本内容は、 株式会社Voicy で公開されているわおんDX チャンネル 5月27日の放送内容を記事化したものです。
ゲスト:株式会社シブタニ 技術開発部 企画広報グループ グループリーダー 小笠貴博 様
放送日:2020年5月27日
ゲストは株式会社シブタニの小笠さん
今回は、株式会社シブタニの小笠さんにインタビューをしています。
本社が大阪にある建築金物の物作りをしている会社なんですけれども、特にオフィスや公共施設の鍵で有名な会社です。
この株式会社シブタニさんに出会ったきっかけなんですが、ウイングアーク1st社が主催するデータリンピック2018というビジネスコンテストで出会いました。
私もこのデータリンピック2018に参加したんですけれども、優勝候補者が大阪にいるという噂が流れていたんですね。で、実際にファイナリストにシブタニさんの名前があったので、私も調べてみました。その時に最初、会社のホームページを見て何の会社かわからなかったんですよ。
どうしてかというと、そもそもデータリンピックは、IT企業が多く参加しているイベントだったんですが、その中で、シブタニさんの会社のホームページ見ると、製品というページがあって、そこを開くと金物が載ってたんですね。鍵とかが載っていて、どんなアイディアを出すんだろうと思っていたら、IoTでフードコートの利用状況を可視化するというアイデアでした。
このアイディアは、優勝しただけではなく、本当に事業化しています。
スイッチストライクエアーとは
わおん: 本日は、株式会社シブタニさんから小笠さんにお越しいただきました。
こんにちは、よろしくお願いします。
では、早速なんですけれども、簡単に自己紹介お願いします。
小笠さん: はい、株式会社シブタニという建築金物を作ってるメーカーで働いている小笠といいます。
建築金物といっても、なかなか皆さん、想像しづらいと思うんですけれども、どんなものかというと、家の鍵とかハンドルなどを作ってる会社です。そして私は、商品企画と広報をやっております。
わおん: 広報部の方なんですね。
小笠さん: はい、商品企画もやっています。
わおん: 今日は何でインタビューしたいと思ったのかというと、金物専門ということは知っているんですが、さまざまなIoTの分野に取り組まれていますよね。その中でも SWITCHSTRIKE AIR について聞いてみたいと思っています。
まず SWITCHSTRIKE AIR って、何か知らない方もいると思うので、どんなものなのか?という特徴を説明をお願いします。
小笠さん: はい、わかりました。簡単に説明すると、トイレの利用状況が分かるセンサーなんですよ。
わおん: トイレのIoTですね。
小笠さん: はい、トイレのIoTなんですけれども、トイレって、皆さん、住宅のトイレをイメージされるんですけれども、そこではなくて、公共施設とか商業施設、例えば、大きなスタジアムとか、〇〇百貨店とか、そういったところの複数トイレブースがある所の空間、そこのトイレの利用状況を把握するためのセンサーが、SWITCHSTRIKE AIR という商品なんです。
わおん: なんか私、この SWITCHSTRIKE AIR って、なんか言い間違えちゃいそうなんですけども。
小笠さん: 長いですよね。
わおん: 名前の由来は何ですか?
小笠さん: あのーうちは、もともと先ほど言ったように、トイレの金物メーカーでして、トイレの金具も作ってるんですね。 横にスライドして鍵がかかるという、皆さん、絶対使ったことあるんですけど、あの鍵、シブタニが作ってるんですよ。それで、その鍵を受ける所の名前がストライクって名前なんです。
わおん: (驚)えー!
小笠さん: マニアックですよね、そうなんですよ。あれ、ストライクという名前でして、あそこをセンサーとしたんですけれども、無線で飛ばすので、無線のイメージがエアーなんですね。
わおん: なるほどね!
