたかについて語られた。

ワタミは全国に11の工場があり、外食事業向けは、501店舗への仕込品の製造と配送、宅食事業向けには、高齢者向けの日替弁当を毎日23万食製造して届けている。

居食屋「和民」出店当時のコンセプトは「もう一つの家庭の食卓」。お母さんが子供に食べさせたい料理は「手づくり」。当初は、近所の主婦の方たちが各店舗でほとんどの食材を当日使う分だけ仕込んで提供してきた。しかし300店舗になったとき、店で仕込みをするのが難しくなった。そのため手づくり感を損なわずに調理する考え方を受け継いだ集中仕込みセンターの構想があがった。

最初は試験的に5店舗ぐらいの仕込みを一箇所で行ってみた。安全を担保する記録などのトレース、商品の均一性、さらに生産性やエネルギーコストにおいて優位性が実証できたため、2002年3月に「ワタミ手づくり厨房」を設置した。ここでは、お客さまへ提供する商品の一歩手前の仕込みまでを受け持つ。午前5時に発注を受けてから製造にかかり、午前9時から順次出荷。在庫日数を1日以下で回していた。必要な時に必要なものを必要な分だけ、発注を受けてから作る仕組みのため受発注関しては非常にタイトだったが、無駄はなかったという。在庫を持たないため、商品のブラッシュアップも翌日から変更可能でした。事業環境によってポートフォリオも変わってきたが、このような集中加工センターを持つことで「手づくり」と「生産性」の両立を実現し、他社との差別化を行い、事業を展開してきた。

基本は多品種少量、小ロット多回生産を前提とした考え方です。まとめて作るよりも小さな単位で製造することで1パック目の出荷時間が早まります。複数回製造することで出荷時間帯ごとに必要な分だけを製造します。小さい設備、小さい工場で、固定費含めた生産コストを抑制し、さらに変化できる仕組みを目指しました。このような毎日生産、毎日配送を基本とした新鮮な商品を配送することをアナログで考え、実行してきました。工場では最大時で毎日600種類、1ラインで20種類から30種類つくっていた時もありました。

ERP導入にあたり「この仕組みがシステムで本当に管理できるのか」という不安もありましたが、同時に、できるが故に対応してきてしまった属人的かつ複雑な仕組みを整理する時期にきたと考えました。

工場における商品や企画の実現性やレスポンスは圧倒的ではあったが、その評価や検証について課題があったからです。

生産性を改善するためのデータ分析に時間がかかっていた

ワタミの宅食事業は2008年から始まった。当時は1つの工場で1万食の生産体制に向け準備をしていたが、その翌年は1万8000食、翌々年には3万8000食、翌々翌年には4万5000食を目指すことになる。工場投資を抑えるためのモデル構築をし、改善できるところは改善、その要求に応えてきた。だが、概ね展開を終える段階に来ると、減産と利益確保のための生産性改善が必要になりました。

 

 

 

工場の改善活動は全て自前のプロジェクトで行われます。改善は正しい現状把握から行動内容の決定、実施した行動に対する迅速な結果検証が重要。結果的に大きな改善はできましたが、とにかく正しい現状把握するための数字がすぐに取り出せない。実績はエクセルで工場別に管理されているため集計すらすぐにできない。企画・開発・生産で使っているシステムが異なるため、情報共有や共通認識に差異があったり、時間がかかる。しかし、この集計を誰かに任せると、どこかでバイアスがかかったりする可能性は否定できない。

当時はなんとか一人で過去のデータをすべて分析して改善を行ったのですが、このままでは変化に対応できなくなります。そこで分析基盤が必要だと考え、Birstを導入することになりました。効果的な導入を進めるために取り組んだことがあります。

まずはコードの統一と同一品目のコードの集約、管理帳票、実績集計関連情報の集約です。そしてプロセスの標準化。各事業に異なるビジネスフローを可視化し、可能な限り統一しました。こうすることで、あまりにも多機能になったビジネスプロセスを集約していく覚悟ができました」

 

 

さらに黒川氏が仮説検証方法として採用したのが、現場指標(時間数)、職場指標(生産性)、経営指標(労務費額・率)を同時に見られる仕組み。工場の改善活動は、部分最適になりがち。発表される「生産性」は何%も上がっているのに全体の労務費が全く減っていないなどというとことが普通にある。

高い知見を持った人がどんな数字を見てどんな判断をしてどんなアクションをしていくのか、それができるBIを構築してきたと語った。

講演後のQ&Aタイムでは、参加者から積極的な質問が寄せられ、ERPとBIツールに対する関心の高さが感じられるイベントとなった。

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