今回は、株式会社シブタニさんのインタビュー後半回になります。
前半では SWITCHSTRIKE AIR というIoTを使ったトイレの見える化サービスについて、その特徴を伺いました。
この SWITCHSTRIKE AIR というサービスなんですけれども、このIoTのサービスをきっかけにフードコートの見える化や会議室の見える化など、ほかのサービスにもどんどん展開をされています。
インタビュー後半では、シブタニさんがIoTという新しい分野に取り組む上で苦労されたことについて、聞いてみました。
目次
新規事業の取り組み方
わおん:では、次の質問なんですけれども、 SWITCHSTRIKE AIR 、これも新しい取り組みだったと思うんですけど、その中で企画広報部として、小笠さんは、具体的にどういう役割や立ち回りをしたのか 伺っても宜しいでしょうか?
小笠さん:はい、商品企画と広報という部署の人間なので、当然ながら商品立案は、この商品に関して私がやっていますし、プレスリリース発表までの広報の発信というところも私が行いました。ただ、この商品の難しかったところというのは、物だけ作ったらニーズがあるから売れる、というわけではなくて、今までの販路と違うんですね。システムが絡んでくるので、「クラウドって何なの?」というのが、うちの会社のスタートなんですよ。
わおん: おー!いいですね!
小笠さん:そうなんです。 だから、私もクラウドをイチから勉強して、できたから営業マンに売れ、というのもなかなか酷なので、営業的な動きも実際にやってですね、ある程度、販促方法のレールまで引いてあげるところまでも、私が段取りしました。ということで、実は、0から99ぐらいまで育て上げたのが私ですね。
わおん:おー!(驚)。例えばなんですけど、今までだったら鍵を設置します、という話なので、多分、お客様側でその打ち合わせをする時に出席される方は、施設を管理している方なのかな、と思うんですけど、こうやってクラウドとかデータとかが絡んでくると、お客様側のIT部門の人も出てきたりしますよね。
小笠さん:その通りです。
わおん:そうですよね。
小笠さん:はい、これどう繋ぐの?って言われても答えられないですよ。
わおん:そうですよね。 確かに、そのシステム側の話を質問されたりとかして、例えば、データはどこに保存されるんですか?とか、もしエラーが起きたときはどういう処理になるのですか?とか、そういうことも聞かれちゃうわけですよね?
小笠さん:そうですね、はい。ここに スイッチの商品の飛ばした信号を受けて、クラウドに飛ばすゲートウェイという機器もあるんですね。ゲートウェイの選定もやっぱり私が基本的な指示を出しました。ゲートウェイの選定も私がしました。もともとゲートウェイもなんぞやからスタートしているんですけれども、そういった言葉の意味であったり、どういうものか、どう販売していくのかを踏まえて全部プロデュースをしました。
わおん:なるほどー! 鍵のことだけじゃなくて、データの話とか、クラウドの話とかシステムとかセキュリティの話とか、そういう新しい分野について結構難しいところがあったのかなと思うんですけど、他にこの新しいことをすすめる上で難しかったことってありますか?
小笠さん:先ほども言いましたけど、商品企画の人間なので、基本的には新しい商品を作っていくっていうのが使命なんですけれども、ゼロからイチつくるっていうのは難しいですね。やっぱりアイデアひねり出すのも当然ながら難しいんですけれども、それをいかにこう世の中に広めていくっていうところも難しいかなと思います。
わおん:なるほど!
