ジールの提案型・アジャイル型アプローチによってデータ分析基盤を構築し、事業部門の自律的なデータ活用を支援
小田急電鉄株式会社
お客様の要望
テナント誘致や交通広告の検討で活用していた列車の乗降データの取り扱いについて、事業部門自らがデータを活用できる基盤を構築したい
駅の利用者数や増収増減などのデータ収集や分析をExcelベースで行っていたため、分析の精度に課題が現れていた
オープンデータの活用で、担当者個人のスキルによるところも多かったため、精度や品質が均一ではなく、データ収集や加工に時間を要していた
ZEALにした決め手
既存のデータ分析基盤の構築・保守をジールが担っており、社内のシステム状況を把握できていたため、実績に基づく信頼感があった
事業部門の意見を反映したプロトタイプを作成して改善していく、ジールの「提案型」「アジャイル的」アプローチにより、PoCで実践的な要件を固めることができた
ジールが提供するオープンデータサービス「CO-ODE」により、データの収集・加工・更新の手間を解消、高いコストパフォーマンスが実現できた
効果・実績
事業部門の自律的なデータ分析基盤の構築により、データを活用した業務変革の推進に大きく貢献できた
Microsoft 365との連携で事業部門のデータ活用の拡大に向けて、今後もジールの技術支援に期待
「CO-ODE」の活用で、必要なとき容易に自社データとオープンデータをかけ合わせて分析ができ、分析精度を向上させることができた
背景と課題
事業部門の自律的データ活用が焦点に
通勤・通学や観光の輸送手段として、1日約210万人・年間7.7億人(2019年度)が利用する小田急電鉄。小田急電鉄グループは、「沿線地域とともに繁栄する」という創業時の理念を継承し、沿線エリアの付加価値を高めるべく、駅を中心とした街全体を再開発する沿線事業に力を注いでいる。
2021年4月、小田急電鉄は、開業100周年を迎える2027年までに取り組むべき方向性を示した経営ビジョン「UPDATE 小田急〜地域価値創造型企業にむけて〜」を策定。経営ビジョン実現のステップとして、前半の3カ年を体質変革期、後半3カ年を飛躍期と位置付けた。体質変革期では、すべての事業でDX・共創・ローカライズの3つの発想を徹底し、既存事業の成長や新規事業の創出を図っている。
こうした経営ビジョンのもと、同グループは複数の移動手段やサービスをシームレスに連携するMaaS(Mobility as a Service)など、DXによる新たな価値創造に積極的に取り組んできた。DXをさらに推進するためには、事業部門の自律的なデータ活用が重要なポイントとなる。日常業務の効率化や高度化が、ビジネスのスピードとクオリティを高めるからだ。事業部門におけるデータ活用の課題について、小田急電鉄 経営企画本部 デジタルイノベーション部 課長代理 ICT戦略 担当 水落 大樹氏は話す。
「当グループは、小田原線・江ノ島線・多摩線の3路線を有する鉄道事業を中核に、運輸・流通・不動産・ホテル・飲食など、多角的に事業を展開しています。各事業部門からデータ利用のニーズが高いのが、運輸統括部門が扱う列車の乗降データです。従来、テナント誘致や交通広告の資料として乗降データを利用したい場合、その部門に問い合わせが寄せられていました。そのため、データ提供側と、データを取り寄せる側の両方に手間と時間がかかっていました。一方、鉄道事業部門ではIRの観点で、駅の利用者数や売上などのデータと、その要因を分析し公開するための作業をExcelベースで行っており、精度や分析力が課題として浮き彫りとなっていました」
2019年に、デジタルイノベーション部は、事業部門におけるデータ活用の課題を解決するべく、ユーザ自身で分析やレポートを作成できるセルフサービスBIに注目した。ベンダー2社の支援のもと、セルフサービスBIの環境構築に向けてPoC(概念実証)を実施し、実現可能性の確認とともに構築パートナーの選定を行った。採用のポイントは、事業部門の声を生かしたアジャイル的な提案力だった。
採用のポイント
オープンデータ提供サービスの活用で分析基盤の充実を図る
小田急電鉄が、PoC支援を依頼した1社が、BIやDWHに精通し企業のDXを総合的に支援するジールである。選定した理由について、小田急電鉄 経営企画本部 デジタルイノベーション部 ICT戦略 担当 佐藤 茉奈氏は次のように話す。
「当グループの調査専門部門が主に使っていたデータ分析基盤『OISIS』の構築・保守を行っていたのがジールでした。当社のシステム状況を的確に把握していてインフラへの理解度が高いうえ、迅速なサポート、相談しやすいなど、当社の視点に立って一緒に取り組む姿勢を高く評価していました」(佐藤氏)
2019年から3カ月間、小田急電鉄はベンダーの提案力や技術力、知見をもとに評価項目を設定しPoCを行った。そして2020年3月、同社はPoCの結果をもとに構築パートナーとしてもジールと進めていくことを決めた。決め手は、まさに「一緒に取り組む姿勢」だった。