小笠さん: もともと最初は、エアーストライクという名前でバシッと決めて出したんですよ。まー出したというか、社内で決定したんですけれども、外部から指摘が入りまして、エアーストライク、直訳すると空爆になるんですね。
わおん: (笑)なるほど、それはちょっとまずい。
小笠さん: まずいですよね。そういうこともあって、 SWITCHSTRIKE AIR と、ちょっと名前が長くなったんですけれども、そういった名前になりました。
わおん: なるほど!鍵の種類、色々ありますけど、あの横にスライドするタイプの鍵を作っているんですね。
小笠さん: はい、そうです。実は回転するタイプの鍵も作ってるんです。
わおん: (驚)そうなんですね!
小笠さん: 両方作っていて、トイレの市場の鍵、だいたい国内のシェアーの70%ぐらいは、シブタニがもっているんです。
わおん: そうなんですね。私の会社もスライド式なので、もしかしたら、シブタニさんの鍵かもしれないです。
小笠さん: そして、そこのストライクの部分にセンサーを仕込んで、そして、センシングしてトイレの利用状況を見るというのが特徴なんですけれども、実はこのトイレの利用状況、知りたいというニーズは、結構あって…。
わおん: あります!
小笠さん: そうですよね、実は世の中にいろんなセンサーあるんですよ。
わおん: (驚)そうなんですね!
小笠さん: うちのセンサー以外にもいろんなセンサーがあるんですけれども、この SWITCHSTRIKE センサーが、ほかのセンサーと一つだけ大きく違うところがあります。それは、電源が要らず、電池もいらない。そして、信号を飛ばす優れもの、といいますか、そういう特徴のセンサーなんですね。
わおん: じゃあ、その使ってる人からすると、いつも見てるトイレの鍵なんだけど、実はそこにセンサーが付いていて、信号が飛んでるってことなんですね。
小笠さん: そうなんですよ。
嬉しい話といいますか、どこかのツイッターで見たんですけれども、トイレの信号を取ってるけど、どこで取ってるのかわからない、みたいなツイートされたりとか。
先程ニーズが結構あってと言いましたが、実はその商業施設とか〇〇百貨店とかに試験的に付いているセンサーをお客さんが、カメラと間違って何かとられている、というようにクレームが入ったりとか、そういったことも聞いたりしてるんですね。
そういうこともないように、金物の一部としてセンサーが存在している、というものを作っています。
わおん: なるほど、そのトイレの可視化っていうのは、もうトイレに人が入ってるか入ってないかを可視化できるっていうことなんですよね。
小笠さん: そうですね。
わおん: 何かモニターがどこかについているってことですか?
小笠さん: ええ、そうですね。あのイメージとしては、トイレに入る前に、男子、女子と分かれるようなところに、どこが開いてしまっているのかを表示させています。結構、大きな施設だと、トイレ案内係がいてるらしいですよ。
わおん: 大変な仕事ですね。
小笠さん: こっちのトイレ空きました、あっちのトイレ空いてますと。特にライブとか、そのような大きなイベントの時には、休憩時間に、一気にトイレに人が押し寄せるんですね。
わおん: わかります。
小笠さん: 50個も30個もトイレブースを用意しているのに、空いているのはもったいなくてと、回転率も悪くなるので、こっちが開いてる、空いてないを指名しているんですね。
わおん: 今ちょっと思い出したんですけど、私、落語を聞くんですね。落語って必ず間に休憩時間があるんですけど。
小笠さん: なるほど。
わおん: トイレに行きたいなーと思って聞いていたら集中できないので、みんな一斉に行くんですよね。
小笠さん: そうですね。
わおん: 会場が1階、2階、3階とわかれていると1階が空いてますよって、案内してる方いますね。
小笠さん: 結構、そういうニーズがあって、そこにかかる人件費もバカにならないですね。
わおん: そうですね。
小笠さん: だからそういったニーズがあって、そのトイレの利用状況を知りたいというところもあったりとか、もう一つはオフィスなんですね。これね、私もね、実感してるんですけども、オフィスのトイレってめちゃくちゃ少ないです。
わおん: 確かに、うちは、三つしかないですね!
