背景と課題
さらなる事業の成長にはデータの活用が必須
2系統で運用されていたデータ基盤の刷新が急務に
「UNITED ARROWS」「BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS」「UNITED ARROWS green label relaxing」等のストアブランド運営でその名を広く知られ、セレクトショップの草分けとして業界最大手の地位を獲得しているユナイテッドアローズ。近年では、OMO(Online Merges with Offline)戦略の強化にも注力。ハウスカードプログラムの刷新に加え、自社ECアプリのリニューアルなど、実店舗とオンラインストア、さらにアプリが一体となった販売体制の構築を推進している。
そうしたOMO戦略の強化をはじめとした、さらなる成長に向けた施策を打ち出していくために不可欠だったのが、データの活用だ。同社では、経営会議のためのレポート作成や、週次/月次の店舗/製品別の売上、キャンペーンなどのマーケティング施策のKPI測定等、様々な場面でデータの活用が行われている。ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 シニアマネージャーの江田 拓司氏は、「ビジネスの現況をタイムリーに把握して経営戦略の策定に役立てるだけでなく、主力である店舗販売と急成長を遂げているECサイトの垣根を取り払い、さらなる顧客体験を高めるマーケティング、営業活動を推進していくためにも、データの活用は欠かせません」と説明する。
株式会社ユナイテッドアローズ ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 シニアマネージャー
江田 拓司氏
株式会社ユナイテッドアローズ ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 シニアマネージャー
中井 秀氏
ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部 シニアマネージャーの中井 秀氏は「そのためにも、データ基盤の構築と強化を継続的に取り組んできました。そうした中で、急務となっていたのが、現場のユーザー自らが必要なデータを取得、活用することで迅速な意思決定を行えるようなデータ基盤の実現でした」と強調する。
これまで同社ではオフラインデータを管理しているオンプレミスのデータ基盤と、オンラインデータを取り扱うクラウドデータ基盤の2系統のデータ基盤を構築・運用していたが、様々な課題が浮上していたという。
「1つは、オンプレミスのデータ基盤は外部データの取り込みが難しく、かつ、他ツールへのデータ転送、共有が難しいことでした。データ分析自体はオンプレミスのデータ基盤で行えていたものの、マーケティング活動での利用など、分析以外の用途で他ツールやサーバにデータを移行しようとしても、容易に対応できなかったのです」(中井氏)
そうしたことから、クラウド型のデータ基盤を別途構築し運用を行っていたが、「エンタープライズ向けのデータ基盤として必要となる管理機能が不十分であったことに加え、負荷の高い処理に耐えうる性能を有していないこと、データの抽出に際してプログラムを記述する必要があることも解消したいと考えていました」と中井氏は話す。
採用のポイント
現場目線に立った提案を評価し、DWH導入の伴走パートナーにジールを選定
これらの課題を解決するため、ユナイテッドアローズは新データ基盤の構築を決断。そこで掲げられた要件が、「効率的なデータ収集・蓄積・統合」「外部へのデータ出力機能の向上」、そして「従量課金によるコストの削減・平準化」である。その実現に向けて同社が選択した手段が、オンプレミスのデータ活用基盤をクラウドス型のデータウェアハウス(DWH)へと移行することだった。
複数のDWHサービスと導入を支援するベンダーを比較検討した結果、最終的に新データ基盤のプラットフォームとして選択されたのが、クラウドベースのDWHサービスの「Snowflake」である。そして、その導入と構築のパートナーとして選ばれたのがジールだった。Snowflakeを選択した理由について中井氏は、次のように説明する。
「特定のクラウドサービスに依存しておらずマルチクラウドでも利用できること、各種BIツールとの親和性も高いこと、そして、フルマネージド型サービスであることから、運用負荷を抑制できることが採用の理由となりました」(中井氏)
株式会社ユナイテッドアローズ ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部
福地 あゆみ氏
また、導入を支援するパートナーの選考ではプロジェクト関係者による評価を実施したが、その中で最も評価点が高かったのが、ジールだった。ジールを選んだ理由について、ITサービスプラットフォーム部の福地 あゆみ氏は、「各社の提案を比較検討する中、最も現場目線で、利用する側に立った提案をしてくれたのがジールでした。これであれば、導入時にも安心して支援を任せられると考えました」と説明する。
導入のプロセス
DWHからETLツールの導入まで、データの民主化を加速させる
基盤の構築をジールが全方位でサポート
2022年4月、ユナイテッドアローズのデータ基盤の刷新プロジェクトがスタート。ジールの伴走支援のもと、インフラとデータレイクにAmazon Web Services(AWS)を採用するとともに、Snowflake を連携させたデータ基盤の構築が開始され、2023年1月には本番リリースに漕ぎつけることができた。さらに同年3月から、引き続きジールの支援により、Snowflake内のデータ加工や、既外部連携をより容易に行うための ETL ツールとして「trocco®︎」の導入にも着手。現在では、部門ユーザーに新データ基盤を活用してもらうための前段階として、ITサービスプラットフォーム部において検証が実施されている。