同社の視点に立ち、汎用性の高いPower BIを提案
さまざまな事業部門が利用するデータ分析基盤となるため、BIツールには汎用性が必要となる。「BIツールの選定では、当グループが日常業務で使っているExcelなどマイクロソフト製品との親和性を重視しました。ジールの提案は、マイクロソフトのBIツールPower BIの利用で当社の要件に合っていました」(水落氏)
ジールの笠間 寛史は、「OISISを構築した経験から、小田急電鉄様はExcel文化であることを感じており、親和性が高いPower BIをご提案しました。Power BIに関しては、小田急電鉄様も強い関心をお持ちでした」と話す。
事業部門の意見を反映したプロトタイプを作成
セルフサービスBIを導入する際、「どこからどう取り組むべきか」、最初の一歩が課題となるケースは多い。「今回のPoCでは、デジタルイノベーション部に加え、運輸統括部門、鉄道事業部門、調査専門部門が参加しました。ジールには親身に相談に応じていただくとともに、PoCにおけるデモンストレーションも、駅の人の動きを捉え、説明も腑に落ちるもので理解しやすい内容となっていました」(佐藤氏)
ジール 笠間は、「当社は、OISISを通じて小田急電鉄様と信頼関係を構築できており、『一緒に考えましょう』というスタンスで 提案を行うことができました」と話し、こう続ける。「事業部門と話し合い、翌週には意見を反映したプロトタイプを作成するサイクルを回す『提案型』かつ『アジャイル的』にPoCを進めました。例えば、乗降データと花火大会などのイベントデータを組み合わせ、駅利用者の増加理由をデータで示す有効性を提示する、あるいは、2018年に完成した小田急線下北沢駅近辺の複々線化に伴う利用者増加データとPower BIの予測データを比較し、複々線の効果を提示するなど、PoCでありながら、プロトタイプで要件を固めていきました」(ジール 笠間)
オープンデータの収集・加工・更新の手間から解放
自社データとオープンデータをかけ合わせることで、要因分析や将来予測が立てやすくなる。「必要に応じて事業部門では、これまでも天候やイベントなどオープンデータを検索し活用していました。しかし、担当者個人のスキルによるところも多かったため、精度や品質が均一ではなく、データ収集に手間と時間を要することも悩みの1つでした。ジールから提案のあった、オープンデータ提供サービス『CO-ODE(コ・オード)』は、当社のオープンデータ収集・活用に関する課題を解決してくれました。必要なときに必要なオープンデータを活用し、分析精度を高めることができるメリットは非常に大きいと思います」(水落氏)
ジールの岩田 夏夢郎は、CO-ODEを提案した理由について話す。「従来、OISISでは国勢調査に加え、気象データを別で購入し利用していました。そのほかにも、オープンデータの活用を想定した場合、コストパフォーマンスや自動連携・自動更新などの面で課題がありました。今回の構築については、ジールが長年培ったデータ活用の知見を生かしたCO-ODEを提案し、気象情報、人口・世帯情報、経済・景気動向、訪日外国人消費動向・出入国数、住宅・土地統計情報、経済・景気動向など、さまざまなデータを一カ所に集約し、データベースなどで扱いやすい形式に加工しデータを提供するようにしています。データの更新も自動的に行われます」
導入のプロセスと今後の展望
今後の利用拡大に向けてジールの支援に期待
2020年3月にジール採用の決定後、コロナ禍に伴いプロジェクトは、一時延期に見舞われたが、改めて2021年7月にキックオフすることができた。
同社のデータ分析基盤は、 Microsoft Azureを利用し、乗降データ、外部イベントデータ、CO-ODEをAzure SQL Databaseで一元管理し、分析サービスAzure Analysis Servicesを使ってPower BIでのデータ活用を実現している。構築フェーズでは、乗降データの前年同月比・同曜比、各種指標の駅間比較、天候と乗降データの比較など、PoCの成果物がベースとなった。また、同社の社内システムとの連携、外部イベントデータやCO-ODEとの自動連携も実装している。2022年1月~2月には、運輸統括部門、鉄道事業部門など4つの利用部門に対し、ジールの技術支援のもとトレーニングを実施。1月はPower BIの一般的な使い方、2月は実践を重視し、Power BIのレポート作成方法や、PoCでジールが作成した帳票の利用方法がテーマとなった。
小田急電鉄における業務部門のデータ分析基盤の概要
その後、2022年2月末にデータ分析基盤の構築が完了している。現在、4つの利用部門に対しアカウントを払い出しているという。「データ分析基盤の構築により、事業部門における自律したデータ活用に向けてスタートラインに立つことができました。2023年1月に、当社も含めグループ会社においてMicrosoft 365をベースとする情報基盤が構築されます。Power BI とMicrosoft 365のSharePointやTeamsなどとの連携により利用拡大につなげていきたいと考えています。ジールにはトレーニングも含め、これからも相談にのっていただきたいと思います」と佐藤氏はジールに期待を寄せる。