小笠さん:これは単純に、うちの SWITCHSTRIKE AIR だけではなくて、いろんな商品やサービスにも当てはまることだと思うんですけれどれも、ニーズがあって、「誰に」、「何を」、「どのように販売していくか」というところを大切に考えています。まず、「誰に」というのがニーズなんですよね。どのような人に、どんなニーズに、というところですね。次に、「何を」販売するかというところ。何をは、僕が商品企画のところで、どういうスペックの商品を、どういうスペックのサービスを、こんなサービスをというところ。そして、あとはこれを「どのように販売していくか」。リリース方法であったり、どういうお客さんに対して、どういう営業方法でやっていくのかと。この三つのバランスがとれないとなかなか実現って難しいかなって、私の実体感としてあるんですよ。如何にね、いい商品でもニーズがなかったら売れないんですよ。いかにニーズがあっても、さっき言っていたように、配線のセンサーであったりとか、電池式のセンサーだと広がらないんですよ。ニーズはあるんですけど。うん、だからニーズと、スペックと後はこれをどのようにして販売していくか、このバランスがうまくとれると商品は成就するというか、ゴールできるかな、みたいな感じで考えて仕事をしています。
わおん:はい(納得)。このどうやっての部分なんですけど、売っていく相手っていうのは 、もともとシブタニさんの鍵を使っていた方なのか、使っていなかった方なのか、だとどういう割合ですか?
小笠さん:これはね、使っていなかった人たちというか、もともとうちが販売してた業者さんよりもさらに川上と言うんですかね、管理会社さんであったりとか、お施主さんと呼ばれるような人達に提案をしていきましたので、これの良さをどうやって周知していくかが難しかったですね。
わおん:なるほど~。それでは、難しいことの反対で面白いと感じたこととか、嬉しかったことって何ですか?
小笠さん:えっと、何だろうな。。。私自身がですね、その何て言うかな。。。褒められるというか、認められる欲求が強いんですよね(笑)。結構、「いいね!」とか、「この仕事よかったよ!」、みたいな感じで、こう認められるのが結構好きで。ただ、今回の SWITCHSTRIKE AIR に関しては、ユーザーさん、使用者からツイッターであったりとか、そういったところで、「この商品凄い!」というように私の関与しないところでも褒められたっていうのが、すごく嬉しかったですね、やっぱりね。はい。
わおん:なるほどー。なんかこの前、共通の知人から、沖縄の施設で SWITCHSTRIKE AIR 使われてたよ、っていう報告ありましたもんね。
小笠さん:はい、あの某水族館で。
わおん:そうですね。それは嬉しい!
小笠さん:はい、そうですね、嬉しかったですね。あそこは、2階と1階にトイレがあって、2階のトイレがむちゃくちゃ使われてて、1階が空いているのにっていう問題を SWITCHSTRIKE AIR で解決しましょうと。
わおん:おー!。 そこの水族館でもいろんな反応が聞こえてきてますか?
小笠さん:水族館は、ちょっと遠い地域なので、中々直接っていうわけではないんですけれども、つけられたところの施設であったり、これからつけようと検討してくれているところの施設からは、「こういう使い方ができるね」っていう非常に嬉しい声が聞こえています。例えば、「備品の補充のタイミングがわかるよね」みたいな。
わおん:なるほどー!
小笠さん:オフィスだったら、トイレットペーパーを大量に置いておけばいいんですけれども、公園などの公共の施設の備品って、定期的に補充しているらしいんですよ。例えば、雪道とかね、雪が多い地域とかやったら雪道を車でルーティンで回って定期的に補充しに行っても、トイレットペーパーが減っていなかったりとかね。そういうことがあるけども、使用回数がある程度データとして溜まってくると、これぐらい使用されるとトイレットペーパーがそろそろなくなるよ、というのがわかるので、働き方の効率改善につながるようになるみたいな。
わおん:本当に鍵にセンサーをつけて、中に入ってる入ってないが可視化されるっていうシンプルなアイデアなんですけど、利用者もあまり無駄に長く居るのをやめようって思うし、ほかの利用者は、より待ち時間が減って快適になるし、それで、施設の方も働き方がより効率的になるっていう、やっぱり、いいところがたくさんありますね。
小笠さん:はい、そうなんですよ。
わおん:やっぱりそういう効果がたくさんあるなというのは、このサービスを展開する前から感じてましたか?
小笠さん:いや、ここまで感じてなかったですね。
わおん:なるほど、では、やってみて、「あ、こんなことにも使える!」っていう効果を感じてるという感じですか?
