背景と課題
DX人材育成のファーストステップにPower BIを導入
定着に向けた集合研修を開催するもコロナ禍で中断
ヤマハ株式会社 情報システム部 DX戦略グループ 主幹
濱崎 司氏
1887年創業、オルガン製作から事業をスタートしたヤマハ。ブランドプロミスとして掲げているのが、人々の心震わす瞬間を表現した「Make Waves」である。「感動を・ともに・創る」という企業理念のもと、創業以来135年以上にわたり受け継がれてきた「お客様目線のものづくり」を大切に、お客様の心に響く製品やサービスの提供に力を注いでいる。
ヤマハは、経営ビジョン“「なくてはならない、個性輝く企業」になる”の実現に向け、中期経営計画の「Make Waves 2.0」(2022年~2025年)に果敢に取り組んでいる。そして、中期経営計画を支える基盤整備として、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めていると、ヤマハ 情報システム部 DX戦略グループ 主幹 濱崎 司氏は話す。
「当社におけるDXのテーマは、『ビジネス・業務を顧客起点に変革し、顧客価値×生産性の向上』です。DX 1.0(Make Waves 1.0)はシステム基盤の整備を中心に取り組みました。そして、DX 2.0(Make Waves 2.0)はデータ戦略を軸に推進しています。今期のDX 2.0は、現場の意思決定に向けたデータ分析や活用のフェーズにあります。ここで重要となるのが、データ活用は手段であり、目的は意思決定や行動変革を促すことです。そのために必要な要件を整理・検討するなかで、最適な基盤としてBIツールを導入しています。BIツールによるデータ活用は、DX人材育成のファーストステップとして重要であると考えています」
従来の現場におけるデータ活用の課題について、情報システム部DX戦略グループの担当者は次のように話す。
「現場では、Excelによるレポート作成に多くの時間を要していました。Excelデータは、意思決定や行動変革につなげることが難しく、『データ活用とは何か』を理解している現場の従業員もごく少数にとどまっていました」
BIツールは、Excelとの親和性や使いやすさからPower BIを活用しているという。BIツールは導入しただけでは現場に定着しない。ヤマハは、スキルとノウハウを身につける機会として、2020年3月にBIツールのエキスパートであるジールの技術支援のもと、オンサイトの集合研修を開催。その後も集合研修を継続する計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中断を余儀なくされた。
採用のポイント
データ活用の本質を理解したうえでハンズオン形式で実践的に学べるDX-Learning Room
コロナ禍においてもBIツールの教育機会を提供するため、DX戦略グループの担当者が着目したのがeラーニングだ。
「eラーニングは、非接触だけでなく自分のペースで自由な時間に、納得するまで学ぶことができます。スキル定着の観点では集合研修よりも適していると思います。ジールのメールマガジンでPower BIのeラーニング『DX-Learning Room』の存在を知り、ジールにコンタクトをとりました」
Power BIのeラーニングは多数ある。DX-Learning Roomの評価ポイントについて、同担当者はこう語る。
「初心者は、BIツールでグラフ化するだけで満足してしまうことがあります。データ活用の本来の目的に立ち返った時、データ活用するための考え方を理解することから始まります。DX-Learning Roomは、こうした考え方に則っていて共感ができました。現場の業務に生かすための実践編では、ハンズオン形式でコンテンツが体系化されていてわかりやすいものでした。データ活用の本質を理解したうえで、データ活用により現場の意思決定や行動変革を促す、当社の要件に合致していました」
DX戦略グループの担当者は約1カ月間、DX-Learning Roomを実際に試したという。
「Power BIの豊富な導入実績やノウハウを有するジールならではのコンテンツだと思いました。オンラインによる集合研修での実績があったことも採用を後押ししました」
受講のプロセス
基本と実践を組み合わせた充実のコンテンツ
受講後も含めた細やかなサポート
2022年、ヤマハは正式にDX-Learning Roomの利用開始に踏み切った。eラーニングのコンテンツの質に加えて、ジールの提案やサポートといった運用面も高く評価された。
プロジェクト推進・技術支援のポイント①
データ分析の本質を学ぶ、著名講師による入門講座がセット
BIツールの利活用で大切なのは、なぜデータを活用するのか本質を理解することだ。
「データ活用の本来の目的は、業務課題を解決に導くことです。そのために、必要なデータを使って可視化をしていきます。DX-Learning Roomでは、データ分析に関する著書や講義で定評の高いデータ&ストーリーLLC 代表の柏木 吉基氏の『実務活用のためのデータ分析入門』がセットになっていて、データ分析を始めるのに有効なコンテンツでした。受講者のアンケートにも『データ分析の本質を学べたことが良かった』といった声もあがっています」(同担当者)