プロジェクト推進・技術支援のポイント①
常に密なコミュニケーションを心掛け発生しうる問題を事前に回避し、
期間内でのスムーズな導入を実現
今回のプロジェクトでジールは、リスクを回避し、スケジュール内での基盤構築を実現するため、常に先のフェーズのことを考えながら、対応にあたったという。ジールの田畑 知也は、「例えば設計フェーズでは、既に結合テストフェーズのことを考え、ユナイテッドアローズ様と会話したり、テスト仕様書を作成したりしていました。また、失敗しがちなデータ移行作業ではトラブルや失敗を絶対に回避するため、開発フェーズの時点から週次の定例ミーティング等でユナイテッドアローズ様と密にコミュニケーションを取るよう努めました。結果、先フェーズのリスクを事前に検知したり、データ移行をスムーズに完了したりすることができ、スケジュール内での基盤構築が行えました」と語る。
株式会社ジール アプライドアナリティクス&インテリジェンスユニット シニアコンサルタント
田畑 知也
プロジェクト推進・技術支援のポイント②
期日によって増減する使用リソースに柔軟に対応可能なデータ基盤を構築
株式会社ジール マルチクラウドデータプラットフォームユニット 第三部 シニアコンサルタント
大政 達男
ユナイテッドアローズの新データ基盤の中軸を担うDWHが、Snowflakeである。ジールの大政達男は、「市場では多くのクラウド型DWHサービスが提供されていますが、Snowflakeを提案した理由には、スペックや処理能力を動的に変更できる柔軟性にありました。例えば、他社クラウドのDWHサービスの場合、CPUの変更を行う際には、一度サービスを停止させる必要があります。対してSnowflakeは、オンライン上で稼働させたまま動的にスペックを変更させることが可能であり、ユナイテッドアローズ様から寄せられたご要望に合致すると考え、提案を行いました」と説明する。
中井氏は、「当社では月末月初にデータ処理が集中し、作成されるレポートも膨大な量になるのですが、平時の処理量はさほど多くないのが実態です。そうしたリソース使用量の差を、いかに私達が手を煩わされることなく、基盤側で自動的に吸収し、最適化させてくれるかということは選定時の重要な要件の1つでした。そうした要望に最も合致するソリューションとして、ジールは複数のクラウドDWHの中から、Snowflakeを提案してくれました」と話す。
プロジェクト推進・技術支援のポイント③
ETLツールとしてtrocco®︎を提案、製品を開発・提供するprimeNumber社との橋渡しもジールが担う
先にも述べた通り、ユナイテッドアローズではユーザーが多種多様なデータを自ら取得できるよう、ETLツールであるtrocco®︎も、ジールの支援により導入した。 ジールの高橋 大は、「ユナイテッドアローズ様の求める要件を踏まえつつ、Snowflakeとの親和性に優れていたこと、Snowflake とtrocco®︎を組み合わせた案件も既にジールが手掛けていたことを総合的に考慮し、ETLツールとしてtrocco®︎を提案しました。今回、ジールはtrocco®︎の導入支援を担当、環境の構築からtrocco®︎を利用するユーザーがすぐに利用を開始できるようにするためのマニュアル作成までをサポートしました」と話す。
「trocco®︎の導入時には、機能追加等の要望も生じたのですが、ジールは開発元である株式会社primeNumberとの懸け橋となり、機能追加の要望を伝えたり、関連情報の提供してもらったりするなど、様々な支援を行ってくれ、安心してtrocco®︎の導入を進めることができました」(中井氏)
株式会社ジール マルチクラウドデータプラットフォームユニット 第三部 コンサルタント
高橋 大
導入効果と今後の展望
多彩なデータソースとの連携により、データの民主化を加速
株式会社ユナイテッドアローズ ITソリューション本部 ITサービスプラットフォーム部
大橋 遼子氏
現在、新たに構築されたデータ基盤に対して社内のデータを格納、ITサービスプラットフォーム部においてユーザーへの開放に向けた検証を行っている段階だ。なお、既存のオンラインデータを取り扱うクラウドデータ基盤も、AWS経由でSnowflakeとのデータ連携が行われている。
将来的なデータの民主化の促進に加え、期待する効果として、コスト削減があるという。
「クラウド化による従量課金の料金体系に移行したことで、オンプレミスのデータ基盤で発生していた数年に一度の高額な更新費用、および作業負荷が大幅に削減できるようになったことも、大きな改善です」(中井氏)
また、データの民主化が加速することで、ユーザーからのデータ提供依頼など、ITサービスプラットフォーム部の運用負荷が抑制されることも期待効果に挙げられるという。
ジールの手厚いサポートのもと、Snowflakeとtrocco®︎による、現場のユーザーが自らデータを収集、活用できる基盤の実現を加速させたユナイテッドアローズ。江田氏は、「様々なデータソースとの連携が部門ユーザーから寄せられており、従来はデータソースからデータをCSVファイルで抽出した後、バッチ用のコマンドを作って他のデータベースと連携させるといった煩雑な手順を用いて対応していました。Snowflakeとtrocco®︎を用いたデータ基盤の構築により、そうした煩わしい作業を行わずとも柔軟なデータ連携が可能になるため、部門ユーザーにもそのメリットを広め、データ活用を促進させてもらいたいと考えています」と展望を語る。
ITサービスプラットフォーム部の大橋 遼子氏も、「理想とするデータ基盤の実現に向けてはまだまだ改善すべき余地が残されています。例えば、レポート作成についても、バッチ処理でデータを取り込んだり、または担当者が手作業でデータを取得したりするなど、解消すべき課題がいくつかあります。今後、Snowflakeとtrocco®︎を活用したデータ連携をさらに推し進めていくためにも、引き続きジールには手厚い支援をお願いしたいと考えています」と期待を寄せた。