このコラムは、Voicyをテキスト化し一部抜粋したものです。
今回は株式会社LX DESIGN の代表の金谷智さんです。教育業界のDXについてのインタビュー回の記事です。
LX DESIGNでは『複業先生』というサービスを提供しています。
本記事の後編はこちらです。
<後編>データが子どもたちの未来の解像度を上げる テクノロジーを使った教育事業
自己紹介
富山県出身の32歳です。
民間企業から小学校の先生に4年間務めた後、4年前に起業して今は『複業先生』という複業で先生をしたい人と学校をつなぐ
教育特化型 外部人材のマッチングサービスを展開しており、学校のDXを進めています。
我が家は代々教員の家系だったので、私は小さいころから先生になりたいと思っていました。先生になってからは
『教員として新しいインパクトを持たせる何か』を追い続け奮闘したのですが、その一歩目がわからなくなってしまい、
結局この道ではなく、自分が今できることを追い求めて起業に至りました。
今の学校教育はアップデートが遅れており、ICT化も進んでおらず、孤立しているように感じます。学校の世界は気づかずにいる
ケースも多く、インパクトを出そうとしても出せないため、インターフェイス部分を私たちがサポートさせていただいております。
テクノロジーを使った『複業先生』のサービス
『複業先生』とは、学校あるいは教育施設の先生が、教育に関わりたい多様な民間人材に授業をお願いできる学校の関係人口創出
のための外部人材活用サービスです。
年間を通して定期的に活用いただく学校もあれば、年に一度だけ依頼しているという学校もあります。
学校の先生たちが一番使いやすい形で社会と繋がり、学ぶことをサポートしているサービスです。
現状の課題は、『複業先生』の講師が児童・生徒の前で話をする時、目の前の人たちが一体どういう人たちで、どんな話題を提供すれ
ば彼らのためになるか、ということが分からない点です。
学校の外部の方たちと一緒に学ぶ世界観を作るには、その情報が圧倒的に不足しています。
それを解決するために『複業先生』の授業の中では、
生徒たちが
・どういったことを学びたいのか?
・どういったことを感じているのか?
・どういったことに興味があるのか?
という点を複業先生に見える化し、情報として格納されている状態であることが必要不可欠だと思っています。
現在、先生向けのページも開設し、登録も増えています。今後はさらに複業先生が「過去にどういった学びをしてこられたのか?」
という情報を蓄積していくことで、複業先生と授業を受ける生徒たちにとってお互いが設定値を見つけやすくなると考えています。
その結論に至った理由は、ある程度内情が分かっている自分の母校で授業を行うケースと、全く知らない地域の学校で、何も情報が
ない状態で授業を行うケースを比較した時、パフォーマンスや授業の仕方に大きく違いがあったからです。
学校の先生であればわかってくださると思うのですが、他の学級先生のフォローなどで別のクラスに行った時の、あの独特の空気感です。
クラスの生徒それぞれにはどういう力学が働いて、どこをケアしてあげたらよいのかが分からないので、その点を改善出来たらもっと
授業がやりやすくなると思いました。
更に医学部進学を目指す生徒には、現役のお医者さんが話をしてあげる。
デザイナーを目指す生徒には、現役のデザイナーさんが話をしてあげる。
というように、生徒が目指す職業に関連する複業先生を配置するなど、文脈が揃っていれば揃っているほどお互いのストレスはありません。
そのマッチングの制度とそこに溜まっている情報のボリュームこそが、このサービスの規模であるということに段々気付いている感じです。
金谷さんが金髪である理由
もともと野球部出身なので、私の標準装備は坊主・黒髪です(笑)。
生れた地域は国際色が豊かというわけではなく、どちらかというと田舎でした。黒髪が一般的な社会に生きてきたので、ある種
「特異な世界」の金髪の人とは、むしろかかわりたくないと思っていました。
ある学校に訪問した時、高校時代から金髪にしている生徒や場合によってはせざるを得ない生徒もいました。その生徒たちと同じ
土俵に立つには、と考え、金髪で授業を行ったところ非常に共感値が高かったのです。そのことに気づいてから、『彼らが見てい
る世界とも同じ世界を体験した方がいい、それこそが自分ができる唯一のアプローチだ』と決心し金髪を続けることにしました。
金髪にしてわかったことは、偏見により失う機会がたくさんあったという事です。また先入観によって『金髪の人とはかかわらな
いでおこう』と思われるリスクもありました。しかし、そんな思いを自ら体験することで彼らの価値観を共感することができたの
で、私にとっては大きな学びとなりました。
こういった理由で金髪にした背景を、髪を染めていない進学校の生徒にすると「へー、なるほど」と納得してくれるのですが、逆は
成り立ちません。
黒髪にスーツでカチッと決めて「みんなの人生変えようと思って、こういう授業をしているんだよ」と話しても、本当に届けるべき形
で思いは届きません。仮に私が彼らに歩み寄れなかったとしても、歩み寄ってくれる先生は確実にいますし、その先生へパスを渡して
いくことが私の仕事だと思います。最近はそういう先生が増えてきているので、そろそろ金髪を引退しようかなと思えるようになって
きました(笑)。
後編につづく…