ジールのデータドリブンサービスユニット ユニット長 福田 成志は、「柏木氏の動画講義は、データ分析の実務で必要なデータの見方や仮説の立て方など、データ活用の考え方を学ぶことができます。DX-Learning Roomの受講者に大変好評です」と話す。
株式会社ジール データドリブンサービスユニット
ユニット長
福田 成志
プロジェクト推進・技術支援のポイント②
3カ月単位の受講サイクルで効率的な人材育成を実現
受講サイクルは、効率的な人材育成で重要なポイントとなる。 「私は、1カ月間で全工程を受講できました。その経験から、受講サイクルを3カ月単位で回したいとジールに相談しました。ジールは、当社のニーズに沿ったプランを提案してくれました」(同担当者)
ジールの福田は、「現在、1カ月のSプラン、3カ月のMプラン、6カ月のLプランの3つのプランをご用意しています。お試し用のSプランでは、内容とともに従業員に必要な受講期間もご検討いただけます。ヤマハ様が選択されたMプランは、受講者のモチベーション維持や上司が評価する観点からも導入しやすいプランです」と説明する。
プロジェクト推進・技術支援のポイント③
Q&Aへの迅速・丁寧な対応、受講後もコンテンツによってフォロー
株式会社ジール データドリブンサービスユニット
シニアコンサルタント
戸田 仁
ジールは受講者の声を大切に、Q&Aによる対応に加えて細やかなサポートをしてくれたと濱崎氏は評価する。
「受講後も教材を利用したいとの要望がありました。学び直しについてジールに相談したところ、受講後の学びをフォローするコンテンツを準備、提供してくれました」(濱崎氏)
「受講者は、みなさん意欲を持って取り組んでいます。Q&Aへの対応も迅速で丁寧に回答し、説明においても図をつけるなど、わかりやすさに配慮しました」と、ジールのデータドリブンサービスユニット シニアコンサルタント 戸田 仁は話し、次のように付け加える。 「受講後のフォローでは、eラーニングのハンズオン部分をベースとする、ダイジェスト版をPDF資料としてご提供しました。ヤマハ様からフィードバックいただいた受講者のアンケートをサポートに生かすなど、ヤマハ様と二人三脚で受講者の学びを支援することを心がけました」(ジール 戸田)
受講の成果と今後の展望
受講募集に対し応募者は想定人数の3倍にも上る口コミで応募が広がり、学びの定着に手応え
DX-Learning Roomの受講者を社内通達で募集したところ、想定以上の応募があったと同担当者は話す。
「当初は1サイクルで10名、年間40名という想定をしていました。しかし、ふたを開けてみると、1サイクルに20~60名、年間で120名の応募がありました。費用を負担するので受講させてほしいというユーザ部門が増えてきたことから、3回目以降は費用負担を情報システム部からユーザ部門に切り替えました。それでも応募者は減少しませんでした。受講者の成果をみて、自分もDX-Learning Roomを受けてみたいといった、口コミで応募が広がっていきました。現場でのデータ活用の促進に、DX-Learning Roomが一定の評価を得ています」
DX人材の育成面でも効果を実感していると濱崎氏は話す。「DX人材育成の目標は300名としています。Power BIのスキル習得は必須ではありません。しかし、DX-Learning Roomの受講者数は、育成目標に対し達成度を判断する基準の1つとなります。その意味では、確実に目標に近づいているといえます」
DX-Learning Roomへの募集を進めるなかで、データ活用における現場のニーズが見えてきたと濱崎氏は話す。
「データ活用について、経営の観点ではその必要性は認識していたのですが、各ユーザ部門についてはそのニーズを把握しきれていませんでした。DX-Learning Roomの応募者に、受講動機をたずねることで、現場の課題やニーズを把握することができました。実際に受講することで、個々で作りたいレポートや、業務上の課題を解決できたという声も聞いています」
今後の展望について濱崎氏はこう話す。
「DX人材育成の一環として、今後もDX-Learning Roomを継続すべきだと思っています。また、受講後も継続的にフォローできる仕組みづくりを、ジールと連携して実現したいと考えています。さらに中級者や上級者のサポートも今後のテーマです。DXの社内教育では、ツールとeラーニングをセットにし、座学ではなくハンズオンによる実践が大切だと考えています。そのことを今回、DX-Learning Roomの導入で気づかされました。また、一般的に放任型のeラーニングが多いなか、ジールは細やかなサポートも他社と一線を画していると思います。今後も、データ活用の定着に向けて相談したいと考えており、ジールからの親身になった提案も期待しています」
「音・音楽」を通じて、人々の心に響く新しい価値を生み出すヤマハ。ジールはこれからもヤマハの現場におけるデータ活用の定着を支援していく。