★このコラムは、Voicyをテキスト化し一部抜粋したものです。
今回は、株式会社すごい改善の吉田拳さんにインタビューしました。
日本で一番売れているExcelの書籍、シリーズ累計36万部を突破した『たった1日で即戦力になるExcelの教科書』や、Excelのセミナーは、10年間にわたり毎週400回開催・3200人が受講したというExcel界のレジェンドです。
自己紹介
株式会社すごい改善の吉田拳と申します。
会社名にインパクトを受けられたかと思いますが、社名の由来は、「すごい会議」というベストセラーの会議術の本が出ていて、面白いなと感じていました。また、会社を始めるときにExcelで業務改善をする中で、お客様から「すごい改善だね!」と言われるので、そこから決まりました。
サラリーマン歴10年、これまで4社を経験しました。Excelとの出会いは、最後に勤務していた「メルシャン」というワインの会社にて、Excelを使ってマーケティング分析をする担当になりました。最初は上手く操作ができず、あまりに不出来だった為に試用期間中にクビのピンチに直面しました。そこから奮闘したところ、時間短縮と工費削減がこんなにできるんだ!という面白さに気づき、そのうち社内から相談も入るようになりました。
また趣味で投稿していたAmebaブログにExcelに関する記事をたくさんアップしたところ、アクセス数やフォロワー数が増えだしました。それと同時に、自分はサラリーマンに向いていないなと思い始めて、起業を考えるようになりました。
起業して
起業をするにあたり、どんな業務にしようか考えたところ、ブログの人気も出てきたし、Excel に特化したサービスでコンサル業務を始めました。色々なご相談を受けると、個人と法人では分野が多少異なることがわかりました。個人の方からは、業務の中でExcelをもっと効率化したい、スキルアップしたいというご相談を多く頂きます。
法人の場合は、業務の効率化とコンサルティングに関してのご依頼を頂きます。
最近増えてきたのは、マクロを作成して納品する様な作業代行です。Excelを一から学ぶのも大事ではありますが、そこに時間をかけるよりも、作業部門は外注へ出したいというお客様からのお声が多いです。
お客様のご要望は、「とにかく業務を効率化したい」という抽象的なご相談から始まります。
その後、具体的な話を進めて行きます。Excelの研修を行ってスキルアップをしたり、Excel業務の棚卸をしたり、作業効率のためのマクロを組んで納品したり、様々なケースがあります。
ビジネスの面から考えるとそれらはスポット売上になります。
その点、作業代行であれば、サブスクリプションになりますので、継続的な取引ができます。
こちらとしてもメンテナンスしやすく、お客様には、初期投資を抑え目にしながら、作業効率を上げるマクロでレポート形式にして提出できる段階まで作り込みますので、導入効果を実感して頂けるのではないかと思います。お客様ご自身がマクロを組むよりも、こちらで作成して、ご要望があればその都度回収して行く方が、メンテナンスは楽です。
費用面を考えるとExcelを用いて内製化したいというお声もありますが、Excel業務は属人化しやすいので、作業担当者が辞められた場合、引継ぎやスキル面を考えると、外注してしまった方が安心だと思います。
引継ぎは多くの時間がかかりますし、専門的な知識が必要になる場合もありますので、専門業者に託した方が楽な場合もあります。
すごい改善事例
セミナーを受講された個人のお客様からは、後日、メールを頂くのですが、業務改善プロジェクトのために立ち上がってリーダーとなり、セミナーで学んだことを生かし、成果をあげられて社長賞まで受賞された方もいらっしゃいました。
また、ある災害地域で受講された方は、災害対応のExcel作業が非常に煩雑だったのですが、教わった関数などのテクニック、「Excel作業効率化作戦」という言い方をしているのですが、それを参考に行ってみたら、円滑に処理が進んだというメールも頂きました。
法人のお客様からは、中小企業のお客様が多いのですが、ある社長さんから「Excelをどう使ったら会社は良くなっていくのだろう?」、「データ分析をして売上をアップさせたいのだが、どうしたらいいかな?」という質問もよく受けます。
そういったご相談を受けた時、私はExcel以前の話にもっていきます。
Excelを使う上で、段階を踏んで考えなければならないことが3つあります。
セミナーでは二番目を教えます。
-
一番は「何を作るか」
-
二番目に「どう作るか」
-
三番目に「どう活かすか」
これを実現したいからこうすればいいよという方法を教えますが、いくら効率化しても出来上がった成果物に価値がなければ意味がないのです。
そのため、セミナーでは何を作るかに焦点を当てて進めます。
法人向けのコンサルの話をしますが、その時に、例えば売上アップをしたいなと言っても、鵜呑みにせず、御社の売上ではなく、財務的な面で預金残高を見て行った方が良いのではないでしょうか?と提案するわけです。
そうすると作成する目標が変わってきます。売上アップだと売り上げだけの分析になりますが、預金残高に目標を設定すると売上と同時に経費も考えなければならないので、キャッシュフローの数字を見る必要があり、そういったExcelを組んでいくわけです。
目的を間違えると、効率的にExcel作業が出来ていたとしても、その会社の目的にはアンマッチとなってしまうので、価値がなくなってしまいます。この場合、業務コンサルの部分まで踏み込んでいるので、Excel以前の問題でしたが。Excelを使う前に何を作るかを見定めることによって、本質的な課題を解決できたという企業の事例もありました。
経営視点でのExcel
私の会社が今11年目に入りました。
小さい会社なので、資金面など苦労し、いろんな勉強もしました。
その中でExcelと管理会計の分野に知見が深まってきて、経営数字にも強くなりました。
