公開日:2021年3月16日

更新日:2021年3月16日

★このコラムは、Voicyをテキスト化し一部抜粋したものです。

今回は、以前アスリートと一緒に放送を振り返るという企画で出演頂いた山田さんに、トライアスロンでのスポーツにおけるデータ活用についてインタビューした記事です。

 

自己紹介

山田 陽介 YOUSUKE YAMADA
所属:奈良県トライアスロン協会
登録地:奈良
株式会社ジール 勤務

パラトライアスロン(弱視)で2020東京パラリンピック出場を目指している、奈良県トライアスロン協会所属、株式会社ジール勤務の山田陽介です。
私は、中学3年まで何不自由のない生活を送っていましたが、中学の秋、何の前触れもなく視力が急低下。レーベル病と診断を受け、視野が狭くなる視覚障がい者(弱視)になりました。
高校生で障がい者競泳をはじめ、アジア大会日本代表として出場した後、2018年の12月頃、22歳でパラトライアスロンと出会いました。

 

一般的なトライアスロンとパラアスリートのトライアスロン

基本的に、大きな違いはありません。三種目の競技を行うスポーツで、スイムからバイクへ、バイクからランへといった流れは同じです。
ただ、その流れの中で内容が異なる点は、全盲、弱視問わず、競技中は<ガイド>と呼ばれる晴眼者と共に、スタートからゴールまでの流れを、一緒に行うというルールがあります。競技の三種目は、同じガイドが付きます。
トライアスロンは、目以外に障害を持たれた方もいらっしゃいます。その場合、クラス分けがあります。個人に振り分けられたクラスの中で、競っていきます。

国際大会のルールで、視覚障害クラスでは約3分20秒差のルールがあります。全盲選手が先にスタートし、弱視選手が遅れてスタートします。表彰台では、クラスが違っても結果は同じカテゴリーとして扱われます。そのため、弱視選手はより実力が求められます。

競泳からトライアスロンに転向したきっかけは、2018年当時、成績が思う様にいかず、今後のことを考えている頃に、たまたまパラアスロンの関係者の方と出会いました。
パラ競泳で結果を残していきたい気持ちもありましたが、新たな挑戦、新たな出会いにかけてみようと、トライアスロンに挑戦しました。良い結果や、実績を残し、パラリンピックの選手候補に近づけるように日夜練習に励んでいます。

 

パラリンピック選手の選抜

水泳や、陸上の様に標準タイムが設定されているわけではなく、パラトライアスロンは、年間を通して、成績や各大会のポイントを獲得しながら、その合計を元にパラリンピック日本代表というものが選抜されます。
アジアの中で表彰台に立ち、その次にヨーロッパや、アメリカの大会や、その他の大会で表彰台に立てるぐらいの結果、もしくはそれ同等の実力を残すことができれば、選抜される確率は上がるためそれが1つの目安になっています。
私は、トライアスロン競技ではまた表彰台に立つことができておりませんので、今はそこに立つことが目標です。

 

練習について

先日、高地合宿を行いました。合宿では、三種目の強度トレーニングを行いました。低地に比べて酸素が薄いので、低地ではそこまできつくないトレーニングも、高地ではきつく感じたり脈が上がったり、身体への負担はかかります。
練習時間は、どの競技も1日平均1時間~2時間で、種目によっては練習メニューをコーチが組む場合もあれば、自分で調整する場合もあります。
苦しいトレーニングでのモチベーションを維持する方法は、一緒に練習する仲間や、ライバルの存在を考えながら練習に取り組むことです。

高地トレーニングは心肺能力だけではなく、精神面のトレーニングも重要になります。
合宿中、色々な選手や、ガイドさん、スタッフさんと接する中で、自分のメンタルの弱さを実感しました。練習ひとつとっても、自分ではできると思っていても、更に上の練習をしている選手もいますし、考え方の甘さに気づくことが多々あります。
そんな時、「あーダメだ!」とあきらめるのではなく、気づきをきっかけとして、考えや気持ちを改めて次の練習で活かします。
そういった面で、心身共に大変鍛えられるスポーツ競技だと思います。

 

自分を振り返るときの工夫

ひとつは数字を見ます。日々のトレーニングでのタイム記録を把握することが、目安になります。そのため、数字はこだわっています。
次に、アドバイスを受け止めることです。自分では見えない部分をカメラに収めてもらったり、客観的に判断してもらったり、アドバイスは口頭で受けて、自分の頭の中に取り込み、イメージとマッチさせる作業をしています。

 

練習の効果を高めるデータ活用

スポーツ界でもデジタル化が進んでいます。例えば、ラグビー選手のユニフォームにGPSがついていて、練習中に選手が走った距離を測定したりしています。私たち選手のデータ活用法は「GARMIN」という腕時計タイプの測定機器を使っています。
もう一つは、上下運動を測定するためにベルトタイプの機器を胸につけて、腕時計と連動させています。

合宿中に行ったデータ収集は3つあります。

●一つ目は、トレーニングの前後で何度も耳たぶから採血し、尿酸値を測定
 合宿前後で尿酸値を比較し、ひとりひとりに合ったトレーニングのメニューを組むためです。

●二つ目は、脱水症状を調べるため検尿
 自覚症状だけでは分かりにくい水分量を、数値化しました。

●三つ目は、ストレスの値(酸化ストレスと抗酸化ストレス)を測定
 このテストにより、リカバリー力がわかります。

研究チームスタッフから個別にフィードバックを受けた際、合宿期間中、全選手、全スタッフの中で、私の数値結果が、一番良かったそうです。私の身体は、特にリカバリー力が高いという事がわかりました。その日のトレーニングの翌日には、疲労がリセットされて、新たなトレーニングを行える身体だと判明しました。
この数値は、オリンピックパラリンピック選手に並ぶ結果なので、「今行っているトレーニングや、食生活や、日々の習慣を変えずに引き続き行いましょう!と、研究チームのスタッフから、嬉しいコメントを頂きました。

 

今後の抱負

合宿で得たトレーニング結果や、情報が自信に繋がりました。
引き続きデータを活用しながら、大きな大会で表彰台に乗れるように、今はひとつひとつスモールステップで、結果を出していけるようにトレーニングを続け、また、オリンピックでパラリンピック日本代表に選ばれるように頑張っていきます。

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