小笠さん:そうですね、実はさっき私が言った備品の補充のタイミングとか、清掃の効率化というのも、お客さんから実際に「ここまでできるんじゃないの?」っていう風に、逆にアドバイスもらったところもあったりとかね。
体験型ショールームのねらい
わおん:はい、では、このトイレのIoTをきっかけに、どんどんこのサービスの分野って広がっていって、忙しくなってるんだなっていう印象を受けてるんですけど、特に最近忙しかったって聞いてます。最近何が忙しかったんですか?
小笠さん:めちゃくちゃ忙しかったんですけども、あの商品企画で忙しかったわけじゃないんですよ。広報の方が忙しくてですね。
わおん:広報の方?
小笠さん:はい、実は、うちの本社のショールームをリニューアルで作り直して、それの責任者もやってたので、ショールームの工事の件で、非常にバタバタしていました。
わおん:ショールームの企画も仕事の範囲なんですね?
小笠さん:そうですね、はい。実はそのショールームの企画って、私とても大事だと思ってるんですね。先ほど言った、その「誰に」、「何を」、「どうやって売るか」と言うことのバランスがうまくとれれば、商品というは、自ずとまあ売れていくといいますか、非常に浸透していくと思ってるんですけれども、「このどうやって売るか」ってところが結構難しいんですよ。
いい商品のニーズがあっても、売り方がきちんとしなければ、というか、認めてもらえなければ、なかなか商品って買ってもらえずに、「いいけどね」で終わってしまうんですね。でも、ここの「どうやって売るか」っていうところは、資料でいかにプレゼンを完璧にしてもやっぱり伝わらないんですよ。
わおん:ええっ!? どうしたらいいんですか?
小笠さん:やっぱりね、私の感覚といいますか、今までの知見からいくと、やっぱり体感・体験してもらうと、実はその商品の可能性をプレゼンターよりもお客さんの方が、こういう使いかたができると気づいてくれる。先ほどね、 SWITCHSTRIKE AIR のお客さんからアドバイスもらったというのも、実際に物を持って、試作品を持って、現場でお客さんに見せているんですね、プレゼンとして。それで、この商品やったら、こういうこともできるね、あーいうこともできるね、っていう風に、お客さんが自ら創造を膨らませてくれるんですよ。これがね、資料とか口頭だけやと、いいねで終わってしまうんじゃないかなっていう風に思ってて。
わおん:はい!(驚)。
小笠さん:それで、私のショールームの企画のコンセプトは「体感できる!」なんですよ。
わおん:おー!!(驚)
小笠さん:並べてるだけじゃなくて、実際に、「あっ!こんな感じで自動ドア開くんだ!」とか、「こんな感じで玄関の鍵開いちゃうんだ!」みたいな、「凄い便利だよね!」という言葉じゃなくて、体験いただくという。
わおん:ふーん(納得)
小笠さん:まぁ、そうすることで、欲しくなるといいますか、購入したくなる欲求が強くなるんじゃないかなって思ってるんですね。
わおん:特にこの体験をして欲しいって言う一押しポイントはありますか?
小笠さん:一押しポイントですか。実はですね、最近スマホで鍵を開け閉めできるという商品が、世の中にね、実はこれ、もうすでにあるんですよ。あるんですけども、これも普及しきってない原因があるんですね。
わおん:なんか最近、私が友達とその話をしたんですけど、その人はとにかく家電がめちゃくちゃ好きなんですね。家電がめちゃくちゃ好きな人にボーナスを何に使うんですか?って聞いたら、スマホで鍵をあけるやつを買おうかなって言ったんですよ。
小笠さん:あー、なるほど。
わおん:日頃から家電が好きでチェックしている人が、ボーナスがあったら買おうかなっていうレベル。
小笠さん:なるほど。
わおん:普通に生活していてあれば便利だけど、あってもなくてもそこまで不便じゃないって、なっちゃうのかなという印象がありますね。
小笠さん:これがね、やっぱりね、聞くだけだとやっぱり、そこで止まってしまうんですけど。
わおん:いいなーとは思いますけどね。
小笠さん:体験できるとね、便利!ってやっぱりなるんですよね。
わおん:おー!(驚)。
小笠さん:スマホで開けて、「あっ!」てなりますし、今、私どもが提供しようとしている商品が、実は合鍵をスマホで発行できるんですよね。
わおん:おー!(驚)
小笠さん:皆さん、そのそれぞれの生活スタイルがあるんですけれども、高齢者の方と一緒に住んで、ご飯はヘルパーさんに用意してもらうと。それで、自分が働いてて、というパターンが意外と多かったりするんですね。その時、自宅の鍵をヘルパーさんに渡してるんですけれども、それがね、例えば月曜日から金曜日まで、朝の9時から昼の3時までしかあげれないスマホ鍵みたいなものが発行できるんですよ。
わおん:わぁー(驚)。すごいですね!