そして、今後の展望について水落氏は次のように語る。「事業部門が、乗降データを手軽に活用できると認識することが第一歩になります。Microsoft 365のポータルやTeamsを使って、データ分析基盤を利用する方法や事例、成果などの情報を提供することが必要になると考えています。今後もジールには手厚いサポートと、当社の視点に立った提案でサポートをお願いしたいと考えています」(水落氏)
これに対してジール笠間は、「当社は『CDO ACCERALATOR』を掲げ、お客様のプラットフォーム構築の前段階となる要件や構成の整理から、プラットフォームの活用や人材教育、eラーニングなどのツールを用いた活用の定着化まで、一貫した支援をしています。小田急電鉄様に寄り添うDXへの取り組みを、さまざまな視点からご提案させていただきたいと思います」と付け加える。
次の100年を歩むために「地域価値創造型企業」へと進化していく小田急電鉄。ジールは同社に伴走しデータ分析基盤の利用拡大を通じて、同社のDXによる経営ビジョン実現を支援していく。
ユーザープロフィール
小田急電鉄株式会社
設 立 |
1948年6月1日(前身の小田原急行鉄道は1923年5月1日設立) |
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本社事務所 |
〒160-8309 東京都新宿区西新宿1丁目8番3号 |
事業案内 |
鉄道事業、不動産業、その他事業 |
小田急グループは、『お客さまの「かけがえのない時間(とき)と「ゆたかなくらし」の実現に貢献する』というグループ経営理念のもと、1世紀にわたり沿線地域の発展に貢献してきた。88社(2022年4月現在)からなる同グループは、運輸、流通、不動産などさまざまな事業を展開。次の100年に向け、地域に新しい価値を創造する企業に進化するべく、事業モデルの変革に取り組む。
- 取材にご対応いただいた方 -
小田急電鉄株式会社 |
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経営企画本部 デジタルイノベーション部 課長代理 ICT戦略 担当 水落 大樹 氏 |
経営企画本部 デジタルイノベーション部 ICT戦略 担当 佐藤 茉奈 氏 |
株式会社ジール |
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マルチクラウドデータプラットフォームユニット 第二部 部長 笠間 寛史 |
マルチクラウドデータプラットフォームユニット 第二部 シニアアソシエイト 岩田 夏夢郎 |
小田急電鉄株式会社 |
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経営企画本部 デジタルイノベーション部 課長代理 ICT戦略 担当 水落 大樹 氏 |
経営企画本部 デジタルイノベーション部 ICT戦略 担当 佐藤 茉奈 氏 |
株式会社ジール |
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マルチクラウドデータプラットフォームユニット 第二部 部長 笠間 寛史 |
マルチクラウドデータプラットフォームユニット 第二部 シニアアソシエイト 岩田 夏夢郎 |
製品ソリューション紹介
Microsoft Azure SQL Database / Microsoft Power BI / CO-ODE
●Microsoft Azure SQL Database
Microsoft Azure SQL Databaseは、フルマネージドSQLデータベースを使用し、高可用性、チューニング、バックアップなどの複雑な運用を不要とします。最新のSQL Serverの機能を使用しアプリケーション開発を加速させます。
●Microsoft Power BI
Microsoft Power BIは、業務部門が主体となってデータ分析を行えるセルフサービスBIです。データがわかりやすく視覚化され、今まで得られなかったビジネス上の課題を素早く発見することができます。
●CO-ODE
CO-ODEは、ジールが長年培ってきたデータ活用の知見を生かし、気象情報や人口・世帯情報、家計調査情報など、国や自治体が公開しているオープンデータを、分析しやすいように加工し配信・提供するサービスです。データ収集・加工・更新の手間がなくなり、誰でも容易にデータの取得・活用が可能。自社データにオープンデータを掛け合わせることで、データ分析の高度化を実現できます。
お客様が実現したいことに寄り添ったご提案をいたします。
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