ゲスト
前回に引き続き、Jリーグでコミュニケーション・マーケティング本部に所属しデジタルマーケティングの活動をされている濱本さんです。
データを活用してリピート率が上がった事例は?
Jリーグではクラブの本拠地をホームタウンと呼んでいます。各クラブはホームタウンの市民の方々と様々な交流を行い、クラブを好きになっていただく活動をしています。
例えば、選手がホームタウンの小学校へ訪問し一緒にサッカーをやったりしているんです。
そのような活動の際にご招待券を配りスタジアムに足を運んでいただくようお願いします。
招待券をお配りすることで皆さんに見に来て頂けますが、つまらない試合だったらリピートして頂けないので、最近では、リピートいただけることを目的として、各チームで一番面白い試合の招待チケットを配布するようになりました。
昔は結構チケットが売れない試合に招待していたりもしたので、それだとサッカーの面白さを体験していただけないんです。また、現在は招待券が電子チケットになっているので、誰が招待券を利用してスタジアムにご来場されたのかを、データで追えるようになりました。
そうするとリピート率もわかるようになり、リピートしていない人に向けてもう一回招待してみようと割引チケットの案内メールを送るなどのアクションがとれるようになりました。
その結果、去年初めてJ1のスタジアム来場者が平均2万人を突破しました。悲願の目標達成に貢献出来てすごく嬉しかったです。
それ以外に、Jリーグの公式アプリがあるのですが試合に行くと「チェックイン」ができてメダルが貯められます。メダルが溜まるとガチャが引けて、ペアチケットが抽選で当たったりします。
こういったアプリを使った活動も促進しています。
オンライン観戦の影響について
Q、コロナ禍での影響はどうですか?
A、緊急事態宣言でリーグ戦は中断していました。お客様を入れて試合を再開したのは7月10日でしたが、その間に、無観客試合もありました。入場者制限もあったので、チケットが売れなくなりました。そこで、
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どう楽しんでいただくか
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チケット販売に代わる収益をどうするか
という点でデジタルの活用に期待が高まりました。
Jリーグを見るDAZNをご存じですか?
注目試合は、たまに民放で放映されますが、Jリーグの全試合は基本的にDAZNによる独占配信です。
ただDAZNで見て頂くだけではクラブにはチケットに代わる収益は入りません。
では収益化をどうするかというと、“一緒に見よう!企画”としてクラブが映像配信ツールを使って、選手が試合前後に登場してコンテンツを配信したり、<投げ銭サービス>を導入したりしています。
<投げ銭サービス>は、パフォーマンスの素晴らしさやクオリティを称賛した時に少額の寄付をするようなサービスで、YouTubeなどでもたまにみられますよね。それを色んなクラブが始めました。
これまでJリーグでは、ファン・サポーターの皆様に対するデジタルサービスは先進的ではなかったのですが、コロナに直面してデジタル化が活発になりましたので、その点ではポジティブに受け止めてます。
並行して、入場制限が解除されたらスタジアムに戻ってきてもらおう!という活動もしています。
Jリーグの試合は、ホーム側とアウェイ側で各2試合あります。実は意外に知られてないのですが、ホーム側で開催されたチケットの収益は、ホームチームに全部入りますがアウェイチームには入りません。
でもコンテンツ配信などのデジタルサービスにより、アウェイ側にも収益が入るなど、コロナによって変化してきました。
DAZNは基本的にはサブスクです。試合がなかった時は放映がないので解約が増えました。
DAZNとJリーグの契約は基本的にクラブに配分されます。
色んな配分の計算がありますが、DAZNとの契約が解除されてしまうとクラブに放映権が入らなくなり、収益源が減ります。
そのためファン・サポーターの皆様に対してDAZNに加入していただこうという取り組みも強化しています。
Jリーグの視聴について、これからの取り組み
今、テレビでスポーツ放送が少なくなり、自分の好きなジャンルをサーチして視聴する流れになってきています。
これまでは、<スタジアムに行ってサッカーを観て好きになる→DAZNに入る>という流れだったのが、コロナ禍でスタジアムに行く機会が減るとDAZNに送客できなくなってしまいます。
今後は、<サッカー関連のコンテンツに触れて興味を持ってもらう→DAZNのトライアルをしてもらう→サッカーの試合を観る→スタジアムへ誘導>という流れに持っていこうと議論しています。
また選手がYouTubeチャンネルを始めたり、メディアを通してサッカーに触れる機会をつくっていく事なども今後の課題です。
今後に向けて
去年に比べるとスタジアムの来場者数が40%くらい減っています。
コロナ禍で出かける機会がますます減ってきているので、「去年来場回数が少なかった方で、今年一度も来場されてない方にもう一度スタジアムへ戻ってきてほしい!」という取り組みをしています。