小笠さん:それやったら鍵を落とす心配も無いですし、ちゃんと鍵を開けた、閉めたと、ちゃんとご飯を作ってくれた、みたいな事の履歴も残って。
わおん:凄い!
小笠さん:データも取れると。そういったこともできたりしますと。
わおん:このサービスもデータを使って、あんなこともこんなこともできそうっていう風に広がりそうですね。
小笠さん:そうですね、はい。
わおん:ふーん、なるほど。では、もうすでに世の中にあるけど、広まっていない、定着してないものっていうのは、まだ新規事業として検討する余地があるっていうことですね。
小笠さん:そうですね、もちろん多分何か障壁があるんですよ。何かのバランスが崩れているだけなんで、そこを整えてあげると、やっぱり一気に普及する可能性はあるんじゃないかなと思ってます。
わおん:はい、わかりました。そしたら最後になんですけど、金物屋さんということなんですが、ちょっと難しいかもしれないですけども、このチャンネル、データ活用について興味ある方とかが聞いてくださっているので、データ活用の中でもIoT分野に取り組む方とか、もしくは新規事業に取り組む方に対して、何かメッセージをお願いします。
小笠さん:難しいですね。。。
わおん:はい(笑)
小笠さん:なかなかね、まあ、私がそういったデータに知見のある方々にしゃべっていいのかどうかとか、考えてしまうところはあるんですけれども、ものづくりをしていく、サービスを世の中に展開する時に、私が常々思ってることは、商品立場にならないということを結構思っているんですよ。どちらかというと、ユーザー立場でやっぱり考えないと物事は進まないと思っていて。どうしてもね、商品企画立案者とすると作った商品が可愛いので、ここがいいです、あそこもいいです、って言って、いいとこばっかりを押し付けるんですけれども、そうではなくて、作ったものをユーザーがどのようにして、どんな思いで使っていくのかというようなところを想像していくと、自ずといいものって出来上がってくるんじゃないかなというふうに思っています。シーズの押し付けではなくて、ユーザー目線で物事を考えていきたいなと考えていますね。
わおん:なるほど~!
では、今日はありがとうございました。
小笠さん:ありがとうございました。
感想
わおん:いかがでしたでしょうか?もうあっという間に収録が終わって、まだまだ話せそうだなと思いました。最後にショールームの話があがったんですが、このショールームのURLも貼っておくので、気になる方はぜひチェックしてみてください。この体験ができるということですね。
株式会社シブタニ SHOWROOM
最後、小笠さんが体験をしてもらうことが大事という話と、ユーザーの立場に立って考えることが大事とおっしゃっているのが印象的でした。私もBIツールを使ってみたいというお客様に対して、BIツールの製品説明をすることがあるんですけども、その時に、資料だけで説明するのではなくて、デモを見せて、発想をふくらませてもらうこととか製品の機能を伝えるのではなく、ユーザーの体験がどう変わるのかということを伝えるのが大事だなということを改めて思いました。
それでは本日も最後まで聞いてくださってありがとうございました。
前回放送内容「「建築金物」総合メーカー シブタニが起こす「トイレのIoT革命」(前半)」は、こちらです。