小笠さん: うちは二つなんですよ。
わおん: 確かに凄い並んでますね。並んでるし、あの人、ずっと出てこないなー、みたいになりますよね。クレームもあります。
小笠さん: 実はちょっと面白い実験があって、このトイレの可視化、これ実は、トイレが入ってる入ってないというのをとるだけじゃなくて、どれぐらいの時間入っているのかっていうのも、とれちゃうんですよね。
わおん: なるほど。
小笠さん: これ、どう見せるか、というところは、様々な考え方があるんですけれども、例えば10分以上入ってるとチカチカしますよと、という実証実験をしました。そのトイレの利用状況をお知らせしますよと。長時間の利用について、お知らせをしなかった場合は、だいたい皆さん7、8分入ってたんですよ、平均でも。
わおん: 結構長いですね。
小笠さん: 長いですよね、はい。そして、10分以上入ってると、外部にチカチカお知らせしますね!と言うようなことをすると、これがね、4分に減ったんですよ。
わおん: (驚)面白い!
小笠さん: 面白いですよね。
わおん: 可視化させるだけで、人の反応や行動が変わるんですね。
小笠さん: そうですね、結局、ちょっと話がそれるかもしれませんけど、トイレって昔は3Kって呼ばれてたの知ってます?
わおん: (驚)おー?!
小笠さん: 臭い、汚い、暗い、3Kって呼ばれてたトイレが、もう最近の人たちは、そんなに感じてないかもしれませんけれど。トイレの空間は、凄く綺麗になって、3Kという、臭い、汚い、暗いっていうのを感じない空間になっているんですね。
わおん: そうですね。
小笠さん: そして、そこにスマホが普及されて、居心地の良い空間プラス、スマホでちょっと時間が潰せるじゃないですか。スマホを触ってしまうと、自ずとトイレを利用する時間が伸びてるんですよ。
わおん: なるほど、だからよりトイレに入ってる人を可視化したいというニーズが高まったんですね。
スイッチストライクエアー誕生の経緯
わおん: では、ここでまた質問なんですが、元々、鍵を作る専門の会社だったということなんですが、なぜIoTの分野に手を出すことになったのか、という経緯を教えてください。
小笠さん: はい、えーっと、もともとですね、IoTをしたいっていうわけではなかったんですよ。
わおん: (驚)おー!
小笠さん: 先ほども言ったようにニーズがあったんですね。特に施設提供側って、先ほども言いましたけど、トイレの空間を大事にしていて、トイレは、いわゆるお客様を呼び寄せる集客ツールの一つにもなってきたんですね。
わおん: 感じました!
小笠さん: はい、そうなんですよね。入るなら綺麗なトイレを選びますよね。でも、その代わり、スマホと綺麗になったがために利用時間が増えてしまって、せっかく用意したサービスが必要な人にきちっと使われていないと。
わおん: クレームになる可能性もありますもんね。
小笠さん: そうなんですよ。 相反してしまったというニーズが世の中に結構あったんですよ。
まあ、トイレの鍵を作ってるメーカーとしても、やっぱり何とか したいなという思いはずっとあったんですけれども、ただ、なかなかそのセンシングするためにはですね、電池が必要だったりとか、配線が必要だったりとかしてたわけなんですよ。
そうすると今度、施設導入者側は、なかなかそういう設置しづらいもの、配線などは工事が大変です。電池ってなると、誰が換えるの?と、それこそそうですね。高速道路とかって50ブースぐらいあって、一個電池切れたら、他も換えるのか?それとも、切れるたびに一個ずつ換えたら、明後日換えて、また、明々後日換えて、みたいなことで、手間ばっかりかかっていくんですよね。
求められてたものが電源配線もなく、電池もなく、でも、利用状況が知りたい。
わおん: なるほど、難しいですね。
小笠さん: 難しいですよね。そのニーズがおそらく2、3年ぐらい前から掴んでいて、ただ、それを解決できる商品がなかったんですけれども、たまたま、EnOceanという無線モジュールに出会ったんです。これは、自作発電で信号を飛ばすことができる送信モジュールだったんですよ。もう、これを見た時に、あ、これやっ!と思ったんです。
今までのニーズとシーズがうまくマッチングして、これを製品化したら、絶対世の中の要望に応えると思って作ったのが SWITCHSTRIKE AIR なんですよね。
わおん: では、それまでには鍵の開閉以外の方法で可視化するというのも検討されたんですか?