そんな経験をしてきた中で、いろんな社長さんから相談を受けたときに、決算書を見てアドバイスをします。
「売り上げをアップするよりも、貯金残高を上げましょう。借り入れは弊社では管理外なのでどこかに任せて、借入した上で、きちんと管理ができるExcelを作ってみませんか?」
という様に。
Excelだけ出来てもダメですっということをTwitterなどでよく書きます。
マニアックな知識の追求自体は、趣味としては良いと思いますが、仕事の成果につながるのか?という点を突き詰めると仕事の責任としてはちょっと考えた方が良いと思います。
例えば、給料はどう決まるかというお話をしますと、限界利益から分配するわけです。
売上が会社の最終的な計算書ですが、営業経費をなるべく少なくして会社に残すお金を増やそうという観点もあります。
一方では、管理職による詭弁があり、「君には給料の3倍の経費が掛かっているから、3倍の売り上げを上げる必要があります」とよく言うのですが、そこには嘘が含まれています。
その人が退職したからといって3倍の経費は減らないわけです。
もしそういった場面になったら、ロジカルに話し合う知識を身に付けておくと良いかと思います。
売り上げをアップに関してのExcel作成において、経営の視点で仕事の見え方が変わってくるのだと思います。
利益を出す必要性、なぜ黒字があって赤字があるのか、その仕組みは極めてシンプルロジックで、個人の家計簿になぞらえたらわかりやすいですね。
そういう感覚を身に付けると、将来的な視野が広がっていくと思います。
Excelに向く業務、不向きな業務
規模が一定の範囲を超えてくるとExcelではなく、共有の部分が重要です。
Googleスプレッドシートですと、オンラインでシートを共有できるので、はるかに優れているケースもあるわけです。
例えば、友人の話なのですが、彼はアジア全体を統括する外資系企業の社長で、数字を見るときに、わざわざExcelを開いてチェックするタイプの人ではなく、ダッシュボードを開いてリンクをクリックすれば、すぐに使える状態が望ましいという考えなのです。
ExcelファイルやPDFファイルは共有しづらいため、そういった場合は、ExcelよりもBIツールの方が圧倒的に使い勝手は良いと思います。
その分岐点は、やはり規模だと思います。
データベース作成でkintoneにした方が良い、という意見もいっぱいあって、その時に規模によっては、そこに固定費を割けるかどうかという観点が1個あるわけです。
Excelだけでなく、RPAという選択肢もあったり、Excel VBAもある。
ではどれが正解かというと、一概に言えませんが、1つの分岐点は固定費です。
BIツールの導入には、費用がかかります。
大企業になってくるとファイルの共有が大変になるので、リンクで見られるようなBIツールが合っていると思います。
一方、費用をかけてセールスフォースを導入したけど、使いこなせない現状があります。
様々なテンプレート分析などが搭載されていますが、どれを使ったらよいのかわからず、使いきれずに撤退してしまうケースもあります。
結論として、最初の目的として何を見たいのか?を明確にしてからでないと、ツールでは解決できないと思います。規模感と共有性がポイントだと思います。
また、本当に必要な関数は全体の数パーセントなので、それをうまく活用できれば良いと思います。
極限のシンプルさとわかりやすさ
セミナーでは、みなさんがつまずきやすいポイントを、徹底的に排除したいという思いがあります。
セミナーの冒頭で、絶対参照をご紹介します。
絶対参照に関してご存じの方は、ご理解いただけるのですが、初めて聞く方に「大事です!」と伝えてもその理由がわかりません。
そのため、よく使われる問題提起として、ユーザーは〇〇に関する知識が浅いため、こういう点で苦労しやすいです、と例を出します。
先ほどの例の、絶対参照に当てはめてみると、絶対参照に関する知識が薄いので、式をコピーしたところズレが生じてしまい、1つずつ直さなければならないという地獄にハマってしまうわけです。
その例を聞いて、確かに自分もそうかもしれないと思ってもらったら、それでいいのです。絶対参照を学び、実業務で活かせれば解決です。
10年前から始まったセミナーでは、こういった具体例を体系的にお話し、スムーズにご理解頂けるようなストーリーを組み立てています。
Excelの知識をすべて覚えるのではなく、ある程度絞り込み、「ここだけ覚えれば大丈夫です!」という点を伝えます。
その結果、わかりやすい説明だと、みなさまからご評価頂けるようになりました。
最近、データベースファーストという言葉が出てきました。
データを活用したり、集計したり、分析をする。ただし、これはデータの蓄積が前提です。
あとはExcel関数のうち、VLOOKUP関数や、SUM関数、IF関数など、たった5%~10%だけを使って簡単に集計ができます。
それを行うには、そのデータベースファーストを守りましょうというシンプルさが大事です。
シンプルに済ませるには、データを整えておくことが重要です。
セミナーも400回行ってきましたが、基本的な内容を積み重ねてきましたが、第1回と400回目では、多少説明の仕方が変わってきました。
当初は、プログラミングで要件定義とか業務手順の整理などの言い方をしてきましたが、最近は「Excelがどう動いてたらいいのかストーリーを書きましょう」、という様にユーザー目線になりながら、説明するようになりました。
10年で色んな気付きを得ながら説明方法も進化したと思ってます。
セミナー継続の秘訣
10年間続けられたモチベーションは、会社を経営していくという面もありますが、セミナーや書籍がご好評いただき、皆様にご支持頂けているのが、純粋に嬉しいからだと思います。
Excelで社会貢献というと大げさかもしれませんが、皆様のお役に立てる限り続けていきたいです。
株式会社すごい改善