背景と課題
個別最適化された基幹システムをSAP S/4HANAで統合
問題は既存BIツールの移行
管理部 経営企画課 ICT企画グループ 主務
池田 直嗣氏
Always Listening(すべての人に、いちばん良い音を)のBrand Identityのもと、音響機器分野の可能性を拓くオーディオテクニカ。世界で活躍する同グループでは現在、売上の60%以上を海外が占めている。ライフスタイルや社会構造が大きく変化する中、同グループがさらなる成長を果たすためには、データの活用が欠かせない。オーディオテクニカ 取締役 管理部 ゼネラルマネージャー 小柳 益男氏は、同社の情報戦略についてこう話す。
「海外も含めグループ全体で情報をつなぐことにより、収益性や生産性の改善、競争力の強化、企業価値の向上を図っていくことが、当社における情報戦略の重要なテーマです。その第一段階としてSAP S/4HANAを導入し、販売・生産・会計など国内の個別最適化されたシステムをクラウドサービスMicrosoft Azure上に統合することにしました。ERPの選定では、将来的な海外グループ会社への展開とともに、運用負荷の軽減や投資の平準化を図るためにクラウドに対応している点もポイントとなりました」
しかし、SAP S/4HANAの導入で問題となったのが、営業成績や販売実績、ABC分析など主に営業部門が利用している既存BIツールの移行だった。「既存BIツールは販売管理システムと連携し、SQL Server のBI上で構築されていました。非常に使いやすく、営業部門に定着していたことから、SAP S/4HANAの導入後もそのまま使えないかと考えていましたが、多くのコストと時間を要することがわかりました」と、管理部 経営企画課 ICT企画グループ 主務 池田 直嗣氏は振り返る。
採用のポイント
SAP S/4HANAのデータをSQL Serverに抽出
SAPのアドオン開発不要、主体的運用を実現
既存BIツールの移行に関する問題点について、管理部 経営企画課 ICT企画グループ 主務 有田 好輝氏は説明する。「既存BIツールでSAP S/4HANAのデータを利用するには、400個のインターフェースが必要でした。またSAP S/4HANAにアドオン開発する場合も同様に時間と工数を要することに加え、既存BIツールは非定型帳票だったためアドオンでの対応は難しい。さらに社内にSAPのノウハウがある人材もいなかったことから、導入後にアドオンを追加するたびにベンダーに頼まなければならない点もデメリットでした」
打開策が見つからず、有田氏はBIに豊富な知見を有し既存BIツールも手がけたジールに相談したと話す。「アドオン開発をすることなく、既存BIツールと同等の使いやすさ、SQL Serverに蓄積したデータ活用、さらに社内での主体的な運用の実現といった要件をジールに伝えました。ジールから、電通国際情報サービス(以下、ISID)の『BusinessSPECTRE』を活用したソリューションの提案がありました」
管理部 経営企画課 ICT企画グループ 主務
有田 好輝氏
SAP ERPのデータ活用では、SAP独特のデータ構造を読み解くことが大きな課題となる。BusinessSPECTREは、SAPのデータ構造を読み解くエンジンが搭載されており、アドオン開発に必要だった特殊データ対応をノンプログラミングで実現できる。また、SAP ERPに格納されたデータをSQL Serverに抽出し、帳票作成やデータ分析なども自在に行える。「まさに当社が求めていたソリューションでした。またSAPの各モジュールに対応したテンプレートが用意されており、構築・運用業務の負荷も軽減できます。さらに、ユーザライセンスではなくサーバライセンスであるため、流動的なユーザ数に対しコストの最適化も図れます」と有田氏は続ける。
導入のプロセス
ジールの技術支援により導入に要する業務負荷の軽減と現場での使いやすさの向上を実現
2018年12月にSAP S/4HANAと合わせて「BusinessSPECTRE+SD(販売管理)/MM(在庫・購買管理)テンプレート」の構築もスタートし、2019年9月に同時リリースした。「BusinessSPECTREの構築パートナーには、これまで培った信頼と実績からジールを採用しました。ジールの技術支援のもと、テンプレートを利用することで労力を費やすことなくスムーズに導入できました。BusinessSPECTREの構築期間は実質6カ月ですが、単独の構築であればもっと短期間に構築できたと思っています」(有田氏)
ICT企画グループの負荷軽減とともに、現場での使いやすさ向上の観点から、ジールの技術支援は非常に有益だったと有田氏は高く評価する。
プロジェクト推進・技術支援のポイント①
ジールが代替案を提示し現場との調整をサポート
「プロジェクトのスタート当初、営業部門のキーユーザ参加のもとでフィット&ギャップを実施しました。できないことに対しジールに代替案を提示してもらい、同意を得ながら調整を進めました。またテンプレートにはないけれど、どうしても必要な項目に関してはジールに作成を依頼しました」(有田氏)
プロジェクト推進・技術支援のポイント②
導入当初の重要課題をジールの技術支援で解決
「SAP側でうまく見ることができなかった営業担当別の予算対比データに関して、ジールに依頼し2週間でBI側に反映できました。営業活動に不可欠なデータだったため、本当に助かりました。また過去の売上データも移行してもらうことで、現場はより使いやすくなりました」(有田氏)
プロジェクト推進・技術支援のポイント③
ジールとISIDの一体化したサポート
株式会社ジール ビジネスアナリティクスプラット フォームユニット マネージャー
中嶌 総
「ジールとISIDが一枚岩になってサポートしていただき、心強かったです」と有田氏は話す。プロジェクトに携わったジールの中嶌 総は、「技術支援は、要件定義から構築、運用までISIDと密に連携して行っています。また、データの取り込みに関するご要望にも迅速かつ容易に対応できるなど、製品にもアドバンテージがありました」と付け加える。
導入効果と今後の展望
営業部門は日常的に利用
SQL Serverを使って帳票作成
今後のテーマはデータ活用の拡大
2019年9月、BusinessSPECTREによるBIソリューションが本稼働し、営業部門を中心に約300名が利用している。「Excelベースで既存BIツールと使い方が変わらないため、社内で日常的に使われていることを確認しています。またSAPに詳しくないICT企画グループのスタッフも、SQL Serverを使ってユーザの要望に対し新しい帳票を作成しています。まだ活用しきれていないデータの掘り起こしや、項目の追加など使いやすさのさらなる向上が今後の課題です」(池田氏)
CO(管理会計)/FI(財務会計)などBusinessSPECTREのさまざまなテンプレートの導入も検討し、データ活用シーンを広げてきたいと有田氏も話す。
今後の展望について小柳氏はこう話す。「グループ全体の情報をつなぐプラットフォーム構築へ、今後も当社は力を注いでいきます。全社で共有するための情報提供の推進と、共有された情報を利用する取り組みの両面でデータ活用をしていくことにより、業務プロセス改革や新たな価値創造に結び付けていきたいと考えています。BusinessSPECTREのポテンシャルとジールによる技術支援には、大いに期待しています」
Always Listeningの実現に向けたオーディオテクニカの取り組みを、ジールはBusinessSPECTREと技術支援の提供を通じて支えていく。