小笠さん: してないんですよ。
わおん: なるほど。
小笠さん: まあ、そうなんですよ。我々あくまでセンサー屋さんではなくて、あくまで金物メーカーなんで、鍵の開閉以外でやってもあまり意味がないというか、センサー屋さんに任せたらいいんじゃないかなと。
わおん: あ、そこがシーズってことですね。
小笠さん: そうです。
わおん: 鍵を使ってできることを常に考えて、そのシーズとニーズがマッチしたということですね!
小笠さん: そうですね。利用状況を知りたい、というニーズからスタートしてるんですけれども、それが、クラウドに上げてデータを蓄積すれば、いろんな活動ができるんじゃないかと、IoTにたまたまつながっていったと。
わおん: なるほど!では、そのサービスを展開する前っていうのは、単純にトイレにいる人、どれぐらい埋まっているか、どれぐらいの時間で滞在しているかなど、可視化したいというニーズあったと思うんですけど、実際に展開してみて、サービスを展開する前に予想していなかったこと、良いことでも、悪いことでもいいんですけど、何かありましたか?
小笠さん: 予想してなかったことですね、そうですね、えっと・・・難しいですね。(笑)
まぁ、悪いことはね、特になかったですね。苦労はするかなと思っていたので、金物メーカーなので、クラウドであったりとか、システムであったりとかっていうところに関しては疎いですよね。その部分はめちゃくちゃ苦労するかと思ってましたので、苦労しましたけれども。
まぁ良いことといったら、協業っていう可能性がちょっと増えたかなって思っていて、まぁ、ちょっと金物メーカーというところをだいぶ出しますけど、我々は製品作って、工場で作って終わりなんですよね。いわゆる個人プレーというか、スタンドプレーで終わりなんですけれども、実は作った商品同士を横展開できるっていうように可能性が広がったのは。
SWITCHSTRIKE AIR では、いろんな企業さんから、我々の商品と手を組んでサービス広げましょう、みたいな感じです。
わおん: では、このトイレの鍵でIoTっていうサービスを起点に、ほかのサービスも今展開されているんですか?
小笠さん: 実はそうなんです。まぁトイレだけだと、やっぱりちょっとこう、他も見たいよねと。
例えば駐車場の空いてる閉まっているっていうのも、そういったものが、一つの管理画面で見れたりとか、データもひとつのクラウドに貯めてしまったりとか、そういうことを出来るんじゃないの?というところで、いろいろと、協業の話をいただいております。
わおん: なるほど、鍵の開け閉め、凄いシンプルですけど、それでできることがたくさんありそうですね。
小笠さん: そうですね、はい。
わおん: わかりました。次のチャプターに行きたいと思います。
次回予告
いかがでしたでしょうか?続きはまた来週お送りしたいと思います。
このトイレが空いているか空いていないかを可視化するというシンプルなアイディアなんですが、利用者が無駄にトイレで長居をしなくなったり、清掃員の方の作業効率が上がったり、トイレの中で体調崩している人がいないかという危機管理に使えたり、様々な効果が得られるサービスだなと思いました。まさに人の暮らしが変わるDX、デジタルトランスフォーメーションのアイディアだと思います。
今回取り上げた SWITCHSTRIKE AIR についてURLを貼っておきますので気になった方は、ぜひご覧ください。
次回は、IoTという新しい分野にシブタニさんは取り組んだわけなんですけど、この取り組みの中で苦労したことや大事だと思ったことについてお話ししたいと思います。
次回放送内容「「建築金物」総合メーカー シブタニが起こす「トイレのIoT革命」(後半)」は、こちらです。